野党連合パカタン・ラキャット指導者アンワール氏による9月16日の政権奪取宣言の期日も迫り、政治のニュースで持ちきりだ。
12日には、国内治安法(ISA)により、野党議員、ブロガー、新聞記者が拘束される事態になって、憂鬱なことこの上ない。ISAは、昔教科書で習った戦前の治安維持法のようなもので、政治犯の取り締まりのニュアンスが強い。
詳細は避けるけれども、拘束された新聞記者は、ペナン州で人種差別発言をした政権与党最大の統一マレー人国民組織(UMNO)地区長を糾弾する論陣を張った人で、今回のISA適用は与野党の政治対立以外にも民族対立の構図が見えてくる。
今年3月の総選挙での与党勢力後退以来、与野党対立は、政権与党の汚職の摘発が進んでいることは歓迎だ。もちろん与党が政権維持する限り、自浄作用には限界はあるだろうが…。
しかし、与野党対立は民族間の問題というパンドラの箱を開けてしまった。
マレー人を優先し、マレー語を国語とし、イスラム教を国教とするマレーシアの根幹に対する封印を解いてしまった。
今のところ与党も野党も民族調和についてなんらかの道も示していない。
ざっくり言えば、与党はマレー系優先のブミプトラ政策の維持と民族・宗教問題の自重、野党はブミプトラ政策の破棄だ。前者では鬱積した民族対立の感情を抑える限界にきていることに対処を放棄しているように思える。後者の立場は、平等の実現のために植民地時代から続く、民族の経済格差を解決する枠組みを示さなければいけない。
個人的には、与党でも野党でもかまわないから民族の微妙な対立を何とかしてもらえないか。国会議員の奪い合いだけでは、この鬱屈した空気は何も変らない。