前にマレーシアは自動車王国と書いた。
もちろん大風呂敷であるし、あくまでもアセアンレベルの話だったが、“マレーシアはモータースポーツ天国だ”、と言い換えて話をしていこうと思う。
折りしも今日、マレーシアの誇るセパン国際サーキットのオープンデーというイベントが開催され、クルマ好きがいろいろなスポーツカーを乗り回せるという企画が行われている。入場料は最低50リンギット。大津波被害者への義捐金となるらしい。
それでここがマレーシアなお話なのだが、義捐金となる高額入場料を払った上位9人には、マハティール前首相が運転するポルシェ・キャニー(Cayenne)に同乗できる特典がある。
前首相は、3人ずつ同乗させ、サーキットを合計3周するとのこと。しかし、今年御年80歳の前首相が車を運転してくれるとは恐れ入る。Cayenneという車種については知らないのだが、写真を見る限り4輪駆動車みたいな感じなので安全だと思うが…。
それでモータースポーツのお話。
前首相のクルマ好きは、国産車プロトンの推進役であったことや昨年から始まった旧第三世界のF1誘致というアイデアを5年先駆けていたことからも知られる。今日のオープンデーでも元F1のアレックス・ユーン、元WGPのシャルル・ユージ、そして現役ラリー・アジパシ(アジア太平洋)王者のカラムジット・シンという面々がお目見えする。考えてみれば、フォーミュラー、バイク、ラリーのモータースポーツの3大カテゴリーにマレーシア人を輩出しているとは凄いことだ。こういった先駆者の後に続く人材が厚いはけではないが、前首相の息子であるモクザニ氏が旗振り役となってマレーシア人レーサー育成に努めており、彼等に続く人材も出るかもしれない。
また、モータースポーツはドライバーやライダーを輩出するだけではなく、マシンの製造者(コンストラクター)になり、地元自動車産業にとって必要な技術を蓄積することも重要である。実はこの面の方が大事で、ドライバーやライダーは宣伝媒体であると見てもいいぐらいだ。
この面でもザウバーのスポンサーである国営石油会社ペトロナスは、フェラーリの型落ちのエンジンにペトロナスの名称を冠し、チームにマレーシア人メカニックを参加させ、技術の習得をしている。バイクに関しても往年の名ライダー、ケニー・ロバーツと組み、プロトンKRというマシンを走らせている。マシンに関してはカワサキから供与されているようだ。ラリーに関してもプロトンとして参加しており、プロトンから三菱自工の株式がなくなったため、独自色を強めている。プロトンは新たにフォルクス・ワーゲン(VW)を提携先としているため、VWとしてラリー参戦も現実味を帯びてきた。
今のところ欧州、北米、日本以外の地域のモータースポーツ大国はブラジルしか見当たらないが、マレーシアもロシア、中国、インドなどの大国に並んでブラジルを追従する位置に来るかもしれない。