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独立50周年作品『1957ハティ・マラヤ』 – アサ・ネギシのページ/Music Raja
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マレーシア・ライターの見聞録

独立50周年作品『1957ハティ・マラヤ』

 なんだか「観なければいけない」という気持ちに駆られて、映画館で観てきたのがスハイミ・ババ(Shuhaimi Baba)監督による独立50周年作品『1957ハティ・マラヤ(1957 Hati Malaya)』だ。
 スハイミ・ババ監督は、『Waris jari hantu』で、今年のマレーシア映画祭で最優秀監督賞を獲得した。−やはり、前作までの作品の企画はマンネリだし、賞獲得も同じ女流監督のヤスミン・アーマッド監督に比べて、政府のお好みのような…。
 今年は独立50周年のタイミングでこのお題。−国策映画なのか…。
 公開以来、スルタンらが観賞。−高貴な人が喜ぶ作品は、凡人にはとってはいかに…。
 なんだか、急進的な作品はすぐ公開禁止にする政府やお国が絡んいるようで、避けたい本能がむずむずと動くのだが、傑作にしても、駄作にしても観なければいけないという好奇心の方が勝った形だった。


 つまらないことをゴタゴタと書いたので、結論から言うと、「なかなかよかったのではないか」というところに落ち着く。
 まず、焦点を当てているのは、独立の父であるトゥンク・アブドゥール・ラーマン(後の初代首相)とUMNO(統一マレー人国民組織)の創始者であるジャーファー・オンの二人である。
 
 以下は、ちょっと独立史解説なので、面倒な方は読み飛ばしてください。
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 主題である独立を語る時、やはりラーマンのみで話が進むことが多いのだが、やはりマラヤの独立多数派マレー人が歴史上初めて団結したという事実から始めなければいけない。
 その契機となるのが、マラヤ再統治を目論んだ英国が46年に提案したマラヤ同盟だ。ここで歴史の講釈はすべきではないのだが、このマラヤ同盟はスルタンの権限の縮小とマラヤに住むすべての民族を同等に扱うと言う内容で、マレー人がこの国の主権者である地位を奪われるということで、立ち上がる契機となった。
 結局、ジャーファー・オンは、UMNOを全人種に開放することを掲げ、同意を得られず、離党。自ら新党を結成して独立を目指すが、支持を得るには至らず、歴史の表舞台には立てなかった人物だが、本作ではジャーファー・オンにもじっくり焦点を当てているので、歴史が苦手なマレーシア人もあらためて彼の功績を認識するようになっている。
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 まぁ、講釈ばいい加減にして、本作は歴史的な映像を織り交ぜ、史実を丹念に追っているし、二人の争点なんかも焦点を当てているので、独立史の良いテキストになっている。『ラーマン回想録』なんかがストーリーの資料として影響が強いこともあり、ラーマンの人物描写が丹念になっている。
 また、マラヤ華人協会(MCA)の創始者であるタン・チェンロックやH.S.リーがからんだ華人社会の団結と、彼らとラーマンの協調を描いている点も国民映画的だ。
 マラヤは、インドネシアやミヤンマーのように闘争で独立を勝ち取ったのではないにしろ、こういう懐が深い人物が人々をひきつけ、歴史を独立に流れさせたと感心させる。また、対比としてジャファー・オンが、理想に対して熱血家であったこと、その情熱がゆえに失敗したことなどを読み取るのも面白い。
 さらに独立の同志たちであるタン・チェンロックやH.S.リー、アブドゥル・ラザック(後の2代目首相)、イスマイルなどの人物も、ひととなりが分かるように描かれている。マレーシアの若い世代や外国人の我々にとって、紙の上の人物が立体的に見ることができる映画ならではの醍醐味は味わえる。
 それで、ぶっちゃけて話をすると、独立史は放っておいても面白いので、誰が撮っても魅力的な作品にはなると思う。それで、スハイミ監督がどんな味付けをしたかというと、独立の写真集を編集している5人の若者達が登場する点。
 この若者達の配役は、スハイミ監督の『Pontianak 2』で主演したコンビのマヤ・カリム(Maya Karin)とロスディ・ラムリ(Rusdi Ramli)、ヤスミン・アーマッド監督の3部作オーキット役でお馴染みのシャリファ・アマニ(Sharifah Amani)、同監督の『Gubra』でオーキットの夫役を演じたアドリン・ラムリ(Adlin Ramli)ら。

