今年もあと残すところ1日なので、多少なりともマレーシア芸能の総括を。
今年は、ポップ・アジア編集部から『That’s Entertainment from Asia 2008』が刊行されたものの、執筆自体は昨年末。つまり、ボク経由の08年のマレーシア芸能情報は、1ページも日本で印刷物にならなかったと。こんなことは、ポップ・アジア創刊以来記憶にない状況なんだけれど…。
でもポップ・アジアの創刊者であり、編集長の関谷元子さんが言うことがすごい。
「ポップアジアがないとナンか暇…」
うーん、アジアと腰をすえて付き合ってきた人は、これぐらいの状況なんか危機でもないらしい。でも、ポップ・アジアについては「そう遠くない将来にまた始めます」とのこと。
なのでここを訪れてくれるかなも忘れないで待ていて欲しいものです。
それで、今年もベスト5。
<音楽>
Hujan、『Hujan』
The Fabulous Cats、『Hyperkosmik』
Butterfingers、『Kembali』
マリック(Maliq)、『ok』
シティ・ヌルハリザ(Siti Nurhaliza)、『Lentera Timur』
やっぱり、本欄でも再三紹介してきたHujanが、やはり今年最大の収穫だった。もちろんMeet Uncle Hussain(MUH)も同格以上に評価したいが、アルバムのリリース待ち。
インディ・ロックはけっこうにぎやかだったけれど、やっぱりSix Senseみたいなインドネシア模倣サウンドとBunkfaceとかマレー語で歌う必然性がまったく見えないバンドも多かった。
今年のジュアラ・ラグ賞大賞を獲得したEstrangedなんかもいいアルバムを出しているけど、今ひとつマレーシアのバンドであるというものが見えなかった。The TimesとかNitrusなんかもいいバンドだったけど、ベテランButterfingersによるマレー語転向2作目でのマレー語でロック作っていこうという姿勢を見せ付けられると、ちょっと霞んでしまう。
The Fabulous Catsは、昨年デビュー作も評価したけれど、2作目もアルバム名が示しているようになんだかとらえどころがないところがよかった。底辺にあるマレー歌謡の泥臭さは捨てずにモダンなアレンジと奇抜なアイディアで聴かせるところがいい。ただ、マレー歌謡がわからないとさっぱり評価できないグループなんだけれどね。
あとポップに関しては、結局オーディション番組アイドルばっかりだったので、2作目以降で評価待ちと言い訳させてください。
Too Phatのメンバー、マリックのソロ作と大御所シティの作品は、ちゃんとやるべき人がやるべきことをしている感じがうれしい。
でも、今年もムーブメントやブームもなく、音楽界としては寂しい一年だったかな。
<映画>
ママ・カリッド(Mamat Khalid)監督、『Kala Malam Bulan Memgambang』
ママ・カリッド(Mamat Khalid)監督、『Man Laksa』
カビール・バティア(Kabir Bhatia)監督、『Sepi』
M.スバッシュ(M. Subash)監督、『Pensil』
ピエール・アンドレ(Pierre Andre)監督、『I’m not single』
今年は調子に乗って映画も。
国の映画振興団体フィルム・ネガラ(FINAS)のシネマ・マレーシアというサイトによると00年から07年までの8年間で制作、もしくは公開された映画数が235作。なんと80年代、90年代の20年間の作品数204を軽く上回っている。音楽に関しては、90年代の10年代と00年以降の9年間と比べてアルバムのリリース数は、多くても半分ぐらいしかない実感がある。
さて、今年は、なんといっても『Kala Malam Bulan Memgambang』でマレーシア映画祭で最優秀作品賞を獲得したママ・カリッド監督。同作は、50年代のモノクロ映画風にある街に起こった奇怪な出来事を追うコメディタッチの作品。チープな部分と「なんだかなぁ」という展開で笑わせるんだけれど、しっかりと作り込んでいるのがこの監督の持ち味だ。
ついでにこの監督の『Man Laksa』(06年)を最近目にすることができたんだけれど、これは日本人に絶対ウケけるね。こちらはある村のお祭りの余興ステージを企画・進行する話なんだけれど、次から次へとしょぼいキャラがステージに登場し、ハプニングが重なる展開。観ている側からとしては、突っ込みどころ満載なのだ。それでいて荒唐無稽ではなくて、マレーシアだったらありえそうなところが笑いになっている。それにエンディングのぶっ飛びようもいい。
全然、今年のベスト5じゃないところで熱弁を振るっても仕方がないのだが、あんまり当地では話題になった作品ではなくてビデオCDなんかも手に入らないのが残念。
ママ・カリッド監督は、マレーシア映画が賑わっていると日本で話題になったときに「じゃ、マレーシア映画って他の国の映画とどう違うの?」という部分に答えてくれる人だと思うのだ。監督自身は、ドイツで暮らしていたこともあるようで、マレーシアとマレーシア人の特異さ、面白さなんかを客観的に笑いにできることも、海外暮らしの経験に起因していると思う。
『Sepi』と『Pensil』については、リビューを書いたので参照してもらいたいが、『I’m not single』は、以前マレーシア映画界のイケ面として推したピエール・アンドレの主演ではなく、2作目の監督作品。作品自体は、切り口が新鮮でもないし、ストーリーも惹き付けるものが強いわけではないのだけれども、カメラの後ろに回っても俳優としての彼の持ち味である控えめで、温かさが作品のトーンにも現れているところが面白かった。
寡黙で優しい男の“ピエール様”が、映画作品で幅を利かせるのにも期待。
うーん、新商業映画御三家になりそうな、KRUプロダクション、アーマッド・イダム(Ahamd Idham)監督、アフドゥリン・シャウキ(Afdlin Shauki)監督や父親から家督を譲り受けたシャムスル・ユソフ(Syamsul Yusof)監督など映画のお話は尽きないのだけれども、そのうちに。(やはり、今年中に書けなかったな)
皆様、よいお年を。
来年もがんばって書きます。
アサ・ネギシ
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日本にいてても気になるCDはだいたい買えるようにはなったけど
マリックのソロはなぜか通販になくまだ聞いてません・・・
悔しいなぁ・・・やっぱりいいのかぁ。
その代わりってわけでもないけれど、
こないだのNHK−FMで気になっていた
Sheila AbdullのCD買いました。
ナレーションにかぶせてた曲にまで出会えて気分爽快♪
2009年はわたしの財布が悲鳴をあげるほど
そそるCDが(円高のうちに!)たくさん出てほしいと願ってます☆
今年も気になるバンドや情念的熱唱の紹介、楽しみにしてます!
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おーこさん
>2009年はわたしの財布が悲鳴をあげるほど
そそるCDが(円高のうちに!)たくさん出てほしいと願ってます☆
いい表現ですね。
ボクもビンボーでもCD代はケチれません。
シーラ・アブドゥル、アルバムではアドナン・アブ・ハッサンの手腕でなかなかいい線の泣きの熱唱を聴かせてくれます。成長すれば、ミシャ・オマールみたいなシンガーになれそうな予感。
でも、当地ではコカコーラの宣伝タイアップで「Bebaskanlah」というダンスっぽい曲のクリップが流れていて、デビュー作路線とは違う方向に行ってしまうのかなぁ。
さて、今年は苦手なオーディション・アイドル組にもスポットを当てられるかな。。。