マレーシア映画の祭典『第21回マレーシア映画祭2008』が7日、行政都市プトラジャヤで開幕した。
ボクも最近映画のこともちょくちょく書き始めているので(音楽よりも映画のほうが話題が多い)、今回初めて取材した次第。正直言ってセレモニーも集まった人たちの数も“盛大”という言葉は当てはまらないが、国内映画祭ということであればこんなものだろうか。
さて特筆したいのは、プリミア上映されたハッタ・アザッド・カーン監督(Hatta Azad Khan)の『Wayang』。映画祭のオープニングを飾るに申し分ない作品だった。
ちょっとだけ紹介すると同作は、マレー伝統のワヤン・クレ(影絵)師を描いた作品。舞台はイスラム教義に厳格な風土のマレー半島東海岸州。主人公アワン(エマン・マナン)は、ワヤン・クレも芸能とみなされご法度の地で細々と生きている。
アワンは、ワヤン・クレの虜となった盲人の少年アウィ(ズル・フザイミ)と言語障害のある少女メロー(マス・ムハルミ)を養子とし、芸を仕込んでいく。アワンは、イスラム教に忠実なことを任ずるいとこの妨害や、アウィが伝統のスタイルを否定する態度に反発しながらも、ワヤン・クレに全身全霊を傾けていく。
エマン・マナンは、生活苦を嘆く妻(イダ・ネリネ)や宗教学校に通うことでワヤン・クレを疎んじている実子に囲まれながらも芸一筋に生きる硬骨漢を演じ切った。エマンは、歌舞伎で言うと見栄ばっかり切っている演技は好きではないのだけれども、芯のあるマレー男を演じる存在感は右に出る者がない。(そういう男についていく女を演じるイダ・ネリネも右に出る者がいないね)
弟子のアウィとメローが、やっぱり恋愛関係になっていくのだけれども、マレー的で奥ゆかしくて泣かせる。話は脱線するけど、アウィを演じたズル・フザイミの演技、女の子だったらはフラッとしちゃうよ。(きっと)
長話になりそうなので切り上げるけれど、骨太な人間をしっかりと描いていて近年にないいい作品だと思う。前編方言で進むので英語字幕もあったので、劇場公開時には外国人でも楽しめる。マレー人の世界を濃密に描いているから外国でも受ける作品である気がする。
さて、最後になってしまったが今年の賞レースは、『Wayang』が主要16部門中で10部門11人がノミネート。オスマン・アリ監督の『Anak Halal』とママット・カリッド監督の『Kala Malam Bulan Mengambang』も11人がノミネートされ、三つ巴の争いの様相だ。
昨年、『Waris Jari Hantu』最優秀作品賞を受賞したスハイミ・ババ(Shuhaimi Baba)監督は『1957 Hati Malaya』で最優秀監督部門など、『Cinta』で最優秀監督賞を受賞したカビール・バティア監督の新作『Sepi』は主演男優賞、脚本、原案部門などでノミネートしており、どう評価されるか楽しみ。日本でもおなじみのヤスミン・アーマッド監督は、今年はノミネートはなしとなっている。
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へえ、すごく面白そうな映画ですね。
ネギシさんの内容を呼んだだけですと海外での上映が期待されます。
僕も観てみたくなりました。