 この若者達は、独立史を調べていくうちに過去に引き込まれ、独立を支える人間になってしまうという、文章で書くと多少チンケな感じがするファンタジーだ。
 マヤ・カリムとロスディ・ラムリの恋愛なんかがあるのだが、「史実だけじゃ退屈してしまうだろう」から、客が呼べそうな俳優を出しておこう、というレベルだと思う。これで、若い人がちょっとでも独立史に関心を持ってくれれば、マレーシア的には御の字というところか。
 しかし弁明しておくけど、重要な役どころには、中堅、ベテランががっちり固めており(そりゃ、こういった作品だったら大御所も出たいよな)、引き締まっている印象だ。
 まとめると、レトロな情景を撮るのがうまいスハイミ監督の長所は生きているし、過去の彼女の作品にみられた過剰な演出も押さえ気味で、あんまり彼女の作品が好きでない人にも薦めても良い気がする。ただ、ラストシーンの独立の歓喜に震える人々は、思いっきり愛国ムード。ちょっといただけない。
 それでも独立史のダイナミックさを損なわず、作品にまとめた点も評価できるし、歴史のお勉強にお薦めだ。個人的にマレーシアの歴史で長編の題材になるのは、『ブトゥリ・グヌン・レダン(Putri Gunung Ledang)』のマラッカ王国と独立史と思っていたので、本作には溜飲が下がる思いだ。
 蛇足ながら主題歌の「Hati」は、シティ・ヌルハリザ(Siti Nurhaliza)。今年は、彼女の新曲での歌声この曲だけだけというのはちょっと淋しい。挿入歌の「Perlu Kamu」は、インドネシアのクリス・ダヤンティ(Kris Dayanti)とアジャイ(Ajai)の豪華デュエットなのだが、モロにメリー・ゴスロウ。そりゃないだろ、アジャイ。
 公式サイトで予告編の視聴と主題歌などの試聴もできるのでどうぞ。
スハイミ・ババ関連記述
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愛憎と無常の幽霊、ポンティアナ2
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2 Comments

  1. Ouたstation Ouたstation
    2007年11月11日    

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     アサさん、
     ”Hati”はシティ・ヌルハリザ。今年は彼女の新曲での歌声、この曲だけだというのはちょっと淋しい、、
     Sitiは今年リリースされた別のサントラ盤”Kayangan”の中で”Menanti Pasti"という曲を披露していますよ。でもアサさんが知らないということは現地ではあまり話題にならなかった映画なのかもしれないですね。ちなみに自分は最近このサントラをネット経由で購入しました(Farahの新曲が収録されているので、、)。でも”Hati”とこの”Menanti Pasti(個人的にはこちらの方が好き)”の2曲を聴くと本当に(いい意味で)彼女の歌唱法が昔と比べると変わったな、円熟味を増したな、と感じますね。
     あとこの話題のついでなんですが、今Hot FMのチャートにエントリーしている”Ku Mahu”もSitiの新曲なのでしょうか?気になっていたので。
     P. Ramlee The Musicalは見に行かれましたか?
     P.S. ちなみにサントラ"Kayangan"のプロデューサーはAjaiです。自分は以前から彼は”マレーシア音楽界プロデューサーの中では、インドネシア音楽界に対して対等に勝負出来る人材”だと思っているので、嫌いではないです(むしろ評価してます)。でも確かに指摘されてみると、インドネシア・ポップ風の曲を作るのに長けているような気はしますが。 

  2. アサ・ネギシ アサ・ネギシ
    2007年11月11日    

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.1.4322)
     さすが、Ouたさん。
     思いっきり言い訳ですけど、『Kayangan』で新曲、歌っていましたね…。
     でも、肝心の映画のほうがどうもさっぱりで、流れているのを耳にしたことがない有様です。やはり、主題歌としてアジャイが歌っている「Kayangan」の方ばっかりラジオでかかっていましたね。
     でも、「Menanti Pasti」も「Hati」も確かにシティらしいいい曲ですね。そろそろシティの映画提供曲アルバムも出てほしいものです。
     「Ku Mahu」は、当地で始まったテレビ・ドラマ『Spa-Q』の主題歌で、こちらではけっこう人気のあるラテン系の国のドラマを意識したラテン・ナンバーです。シティにとっては、お遊び程度なのでしょうかねぇ。別にシティが歌わなければいけない歌ではないことは確かです。

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