*

2011年個人的ベストテン発表!

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

2011年はあんまり本が読めなかった。
1月に犬が死んで一時的にペット・ロスになり、それがやっと少し癒えてきた頃に大震災が起きた。
読書が進む時期ではなかった。
ただ、大著『秘境西域八年の潜行』だけを少しずつ読んでいた。
だが、なによりも本が読めなかった原因は、今年から「主婦」になったことだ。
いや、もう忙しくて。
朝夕の料理、買い物、洗濯など家事に追われていた。
とくに毎日献立を考えて食材を買って料理して食後は皿を洗って片付ける手間といったらない。
私はなにしろ「駆け出し主婦」なだけに手際の悪さも尋常でなく、
クックパッドのレシピと冷蔵庫を交互に覗いて「どれにしようか」と熟慮していたら半日が過ぎたこともあった。
今となっては読書より主婦について語りたいくらいだが、恒例の年間ベストテンをやってみます。
<ノンフィクション>
1.『木村雅彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』増田俊也(新潮社)
2.『倒壊する巨塔』ローレンス・ライト(白水社)
3.『秘境西域八年の潜行』西川一三(中公文庫)
4.『1993年の女子プロレス』柳沢健(双葉社)
5.『どちらとも言えません』奥田英朗(文藝春秋)
6.『もしノンフィクション作家がお化けと出会ったら』工藤美代子(メディアファクトリー)
7.『逮捕されるまで 空白の2年7カ月の記録』市橋文哉(幻冬舎)
8.『暴力団』溝口敦(新潮新書)
9.『与太郎戦記 ああ戦友』春風亭柳昇(ちくま文庫)
10.『死にたい老人』(幻冬舎新書)
この中で『木村政彦は〜』と『倒壊する巨塔』の2冊が突出していたが、
後者はピューリツァー賞も受賞しているから、私としてはノンフィクション賞を取りそうにない前者をあえて1位にしたい。
もっとも、年末になって、すごく面白いノンフィクションがぞこぞこひっかかってきた。
時間がなくて、でもあれもこれも読みたいという欲求から、
何冊も平行して読んでおり、おかげでどれ一つとして今年中に終わらなかった。
だが、以下の三冊は今年でも来年でも確実にベストテン入りするだろう。
『サッカーと独裁者』スティーヴ・ブルームフィールド(白水社)
『これで見納め』ダグラス・アダムス(みすず書房)
『ヤクザと原発』鈴木智彦(文藝春秋)
<小説>
1.『卵をめぐる祖父の戦争』デイヴィッド・ベニオフ(ハヤカワ文庫)
2.『はみ出しインディアンのホントにホントの物語』シャーマン・アレクシー(小学館)
3.『ジェノサイド』高野和明(角川書店)
4.『バーにかかってきた電話』東直己(ハヤカワ文庫)
5.『戦国無常 首獲り』伊東潤 (講談社文庫)
6.『チュウは忠臣蔵のチュウ』田中啓文(文春文庫)
7.『吉岡清三郎貸腕帳』犬飼六岐(講談社文庫)
8.『蘆屋家の崩壊』津原泰水(集英社文庫)
9『ギンギラ☆落語ボーイ』三遊亭白鳥(論創社)
10.『エメラルド王』早田英志・釣崎清隆(新潮社)
1位と2位は迷ったが、前者が今年刊行で、後者はそうでなかったため、
近刊を優先した。もし立場が逆だったら順位も逆だったろう。
東野圭吾の本でベストテンに入れたいものがあったが、
まあ、今更いいでしょう。
ノンフィクションも小説も、こうして見ると「話題作」が多く、
オリジナリティに乏しい。
来年は反省して、もっと世間的にマイナーな、でも面白いという本を探して
読んでいきたいと思う。
というわけで、皆さん、今年もお世話になりました。
来年もよろしくお願い致します。

関連記事

no image

カルトにムックはよく似合う

紹介が大幅に遅れて申し訳ないのだが、「偏愛!! カルト・コミック100」(洋泉社ムック)という面白い

記事を読む

no image

スットコランド日記

宮田珠己ことタマキングが「web本の雑誌」で連載している 「スットコランド日記」(毎週月曜更新)を読

記事を読む

no image

かっこいい公務員たちの物語

片野ゆかの『ゼロ!こぎゃんかわいか動物がなぜ死なねばならんと?』(集英社)が本日発売である。

記事を読む

no image

どこでもオフ

ここ半年くらい、毎日自宅付近のドトールコーヒーに通って原稿を書いている。 家にいるとオンとオフの区別

記事を読む

no image

サハラから八王子へ

やっとサハラマラソンの原稿が終わった。 どういう形になるかわからないが、本の雑誌の杉江さんに渡してお

記事を読む

no image

読書気功療法!!

『幻の楽器・ヴィオラアルタ物語』について途中まで書いたら時間がなくなり、そこでぶつ切りになってしまっ

記事を読む

no image

『間違う力』発売開始

『間違う力 オンリーワンの10カ条』(メディアファクトリー)が発売になった。 丸善川崎ラゾーナ店で

記事を読む

no image

アフガンの謎を千葉で解く

火曜日、『アジア未知動物紀行』の最後の著者校正をやっていたら、 校正係から困った指摘を受けた。 アフ

記事を読む

no image

バトルロイヤル、参戦!

先日「酒飲み書店員(中略)大賞」なるものに選ばれ、千葉と都内東部を席巻している(?)「ワセダ三畳青春

記事を読む

no image

声が出ない!

たぶん風邪だと思うのだが、 昨日の晩から声が妙にガラガラになり、 今日にいたっては朝からまったく声が

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年4月
    « 3月    
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    2930  
PAGE TOP ↑