*

なぜ小説を書かないのか?

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

早大探検部OB会<特別ホラー篇>みたいな催しがあり、
「もっと若手がほしい」とのことで40歳の私も召集される。
うちのOB会は平均年齢60代で、50歳でも「若手」の部類だ。
珍しく西木正明と船戸与一の「直木賞作家コンビ」も登場。
私はこの二人をそれぞれ知っているが、二人が一緒になったのを初めて見た。
残念ながら「若手」はテーブルがちがうので、
二人がどんな話をしていたのかは不明だが、
互いに「マサさん」「ハラダ」と呼び合っていた。
西木さんのほうが船戸さんより一つ上の先輩なのだ。
西木さんは早々に引き揚げたが、船戸さんは夜が更けるにつれ、
調子をあげる。
「今2巻まで出ている『満州国演義』はあとどれくらい続くんですか?」と訊いたら、
「全8巻だ。あと6巻、書き下ろししなきゃなんねえ。オレ、今、ワーキングプアだよ」と
豪快に笑っていた。
さらに、他の先輩が「高野はどうして小説を書かないのか?」と訊いたとき、
私に代わって「こいつは自分を捨てきれないんだよ」と答えてくれたほどだ。
午前2時半、ゴールデン街の飲み屋で私は完全にダウン、
船戸さんに「おまえ、もう帰れ」と言われたのを最後に
記憶を失ったまま帰宅。

関連記事

no image

ここにも藤岡弘探検隊のファンが…

ひょんなことから、作家の古処誠二(こどころ・せいじ)と飯を食った。 つい最近まで私は古処さんのこと

記事を読む

no image

孤高の学者とゼミ合宿

名著『トルコのもう一つの顔』(中公新書)の著者、小島剛一先生とお会いした。 先生はフランスとドイツ国

記事を読む

no image

本物のダービーをつくる方法

イビチャ・オシム『考えよ!』(角川ONEテーマ21)を読む。 例によっていろいろな提言に満ちている

記事を読む

no image

あの素晴らしい旅行記をもう一度

なんとなく小島剛一著『トルコのもう一つの顔』(中公新書)を再読したが、 あらためて素晴らしい本だ。

記事を読む

no image

月刊プレイボーイ休刊

「月刊プレイボーイが休刊」というニュースを見て驚く。 なぜなら、この前、同誌で旅本座談会をやったばか

記事を読む

no image

本格エンタメノンフの傑作

平松剛『磯崎新の「都庁」』を読了。 著者については恥ずかしながら全く知らなかったが、2001年に同

記事を読む

no image

あの映画は何だったのか

名前はよく知っているし、名場面や音楽も知っているような気がするが、 実は一度もちゃんと見たことがない

記事を読む

no image

人の旅がうらやましいときは

最近ここに書くのをすっかり忘れていたような気がするが、「メモリークエスト2」の方も少しずつ進めている

記事を読む

no image

原宏一氏と対談

新宿のナイジェリア料理店で異能の小説家・原宏一氏と対談。 原さんは昨年、『床下仙人』で「啓文堂おすす

記事を読む

no image

独裁者列伝

いわき市にいるとき、コンビニで『東日本大震災 レンズが震えた 世界のフォトグラファーの決定版写真集

記事を読む

Comment

  1. november より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1)
    前からブログや本を楽しく読ませてもらっています。
    ところで、よくゴールデン街で飲むのですか?
    まさか高野さんがG街でのんでるとは。
    入りにくくなかなか開拓できないのですが、
    どの店がいいですかね?

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年4月
    « 3月    
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    2930  
PAGE TOP ↑