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元祖アイドルはママドル、エイミー・マストゥーラ – アサ・ネギシのページ/Music Raja
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マレーシア・ライターの見聞録

元祖アイドルはママドル、エイミー・マストゥーラ

 今回は新作を出した元祖アイドルについて。
 
 エイミー・マストゥーラ(Amy Mastura)と聞けば、90年代中ごろからアジア音楽にかかわっている人には記憶がある名前だろう。彼女は今では伝説のオーデション番組『アジア・バグース』(フジテレビ系)の第3回グランド・チャンピオンに輝き、94年にポニキャンでデビューした経緯もあるからなにかと日本にもかかわりがあるシンガーだ。『アジア・バグース』で優勝していまだ活躍しているのは、彼女と初回優勝者でインドネシアのトップスター、クリス・ダヤンティぐらいしか見当たらない。
 さて彼女の3年ぶりとなる新作『Labih Baik』がリリースされた。彼女といえば同時代のジアナ・ゼインとか違って、情念的なバラードを感情移入で歌い上げるタイプとはまったく反対のタイプで、日本人の感覚のポップを持ち味としていたシンガー。バラードが歌えてナンボのマレー・ポップス界で、実力派には数えられないながらもちゃんと生き残ってきた。筆者が少しばかり意地悪にバラードには挑戦しないの?、と聞くと「バラードはほかのうまい人が歌えばいいから」と申し訳なさそうに言う素直なキャラクターも彼女の魅力だろうな。

 本作はアズラン・アブ・ハッサン、アイディド・アルフィアン、オウディ・モックらの当地作曲家界のレギュラー・メンバー以外にも、Ruffedgeやタム(Spider)といった時流にのった連中も曲を提供。そしてサプライズは、アヌアー・ゼインも曲を提供していることだった。
 それでアルバムのできの方は、前作の『Akan Datang』(02)や前々作の『Bintang Hati』(00)と比べてキャッチャーさが足りない。しかし、「Binggung」でヒップホップっぽさなんかにも接近してそれなりに聞かせどころはあるが、全体的に路線を変更した様子はなく、(失礼ながら)別に変化やさらなる洗練を意識したわけではなさそうなので、作曲陣のセンスの問題なのかなと思う。深読みすれば、“アイドル”として許されるキャリアでも年齢でもないことが迷いとなって中途半端にしてしまっているのかなとも感じる。
 ちょっと脱線するが、彼女は34歳で2児の母親。地元では子供と一緒にCNで共演したこともある。そんなこともあって子守唄みたいな曲の「Mama Kata」も歌うようになった。当地では、ファウジア・ラティフやジアナらもみんなママドル・イメージでやっていっているよな。
 会見では出産太りを見事にコントロールして、若々しい姿を披露。ちゃんとスリミング産業のスポンサーががっちりとサポートしているという按配。マレー系は特に食事のせいで出産後痩せない人が多いから、けっこう努力しているようだ。
 
 さて、今回も「Cinta」という曲はエイミー自身が作曲。Bintang Hati』で自作した佳曲「Sha Na Na」みたいで、彼女しか書けない曲調だし、まだまだ元気印でハジけている。やっぱ、気持ちはアイドル。エイミーはこうでなくては。
 ソニー(後にソニー・BMG)移籍以降の『Akan Datang』と『Bintang Hati』合算で3万5千枚のセールスと聞くと元祖アイドルもさびしい数字だが、目指すは永遠のアイドル。10年前から生でみてきているけど、ちっとも歳取った感じしないんだよな。
 がんばって欲しいものだ。
 

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