ヤスミン監督は、5作の劇場映画作のほかにもLeo Burnett広告会社のクリエイティブ・ディレクターとしてテレビ広告(CM)でも数々の名作を残した。
一般のマレーシア人の心には、ヤスミン作品は映画よりもCMの方が強い印象を残したのかもしれない。
彼女は、小津作品や寅さんなど日本映画を愛してやまないと公言してきたが、間接的に商品や企業を宣伝する日本のCM文化にも注目していた。そして、当地でも比肩するものがいないCMの作り手でもあった。
後に映画作品としても花開く、ヤスミン監督独特の映像美と世界を築き上げるきっかけとなったのは、当地でも経済発展によるコーポレート・シチズンシップの萌芽により、生まれてきた企業イメージCMである。
94年にLeo Burnett社に入社したヤスミンは、95年から国営石油会社ペトロナス社のイメージ広告を担当し、8月31日の独立記念日の期間には、彼女のCM第一作となる「Little Indian Boy」が発表される。
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「Little Indian Boy」は、一人のインド人の少年が、マラヤが英国から独立した1957年8月31日の今は亡き父親との思い出を回想した一編。今は成人した少年とマレーシアを重ね合わせて独立の意味を考えることはさることながら、父親との絆にホロリとさせられる作品で、ボクも強烈な印象が残っている。
一編のCMで心が熱くなる。当時としては画期的なことで、カメラの後ろにいたのがヤスミンであったことは、まだ一般人の知るところではなかった。
ペトロナス社のイメージ広告は、独立記念日のほか、イスラム教徒の断食明けの大祭ハリラヤ・プアサ、華人の旧正月、ヒンドゥー教徒のディーパ・バリに合わせた時期に制作されている。
ヤスミン監督が手がけたCMの中には、オーキッド役のシャリファ・アマニ(Syarifah Amani)やジェイソン役のン・チューセン(Ng Choo Seong)が起用されたものもある。映画作品の世界の映像美で、家族の絆が描かれており、ヤスミンがいかにオーキッドとジェイソンを愛してやまなかったがわかる。
今となってはもう紡がれることのないオーキッドのストーリー。ファンにとっては、ヤスミンが手放さなかった2人のキャラクターに語らせたかった他のストーリーの一端を想像するのも彼女への餞かもしれない。
そしてCMディレクターとしての彼女が世界に評価されたのは、07年、マレーシア独立50周年の節目に制作された『Tan Hong Ming In Love(タン・ホンミン・イン・ラブ)』である。華人系の小学生ホンミン君が、照れながら同級生のウミ・カズリナちゃんのことが好きだ伝えるただただ愛らしい姿に民族の壁など存在しないことを伝えてくれる。
いままで彼女も含めたCM制作者が、さまざま舞台設定や演出で、多民族社会の友情や結束を表現してきたが、2人の愛らしさを目の前にするとすべて野暮に感じる。ヤスミン監督は、この一編で若い世代に希望を投影させる。そして、彼女の遺作となった今年3月に現地公開の映画作品『Talentime』では、主演の高校生たちは、苦しみと悲しみを背負いながらも、希望で輝いていた。
ヤスミン監督は、08年5月に『結束のためのマレーシア人アーティスト(Malaysian Artistes for Unity)』にも参加し、朋友ホー・ユーハン監督とともにテーマソング「Here In My Home」のビデオクリップも制作した。作品を通してだけでなく「純粋に国を愛する心」で、政治的、民族的にぎくしゃくしているマレーシアの状況に声を上げるひとりとなった。
また、彼女は今年4月に就任したナジブ・ラザック首相が、国民の結束のスローガン“1マレーシア”を掲げいることについて、英字紙スターとのインタビューで「私が20年間映画とCMと脚本で語ってきたことね。私のまねをした、と思ったわ」と冗談交じりに語っている。
残念ながら、今年のペトロナス社の独立記念日CMは、彼女の手によるものではないそうだ。
観るものを惹きつけ、そして長く記憶に残る情感たっぷりの彼女のCMは、エア・アジア社の「Have You Flown AirAsia Lately?」が遺作となった。
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笑いと涙を盛り込んだヤスミンに影響を受けたCMも増えてきたが、一目で見る人を引き込むヤスミン・カラーの絵がテレビから消えてしまうのも寂しい。
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http://www.youtube.com/watch?v=GJ3QIKoKaxc
チョコレートという短編作品がもうすぐここで見れるらしいですね。
http://15malaysia.com/langswitch_lang/en/
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Assidiqueさん、早いですね。
マレーシアの今を語る15作が観ることが出来る企画のようです。
詳細がわかったらお知らせします。