30日、今年も海外公演が続くシンガー、ピート・ティオ(Pete Teo)のライブがあったので足を運んできた。
たまたま来マ(「マレーシア訪問」を意味するマレーシアでしか通用しない日本語)していた大学の先生に「ホテルの近くでライブがありますよ」と言っておいたら、先生に同行してきた生徒さんの一人が、日本でピート・ティオライブを2度観ているというファンだったというから偶然というのは面白い。マレーシアに関係する人の世界は狭いね。
どうもだらだらした話になるので、<続き>から。
会場のノー・ブラック・タイ(No Black Tie)は、ライブ好きならば誰でも知っている場所。
でも、ボクは、現在の場所に移る前の店舗でカバーチャージについてくるドリンクにビールを注文したら、「ワインだけ」と言われたことに反発して“あんまりいきたくない場所”のひとつにしていた場所。どうでもよさそうで、譲れないでしょ、、、こういうことって。
ピートのショーは午後9時半という予告。もう始まっているかな、と9時40分ごろに店に言ったら、ピートが飯を食っている始末で、思わず「あんたが歌っているところを観に着たんだよ。飯食っているところじゃなくてさ」と、口かさのないマレーシア人のような言葉を投げつけてしまった。
さて、ワインがビールにならないという理由で毛嫌いしていたノー・ブラック・タイは、雰囲気も音響もすばらしい会場。小ぢんまりとはしているが、ステージ上部に反響板が設置してあって、吹き抜けの2階からでもいい音で楽しめる。KLの主だったライブができるパブには、行ったが(といっても五指で足りるぐらいしかないが…)、ここが一番だと断じてよさそうだ。
肝心のショーだが、午後10時30分を越えた頃になって始った。平日夜のショーなんだからもう少し何とかならないものか…。
ライブはそんな不満を忘れさせてくれる出来。来月韓国のテレビに出演することが決まり、ピートに同行するアコースティック・ギターのジャスティン・リムとエレクトリック・ギターのマリナ・ウィリアムの2人を従えた布陣。3人でも無駄な音は一切削いだサウンドで、ピートの歌の世界に引き込んでいく。
マレーシアのアーティストのなかで、彼ほどライブで聴きたい人はいない。失礼な言い方だけど、CDだと彼の魅力って全然分からないのだ。まぁ、ボクに限って言えば、マレー音楽は音の厚さ(いろいろな音を詰め込む)のが好きだから、サウンドに対する審美眼が狂っているだけだけど…。
基本的にギターの生音と肉声が届く範囲で聴くのが、ピートのサウンドを一番楽しめる。ピートの声って美声でも、音域が広いわけでもないのだが、情感と表現力が圧倒的にいい。
でも、あんまり酔っ払って歌うなよなぁ。
ライブはピート節のトークを交えながら「Who For You」など代表曲から初披露の新曲まで1時間半のステージ。最後は映画のために書いたという「I Go」という新曲で締めくくった。
ピートは、10月に行われる東京アジア・ミュージック・マーケット(TAM08)にも出演予定。
彼に「TAMに行くんだって」と話しかけたら「あぁ、飲みに行ってくるぜ」とのお答え。
「マレーシア映画潮流」という特集が組まれた05年の東京国際映画祭で来日後、彼に会ったときに「映画スターとして日本に行ったのはどうだった」と聞いたら「柄じゃないよ」って照れていた姿とは大違い。
彼一流の軽口が出るのは、本分であるミュージシャンとしての自信に裏打ちされたものだ。(と、みた)
詳しくはピート・ティオのサイトで。