開幕3連勝で単独首位。
ペナンは、チームの好調をさらに確かなものにするべく第4の外国人獲得に動いていた。テストを受けていたのは26歳のカメルーン人DFペグベ。しかし、最終テスト・マッチでペグベは開始6秒に受けたボールをクリアーミス。そのボールが得点につながり、合計たったの10秒で落選。傭兵稼業の厳しさを語る一幕だった。
チームは継続してサウジアラビア人DFのテストを続けるという。
伊藤選手の周辺も賑やかになってきた。
パハンとの首位攻防戦がテレビ中継されたために顔が売れた。新聞でも伊藤選手は“センセーショナル”と評され、ペナンがらみの記事には必ずIto Danの名前が挙がるまでになった。近所のショッピングセンターでもファンに囲まれ、当座の移動のために買ったがすぐ故障の憂き目に遭った自転車の修理もタダでやってもらった。また、チームのファンクラブにマレー系の女性も増えたという。ちなみにマレーシアではサッカーファンといえば野郎と相場が決まっているので、やはり伊藤選手の容姿に因果関係を結び付けたくなる。
ちなみに伊藤選手は香港時代に現エバートンのリ・タイ選手と一緒にテレビCMに出演もしたことがある。こうなるとマレーシア・サッカー界で外国人選手が注目されるという空前の“伊藤旋風”の予感さえしてきた。
私生活でもパハン戦後、遅れていたチームからのクルマの支給がやっと実現した。実はこのクルマ、チームがノーリザン・バカール監督のために用意したものだった。監督の方から「選手の生活環境の方が第一」と、伊藤選手に譲ってくれたものだ。これで食事を取るためにも灼熱の市内を歩いたり、買い物のために自転車に乗らなくてよくなった環境の改善は計り知れない。また、このことで伊藤選手への監督への人間的信頼も大きくなった。伊藤選手はチーム参加のテスト後もノーリザン監督のペナン就任が定まらなかったおかげで、合格の最終決定を待たされた経緯がある。見方をかえれば、これで貸し借りはなくなったということか。
2月12日、ペナンは昨年のFA杯の覇者ペラとアウェイのダルル・マクムール・スタジアムで対戦。
マレーシア・サッカーでは、シーズンの幕開けは英国式にFA杯とマレーシア杯の覇者が対戦するチャリティー・シールドが行われる。1月29日のチャリティー・シールドでペラはペルリスとアウェイで対戦し、2−2の末、PK戦で勝利。好スタートを切った。また、ペナンにとってペラは98年にシーズン制覇以来、7年間勝ち星がない苦手な相手。(00年のペナンがFA杯制覇のときは1勝1敗)この辺がペナンを強豪と呼ぶにためらわせる理由だ。
試合は78分、FWメルニコフが倒されたPKをMFバレトが決め、1−0で勝利。リーグ戦では98年5月26日に記録した2−1以来の勝利。伊藤選手はFK、CKを任されるようになったが、PKは伊藤選手が一目置くブラジル人バレトに譲ったのこと。
伊藤選手は前半16分、21分に2列目の飛び出しからシュートを放った。自身はHPで「ビックチャンスを外したのでイマイチだった」という感想を述べている。しかし、チームは昨季のリーグ覇者、FA杯覇者を破り、また英字紙スターの記事もペナンの得点機を詳細に伝える内容であり、いよいよ強さも本物である感を深めた。
試合後はリーグの中でも最も熱狂的なペラのサポーターのひとりがペナン・チームのバスに小型の爆弾を投げつけようとした事件が起こった。チームにとってはさいわいなことに爆弾は自爆し、そのサポーターは顔面血まみれで警官に取り押さえられた。
マレーシアのサッカーの熱さをまざまざと見せ付けられながら、バスはスタジアムを後にした。
次戦は、19日ホームで3勝1分けで現在2位ペルリスとの対戦。得点もリーグ最多の11点。
厳しい首位攻防戦が続く。