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自費出版で楽譜集や曲集本をつくりたい人に必要な、5つのステップ。やはりネックは○○○だった。

このブログにアクセスしてくる検索ワードのなかに「楽譜」や「著作権処理」「自費出版」といったキーワードが目立つようになりました。ちなみにトップはぶっちぎりで「songstar」なんですが、こちらはまたの機会に書くとして、今回は、自分がつくった曲やアレンジした曲を「楽譜集」として「自費出版」する場合、どういうステップを踏めばいいのか、ざっと書いてみたいと思います。

うちの会社は、もともと楽譜出版社で編集をやっていた小林が独立してできたという経緯があるので、出版社向けの曲集や楽譜の入った本は、今まで数百冊はつくってきました。

おかげさまで、このブログをきっかけに、楽譜の自費出版の話もいただくことがあり、今も、ちょうどマンドリン曲集の制作に入っているところです。

ブログ経由で依頼のあった自費出版のマンドリン曲集。これが3冊目で、現在4冊目の制作中です。

 

みなさん「自分の楽譜を本にしたい」

という方たちですので、すでに手書きや音楽ソフトで楽譜が完成している人がほとんどです。

しかし、そこから本の形にするまでがわからず、または、自力で試行錯誤してみたものの、「著作権処理」でつまづいてストップというパターンが多いですね。

 

なかには、「JASRACに直接電話して説明を聞いたけれど、よくわからなくて……」という方もおられました。みずから「著作権料を払ってもかまわない!」とわざわざ問い合わせているのに、お客さんをみすみす逃すような対応をしてどうするんでしょうか、いったい。

音楽教室や映画館へプレッシャーかける前に、もっとやることがあると思うのですが……。

 

 

閑話休題。

 

タイトルのとおり、自費出版で楽譜集を出そうとする場合、やるべきステップは次のとおりです・

1)楽譜の原稿を用意する

2)楽譜を浄書する(出版用のきれいな楽譜に清書する)

3)著作権管理者に楽曲の使用許諾をとる

4)印刷所が対応する本の印刷用データをつくる

5)印刷所に入稿(予算によって印刷前の色校チェック)

 

それぞれ見ていきましょう。

 

1)楽譜の原稿を用意する はもちろんのこと、最近は、2)楽譜を浄書する も用意できている人が結構います。

 

楽譜出版社の業界では、Finale(フィナーレ)という楽譜作成ソフトがスタンダードになっているのですが、作曲やアレンジをしている人たちには、最初からFinaleをつかって楽譜を書いている人も多いですね。

Finaleはプレイバック機能もあるので、アンサンブルなどのように、複数のパートで合奏するようなアレンジでも、楽譜の音をFinaleで鳴らすことによって、演奏イメージを確認しながら書けるというのも利点です。

 

なお、手書きの楽譜原稿しかないという場合は、専門の会社やフリーの浄書業者にお願いすることになります。

なかには、浄書コストを下げようとFinaleを入手し、初期設定のまま楽譜をつくっている人もいたりしますが、プロ職人がつくる浄書楽譜とは明らかに仕上がりが違います。確かにFinaleを使えば「浄書らしき楽譜」はできます。しかし、楽譜の見やすさや演奏しやすさなど、できあがりのクオリティーは浄書する人によって千差万別! 特に「楽譜を絵のようにとらえる」ようなプレーヤーや作家さんの場合は、多少コストがかかったとしても、熟練の業者さんにお願いしたほうが、あとあとの満足度は高いと思います。

浄書料は、おおむねページ@3000円くらいから、内容によって上下します。

 

で、問題が3)著作権管理者に楽曲の使用許諾をとるです。

著作権は細かく見ていくといろいろな話があるのですが、ここではあくまで「楽譜」に限った部分だけを見てみましょう。楽譜の場合、作曲者と作詞者(楽譜に歌詞を掲載する場合)の著作権が関係します。作曲者と作詞者が亡くなってから50年(外国曲には戦時加算の例外あり)経つまでは、彼らの著作権は保護されていますので、彼らのつくった曲を「楽譜」にする場合は、著作権使用料を払う必要があります。

ですので、1)と2)でつくった楽譜を楽譜集に収めようと思ったら、著作権が残っているかどうかと、その著作権をどこが管理しているのか、を確認しなくてはいけません。

 

これは、JASRACのホームページにある「作品データベース検索」で確認できます。

「作品データベース検索」

http://www2.jasrac.or.jp/eJwid/

 

このデータベース、少し癖のあるページですが、図書館で蔵書検索をするような感じだと思えばわかりやすいでしょう。

「作品タイトル」「権利者(作曲者名か作詞者名)」「アーティスト名」のいずれかを入れて、検索ボタンを押せば、使いたい楽曲の情報が出てきます。

楽曲情報のうち「出版」の欄を確認し、著作権が残っているのかどうか、出版物(楽譜集)として使用可能かどうかを見ます。

「PD」と書いてあれば、Public Domain(パブリック・ドメイン)いわゆる共有財産ということですから、著作権使用料はゼロ、許諾申請も不要です。

一方、出版の欄に何も書いていなければ、著作権使用料を払う必要があります(逆に×印などで使用不可と書いてある場合もある)。このとき、権利者ひとりひとりに許可をとったり、使用料を振り込んだりするのは権利者も使用者も大変なので、JASRACが著作権者の代わりに著作権料の徴収をしているのが、まあJASRACの存在意義というわけです。

 

