*

判断能力の急激な低下

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様


うーん、参った。
内澤さんの話、何も問題なかったのか。
これでは私がただ赤っ恥をかいただけではないか。
まさに「ひとり相撲」ってやつだ。
前の話を再掲載しろって言われても原稿が残っていないしなあ。
「清楚なお嬢様風美人」というところしか覚えてない。
今週はもう一つ、似たようなことがあった。
青山潤『アフリカにょろり旅』(講談社文庫)の解説を書かせてもらったのだが、
著者校正のゲラが戻ってきたのを見て「しまった、はずした!」と思った。
原稿を書いたときは狙いが決まったと思っていたが、時間を置いてみると、
はずしているのがわかったのだ。
昔の成績基準「優、良、可、不可」でいえば「可」。
仕事として最低限通るというレベルだが、私だって当然、毎回「優」を目指しているわけだから、これはかぎりなく失敗作に近い。
でも構成上に問題があるので、もはやゲラをいじくって直せるものでない。
担当編集者と著者の青山さんに「申し訳ありません!」と心の中で謝りつつ、ゲラを多少いじくって
「良」と「可」の中間くらいまでもっていき、済ませるしかなかった。
そしたら、講談社の小説現代の編集者S君から電話がかかってきて、
「『アフリカにょろり旅』の解説、最高によかったですよ。思わずそれが言いたくなって
電話しちゃいました!」
と言う。
うーん、参った。
よかったのか、あれで。
その後、本の雑誌の杉江さんにも「面白かった」と言われたので、どうもS君の頭がおかしいわけではないらしい。
私の判断能力が正月前後で急激に低下したようだ。
自分の書いたものが良いか悪いか、問題があるかないかもわからないというのは
ライターにとっては致命的だ。
今後、慎重に経緯を見守っていく必要があるので
みなさんも十分、用心してください。

関連記事

no image

続・プロレスの罠

こんなことをしていてはイカン!と思いつつも またもやプロレス本を一気読み。 小島和宏『ぼくの週プロ

記事を読む

no image

舟を編む

何とは言わないが、ひどい小説を読んでしまい、 「とにかく上質な作品で口直ししたい!」と本屋の棚を彷

記事を読む

no image

まだやる気なのか?

集英社に行き、ムベンベ映画化を目論む映画監督アベ・ユーイチ氏とプロデューサーでネルケピクチャーズ役員

記事を読む

no image

たまには手紙で

「朝日新聞」が3月31日より「57年ぶりの紙面大幅リニューアル」され、 その特別記念企画としてタマキ

記事を読む

no image

あなたの本職は何ですかと訊かれた

3月に、大野更紗さんが「わたくし、つまりnobady賞」という謎の文芸賞を受賞し、 私もその授賞式

記事を読む

no image

ワット・パクナム

成田にあるワット・パクナム別院に行く。 日本にたった一つあるタイ人のお寺だ。 ここでウチザワさんが「

記事を読む

no image

イラン行き

もう半年以上も日本滞在が続いていて鬱屈したせいだろう、 発作的に今月23日からイランへ行くことにした

記事を読む

no image

メールマガジンがスタート!

※このコラムは◆週間 辺境・探検・冒険ML MBEMBE ムベンベ Vo.2◆に掲載されたものです。

記事を読む

2015年読んだ本ベストテン<ノンフィクション>

今年はブログをほとんど書かなかった。 というか、最近はブログがあったことすら忘れていた。 とても

記事を読む

no image

珍しく円城塔氏と気があった、と思ったのだが……「本の雑誌」上半期ベスト1特集

「本の雑誌」8月号が届いた。今回の特集は「2012年上半期ベスト1」で、私も書いている。題して「超人

記事を読む

Comment

  1. AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 6.0; SLCC1; .NET CLR 2.0.50727; Media Center PC 5.0; .NET CLR 3.0.04506)
    高野さんの隠れファンです。
    みなさんが高野さんに求めているものは、優等生の書いたような絶対安全な文章などではなく、はずしていそうで完全にはずれきっていない、危なそうでぎりぎりのところでとどまっている、まさに高野さんの人生(失礼!)そのものような文章なのだと思います。
    その高野さんの冷静な部分が、”はずした”と思わせてしまうのでしょうけど、読者は高野さんが思うよりもずっと寛容なはず(だと思います)。どうぞ”はずす”ことなど恐れず、楽しい文章をたくさん書いて、わたしたちを楽しませてください。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年4月
    « 3月    
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    2930  
PAGE TOP ↑