昨年、マレーシア国歌、ネガラクを皮肉たっぷりにパロディにしたラップをYou-Tubeなどには発表し、物議をかもし出した中華系の学生、黄明志(25歳、Wee Meng Chee)氏が留学先の台湾から学業を終えて帰国した。
(写真:ニュー・ストレート・タイムス紙)
黄氏は、台湾留学中の昨年7月にYou-Tubeなどにnameweeの名で『Negarakuku(オレのネガラク)』(ビデオはこちら)と題した中国語ラップ曲を投稿。マレーシアの警察の賄賂や公務員のサービス態度、教育システムを批判した内容が物議をかもし出し、政治家も言及する事態になった。
黄氏は政府とマレーシア国民に謝罪の意を表明したものの、政権の中でも最も舌鋒鋭いナズリ首相府大臣が「法の裁きを受けるべき」と、かなりの“お冠”振り。それから1年経った8月29日、政治バランスの変化が民族間の緊張をもたらしているというあまり好ましくないタイミングで留学を終えた黄氏が求職活動のために帰国。
9月23日、黄氏は事情聴取のためにブキット・アマン警察本部に出頭した。
取るに足りないかもしれないが、ちょっと思うことを書いてみる。
それで『Negarakuku』のビデオ、きっと騒ぎの後削除されているだろうし、ボクは中国語がわからないので観てみることもしなかったのだが、なんと言うことはない。
英語の字幕が着いてちゃんと再開していた。
交通警察の交通違反の見逃し料としての賄賂、長蛇の列でも急ぐ気もなく働く政府や公共機関の職員、政府による中国語教育機関への援助の薄さなど、誰もが不満に思っていることをラッパーらしく、ずけずけと皮肉っているところは、表現者として勇気があることだと思う。
本人も新聞紙面で「ラップを作るのがオレの仕事」(テレビでは「趣味」とも言っていたのが気になるが)と言っているし、アルバムも出しているようで、きちんと主張である体は成している。(と言っても、今さら「お遊び」とは言えないぐらいの騒ぎになってはいるが…)
しかし、個人的には、どう観ても批判の対象がマレー系にしか受け取れないところが、表現者としての賢さが足りない。
批判の対象はブミプトラ政策で、公務員の雇用や大学の入学枠にマレー系を優遇していることだから、こうしたトーンになるのだろうが、「毎朝5時にお祈りの時刻を告げるアザーンで目が覚める。R&B調もあれば、調子っ外れもある」とか「頭にスカーフをかぶってのろのろを道を歩く」、「彼らは、中華系のようにガンガン働いて死ぬほど疲れているようにはなろうとはしない」などという歌詞があるが、民族性の非難ではただの悪口で、表現ともいえない。
これじゃ、反感を買うだけじゃないか。
でも、この国に10数年住んできて、観察してきたけれど、学校出たばっかりの若い連中って、あまり他の民族と交わってもいないし、他の民族のことも驚くほど知らないし、関心もないようだ。民族の文化や風習なんか、外国人の我々の方が詳しかったりする。
彼らも学校を出て会社に入って、他の民族の同僚を持ち、自分の母語以外の言語でコミュニケーションして、やっと他民族社会のマレーシア人になる。一緒に同じ目的で汗を流して働けば、同僚の民族なんて意識しなくなるものだ。
また民間会社で働けば、中華系に伍してバリバリと働いているマレー系だっている。
彼らにはブミプトラ政策の恩恵なんて無縁だし、逆にビジネスでも有益な中国語が話せないハンディだって負っている。
黄氏もそんな友人の一人でも持てば、『Negarakuku』の表現ももう少し磨かれるのだろうに。
政府は、18歳ぐらいの青年に国家奉仕の名で軍事キャンプを義務化しているけれど、たった2、3ヶ月間の期間で、兵役とは呼びがたいものだ。政府の意図は、強い軍隊を作るためではなく、国民団結の目的で若いうちから民族の枠に閉じこもらないで交友して欲しい、という点だと思う。若いころに辛いトレーニングで苦楽を共にすれば、一生の友達ができるのではないかなぁ。(甘チャンみたいなことを言っているのは分かっています)
それで黄氏は、ジャーナリズムの就職先を希望しているとのこと。
それに先立ってビデオ・ドキュメンタリーを制作しているそうで、なかなかバイタリティーがある人物のようだ。
警察は扇動罪の容疑で黄氏を取り調べるようだが、この才気あふれる青年の将来を窄めてしまうようなことはしないで欲しいと思う。
(あと、この次に警察に出頭するときは、両親の付き添いなしの方がいいのではないかな)
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