ここまで書いてみて、こりゃやっぱり 3)著作権管理者に楽曲の使用許諾をとる がネックになるわ……と思いました。。。しかも、外国曲を使う場合や、JASRACに著作権を委託していない楽曲の場合は、さらに手続きが必要になります。曲によっては、海外の音楽出版社に英語でメールやFAXを送って許諾申請をする場合もあります。。。

 

ちなみに、気になる著作権使用料のお値段ですが、こちらは基本の計算式があります。

楽譜集の定価(税抜)× 発行部数 × 10% = 著作権使用料

です。例えば、定価1,000円で100部発行した場合は、1,000円×100部×10%=10,000円+税 となります。

 

この「出版権10%」の根拠は、小説などの文芸作家の印税が10%だったから……ということだそうですが、文芸作品のテキストをそのままコピーして掲載するという話ならまだしも、楽譜の場合は、アレンジする人の手が加わっているわけですし、場合によっては作品のオマージュみたいないわゆる二次創作であっても一次創作者が印税分を丸々持って行くという状態はどうなんですかね……という気はします。

 

3)著作権管理者に楽曲の使用許諾をとる の部分はいろいろとわかりずらいので、改めて、詳しい記事にしてみますね。。。

 

さて、3)が無事できたら次は、4)印刷所が対応する本の印刷用データをつくる ですが、最近はネット印刷でも十分なクオリティーで楽譜集がつくれるようになっっています。ネット印刷の入稿データはPDFでいけるので、楽譜をページ状に並べてPDFデータにすれば、本をつくることができます。

商業用で出版物をつくっているデザイン事務所やデザイナーさんに頼む場合は、たいていInDesign(インデザイン)というソフトをもっているので、これで印刷用のデータをつくります。もちろん、それ以外のソフトでもPDFにすることは可能だと思います。

また、楽譜集は本ですので、表紙用のデータが必要です。デザイナーさんなら、先ほどのインデザインやIllustrator(イラストレーター)というソフトを使ってデザインしますが、それ以外のソフトでもできるかもしれません。

自分ですべてやろうと思う場合は、データ作成用のソフトの購入や、操作方法の習得がポイントにあります。

また、デザイン事務所やデザイナーさんにお願いする場合は、デザイン費+編集費となるので、ピンキリかもしれません。

どんな楽譜集をつくりたいかや、ページ数によっても、金額が上下します。また、表紙のデザインをどうするか、写真を入れるかどうか(その写真データは撮影するのか、ストックフォトを使うのかetc)などでも変わってくるでしょう。

 

ざっくりですが、100ページくらいの曲集で、表紙も込みで一式となれば、30万円くらいから内容次第で上下という感じでしょうか。

 

最後は 5)印刷所に入稿(予算によって印刷前の色校チェック) です。

商業用だと、本印刷の前に、「色校」という、色や文字、ページ組などを確認する校正紙が出て、それをチェックした上で、印刷に入ることがほとんです。なぜ、わざわざ印刷前にチェックするかというと、

「色校で音やコードのミスを発見した!」とか

「楽譜とタイトルが違っていた!」とか

「全部同じタイトルだった!」とか

「作詞・作曲が間違っていた!」とか

「リピート記号が落ちていて無限ループになってる!」とか

「違う曲の譜面が1ページだけ間に入っていた!

・・・etc。

みたいな、ドッキリ冷や汗案件が大抵あるからですorz。

ただ、色校を出せばその分だけ、コストもあがるので、ネット印刷を使うメリットが減ることも事実です。その辺りは、どこまで慎重を期すのかという、作者としての考えによるでしょう。

例えば、ネット印刷で、判型A4、表紙カラー(コート180)、本文モノクロ(上質紙90)、本文96ページ、100部刷ったときの印刷代を見てみると、6万円弱でした。

 

印刷部数、判型、ページ数、使う紙、カラーとモノクロ、色校の有無、その他によって印刷代は大きく変わります。上記の条件でも、発行部数を100部から500部に変えると、11万くらいになります。その分、1部当たりの単価は安くなりますが、結構な量になるので、家で保管する場合は在庫の置き場所という、違う問題もでてくるので、悩ましいですね。

 

というわけで、楽譜集を自費出版する場合、どんなステップが必要で、どのくらいお金がかかるのか、ざっくりと見てみました。

自分の楽譜を自費出版してみたい!というかたは、ぜひ参考にしてみてください。

もちろん、「自費出版を手伝ってくれ!」というご依頼も承りますので、お気軽にご相談ください。

 

次回は、著作権の出版許諾申請について、もう少し細かく見てみたいと思います。

 

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    • 著作権使用料として徴収される金額から、JASRACが手数料として一定額もっていくわけだけど、これは「①紙ベースの事務作業」「②FAXベースのやり取りによる高い通信費」「③徴収員の人件費」あたりが高コストの原因になっていそう。少なくとも、①と②はIT化で相当額圧縮できると思う。
    • 全ての音楽の使用状況がチェックできると、どんなことが起こるのか?→ファンキー末吉さんのように、「自分の楽曲が流れているのに、著作権使用料の分配金を払われたことがない」という状況がなくなる。つまり、著作権使用料の徴収、分配の透明化。もっと言えば、JASRACの運営の透明化。
    • さらに言えば、楽曲登録時にメロディーを五線譜で書いて提出しているわけなので、音の解析をAIに任せれば、テレビ、ラジオ、ネット上のあらゆる音楽の使用状況が把握できると思う。つまり、包括契約のような「いい加減な」利用状態が解消される。
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