マレーシア映画の好調さは再三伝えてきたが、やはり陰影をなす当地の検閲に関するニュースも気になる。
有力英字紙スターによると台湾を拠点に活動しているマレーシア人監督ツァイ・ミンリアン(Tsai Ming-liang)がマレーシアを舞台に撮影した英語作品名『I Don’t Want to Sleep Alone』が、2月1日、マレーシアのイメージを悪くするという理由で当地検閲局から上映を禁止する通達を受けたと報じている。
同作は、台湾のリー・カンシェン(Lee Kang-sheng)が主役を演じ、首都クアラルンプールで撮影され、強盗に遭って傷を負った台湾人を移民が助けるというストーリー。これ以外の詳細はわからないが、ヴェネチア映画際でプリミア上映され、7分間ものスタンディング・オベージョンが起こったという評判の作品だ。
検閲局は、肝心の上映禁止処分の理由について、「暴力を振るったり、人を欺くシーンがあり、マレーシア人が心が冷たいように描写されている」と説明している。一方、ツァイ監督は「自分はマレーシア人であり、マレーシアの敏感な問題、規制についても熟知している。主題はマレーシアではなく、人間関係と愛についてだ」と語っている。
ツァイ監督は検閲局の通達が来て以来、事情説明を続けている。記事によると最終決定は今週中にだされるという。
と、ここまでが報道。
しかし、検閲局の狭量ぶりには言葉もない。
作り物の映画がドキュメント番組とでも思っているレベルの話だ。
昨年、アミール監督の『最期の共産主義者』も上映禁止の憂き目に遭ったが、こちらの方は、「共産主義者による惨禍は風化していない」という理由であったので、言い分としては数段上だったが…。
確かにマレーシアの敏感な問題にちょっと配慮が足りない映画もあった。
公開年は忘れたが、ショーン・コネリーとキャサリン・ゼッタ・ジョーンズが主演し、マレーシアで撮影された『エントラップメント』は、当時のマハティール前首相の不興を買った。
前首相は「ペトロナス・ツインタワーの周りが貧困街のように描写されている」ことに不快感を表明したコメントを出していた。まぁ、確かに自分が心血を注いで近代化した国が貧富の差にあえぐような国の風景にされたことは面白くなかろうものだ。
個人的に前首相は口には出さないものの、我慢ならなかったのは、ペトロナス・ツインタワーがあたかも中華系の所有するビルをにおわす描写だったと察する。マレーシアはブミプトラ政策(マレー系優先政策)で必死になって、民族資本(この場合、国民であっても華人系などの資本を除く)の引き上げを図ってきたのに、ツインタワーが中華系の所有のように思われたら慙愧に耐えないだろう。
ただ、大半の人には、劇場を出ればどうでもいい話。
話が逸れてしまった。
マレーシアが怒りそうな理由もわからないではないが、同作を見ていないので、これ以上のことは言えない。
しかし、マレーシア人の映画の作り手が注目されているからといって、この国が表現や芸術を大人として扱うことができる日が来るのは遠いという実感がするのだ。
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ネギシさん
ツァイ監督作品の上映禁止の記事、大変ショックです!!
この国の検閲レベルは、ドキュメンタリーの定義とフィクションドラマの定義がわかっていないほど、レベルが低すぎます。
「セペッ」の時もそうでしたが。。。
海外で評価されているマレーシア人の作品を、自国で見れないとは。色んな意味で悲しいことですね。
「暴力がいけない」と、いう理由もかなりおかしいですね。RUMPITやアウィの過去の映画やらこれまで色々とあるのに。公平じゃない気がします。
これから冷酷なマレーシア人は描けないのでしょうかね。。。
是非、ツァイ監督には検閲と戦ってほしいです。がんばれ!ツァイ監督!
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見てみたい〜!
マレーシアは急に先進国入りしたので、精神的に大人になるには時間がかかるんでしょう。リンダオンの件もなんだかもう・・どっちもどっちみたいな(笑)