稀代の映像作家たちの短編が鑑賞できる話題の『15・マレーシア』(サイト)だが、第一弾のホー・ユーハン(Ho Yuhang)監督の「Potong Saga」、インパクト抜群の作品だ。
台湾帰りの中華系青年が、イスラム金融に口座を開きたいが、”ある条件”を受けなければいけないという仲間の話を真に受ける話。
いまマレーシアは、利子を禁止した教義に適合した現代的なイスラム金融に力を入れているのだが、中華系の方が「元金が安全だ」など話しているところが、いかにもマレーシアの断面を切り取っている。また、”ある条件”もイスラム教徒のマレー系と中華系の習慣の差異を語るもので、よく庶民レベルでは笑いのネタになることだ。
まぁ、ストーリは、解釈なんて無用。いかにも庶民が好みそうな馬鹿話。荒唐無稽なギャグを盛り込んだCMなんかも手がけるホー監督ならば、こんな庶民の馬鹿話を映像化したら右に出るものもなかろう。
また、主役の青年を演じる人物も話題性たっぷり。07年に国歌ネガラクのメロディでマレーシアの警察や公共サービスをラップで皮肉った「Negarakuku(オレのネガラク)」をYouTubeに発表し、物議をかもし出したNamewee(Wee Meng Chee、黄明志)氏。昨年、留学先の台湾から帰国していたが、どうなったか気になっていたところだった。(彼に関する記述はこちら)
作品ではめちゃめちゃ間抜けな結末を迎えるトホホな人なんだけれど、彼のマレーシアでの活動開始の”禊ぎ”になったのでは。こんな場合、彼が「いい作品に恵まれた」といったらギャグにしか聞こえないけれど、ホー監督らいいクリエーターたちに囲まれて活動がスタートできた。
明日、19日は7月25日に急逝したヤスミン・アーマッド(Yasmin Ahamad)監督の「Chocolate」が公開される。