マレーシアはの国体は立憲君主制である。
平たく言えば国王がいる体制である。
ボルネオ島の金満国ブルネイにも国王がいて、こちらは国会が何年ぶりに再開されたというところがスゴイ、ハスナル・ボルキア国王専制。 インドネシアは王様のいない共和制で、マレー系国家の国体も様々なのである。
それでタイトルについて。
昨日、ペナン州の元最高統治者ハムダン・シェイク・タヒール氏が亡くなった。
この方は、日本で出版されたマレー語辞典に協賛された方なのだが、その辞典ではマレーシア・ペナン島国王(最高統治者)のTun Dato’閣下となっているのだ。
重箱の隅をつつくのは嫌いだが、この表現だとハムダン氏がマレーシア国王という早とちりさえされてしまう。せっかく協賛した辞典に自分の名前すら書いてもらえないハムダン氏がかわいそうなので、解説していこう。
まずペナン州の最高統治者という表現について。
マレー語では、「Yang di-Tertua Negri」平たく訳せば“州で一番偉い方”という感じだ。それでなぜこの役職(あくまでも生まれながらの地位ではない)があるかも説明しなければいけない。
マレーシアは13州からなり、マレー半島の9州にスルタンがいる。各州のスルタンは王族であり、その地位は世襲制だ。マレーシア国王は、その9人のスルタンから選ばれる。(もうちょっと詳しい話はまたの機会に譲ろう)
スルタンがいる州は、スルタンが州の最高統治者である。
スルタンがいないボルネオ島のサバ、サラワク、マレー半島のマラッカ、ペナンの4州は、マレー系の社会的地位がある人を州最高統治者に任命している。つまり完全な名誉職なのだ。
州最高統治者であっても世襲のスルタンと大きな違いがある。各州のスルタンを州の王様ととらえるのは間違いではないが、ペナン島の場合は王とは訳せない。ハムダン氏の場合、もしかしたらどこかの州の王族の親類や末裔である可能性もあるが、それでも役職は役職なので世襲制の王様とは縁遠い。
「ペナン州王」と訳しても×なのだが、さらに「ペナン州国王」は二重×なのだ。
もうひとつはTun Dato’閣下について。
マレーシア在住の方ならば周知のとおり、トゥン(Tun)、ダト(Dato’)は国から与えられた称号。(これも別の機会に扱いましょう)
彼の名前はハムダン・シェイク・タヒールであり、彼には博士号があるので社会的にはトゥン・ドクター・ハムダンである。
そのハムダン氏の表記が正確でないマレー語辞典について、辞典としての質について述べたわけではないので特定はしない。まぁ、あまり普通にマレー語を勉強する人が手にする辞書でもなさそうだ。(そういう自分はマレー語を勉強しようと思ったことは一度もないので、この辞典を使ったこともないし、第一どうして手元にあるのかさえ思い出せない)
やはり、その辞典に掲載されていた正装した姿のカラー写真をみたらハムダン氏が不憫になった。一度だけ氏を見たことがあるのだが、こういった名誉職にふさわしい人格者であるようにお見受けできた。
なので不遜ながら書かせていただいた。