「マレーシア」という文字が割とメジャーな日本語のメディアに踊ると敏感に反応してしまうボクが見つけた気になる記述について語らせてもらいたい。
その気になる記述とは、夕刊フジ系のZAKZAKのサイトで見つけたジョージ・ソロスが大リーグ、ナショナルズの買収をしたというニュースの記事について。http://www.zakzak.co.jp/top/2005_06/t2005060602.html
このなかでソロス氏の経歴を紹介した箇所に以下の一節がでてくる。
「大変な慈善家である一方、彼の一言がマレーシア一国の経済破綻を招いたともいわれる。」
いかに投資の帝王と呼ばれているジョージ・ソロスが言葉だけで一国の経済を破綻させることはできない。ましてマレーシアのような中進国がである。
どうしてこういう一節が出てくるのかについて解説していこう。
ソロス氏がマレーシアがらみで脚光を浴びるのは、97年8月タイ・バーツの下落をきっかけに起こったアジア通貨危機。タイを皮切りにマレーシア、インドネシア、韓国の経済が通貨の暴落により大打撃を受けた。マレーシアを除く前述の3カ国はIMF(国際通貨基金)の監視下に置かれた。IMFによる干渉がインドネシアにおいてはスハルト政権を終焉に向かわせ、韓国においても財閥支配を改変させた。
もう8年近く前の話だが、マレーシア10年超のボクにとっては最大の事件で鮮明に記憶に残っている。
このアジア通貨危機の引き金となったタイ・バーツの浴びせ売りをしたのがヘッジファンドを指揮していたソロス氏である。ソロス氏はオープン・ソサエティー(開かれた社会)を掲げ、NGOを通じて東欧諸国や南アフリカの民主化運動を支援してきた。
当時、ソロス氏が関心をいせていたのがミヤンマーの民主化であり、ミヤンマーのアセアン(東南アジア諸国連合)加入を積極的に支持する立場のタイやマレーシアがターゲットとなった。まぁ、ここでやっとマレーシアがでてくる。
それではタイがなぜ抜け落ちてしまったか。それはマハティール前首相がソロス氏批判の急先鋒として登場して来るからだ。その対決が激化して伝えられるうちに“マレーシア”の名前だけが記憶に残ってしまったのだろう。
マハティール対ソロスの争点は、資本主義とグローバリズムのあり方に一石を投じるもので、その後マハティール前首相が取った経済再生政策も一国の運命をかけた経済の防衛戦であり、項を改めて書いてみたい。
この記述は記事の本論に関わる部分ではないし、読者が特に関心を払う部分でもないかもしれない。マレーシアのために付け加えるならば、マハティール前首相が率いたマレーシアはソロス氏と真っ向から勝負し、批判をよそに独自の経済政策で再生した。
マレーシアはソロス氏との勝負に勝ったわけではないが、絶対負けていなかった。
経済危機から1年後ヘッジファンドは破綻し、投機の規制も行われた。
ソロス氏も勝者ではなかったのだ。
上の記事は、誤って消去されてしまったデーターを復元したものです。復元データーの提供は読者の方のご好意によるものです。
以下の1件のコメントがありました
連続して書き込んで申し訳ありません。
確かにアサさんのおっしゃるとおりソロス一人の力では一国の経済に太刀打ちできないですね。それにマレーシア経済は停滞してしまったかもしれませんが破綻はしていないですよね。
当時はマハティール氏を「骨のある人だなぁ〜」と思いで注目していましたが、なかなかどうして骨があるだけでなく乗り切ったのは凄いことです。今のところIMFの世話にならず経済危機を乗り切ったのはマレーシアと日本ぐらいじゃないですか?(厳密にいうと語弊があると思いますが)
ただおかげで両国とも国際的な投資家からは政府の介入というカントリー・リスクを持つと見られちゃっていますが。
| グン | URL | | 2005/06/10 10:00 PM | P8p.eGTE |