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対パブリック・バンク・セランゴール戦の観戦記 – アサ・ネギシのページ/Music Raja
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マレーシア・ライターの見聞録

対パブリック・バンク・セランゴール戦の観戦記

 痛い敗戦後から1週間、3月5日ペナンは再び首都圏シャー・アラム・スタジアムでのパブリック・バンク・セランゴールとの対戦を迎えた。
 パブリック・バンクは03年旧プリミア・トゥーで優勝、昨年昇格したスーパーリーグでも2位と着実に上昇してきた新興チームの雄だ。しかし、スタジアムを見渡す限り、ホームとはいえサポーターの姿は20人にも満たない少なさが目に付く。試合中は、サポーターが叩くシャー・アラム・スタジアム独特の構造の屋根に反響しているのが救いだが、ビジュアル的には閑散という言葉がぴったりだった。比べてペナンには、この日もバスをチャーターしたコアなサポーター団が試合開始の2時間前から観客席にスタンバっている。アウェイの方がサポーターが多いのを目にしたのは初めてのことだ。
 ちなみに翌日行われた同スタジアムでのプリミア・リーグ、セランゴール対ケダの伝統の一戦は、5万人の観衆が入ったという。やはり、新興チームの雄とはいえ、クラブはまだファンのためのものではなく、ただの広告塔であるのではないか思ってしまう。
 試合は、開始早々からペナンのペース。
 開始50秒には、MFノルディン・カミスがシュート。本来の中盤のキープ力が戻ってきたペナンにゴールが生まれるまでは、5分間しか必要なかった。ロシア人FWメルニコフがMF伊藤からのパスをきっちりと決めて先制。前戦の嫌な雰囲気もこの一発で晴れた。
 前半は、リーグ一といってよいペナンの中盤が左右に自在に展開。20分代にはブラジル人MFバレトがロング・シュートやオーバーヘッド・キックで相手ゴールを脅かす。伊藤も左サイドで巧みなパス交換などをみせ、相手DFを切り崩すなどリズムのよさが戻ってきた。35分にMFン・コクヘンが右サイドから、36分にはFWメルニコフがドリブルで突破するなど、今季のペナンの持ち味である多彩な攻撃力を披露した。
 後半に入るとパブリック・バンクは、DF陣の統率が整い始め、ペナンの攻撃をオフサイド・トラップでしのぐ場面が出始める。また、マークを徹底し始め、警告も厭わない体を張ったプレーが目立った。パブリック・バンクは、75分アイマン・ウォンのCKからウルグアイ人DFエスピンドラが長身を生かしたヘディングで押し込み1−1に追いつく。エスピンドラは、前戦でレッドカードを受けたアルゼンチンFWグスタフォ・フェンツの代わりに出場していた第4の外国人。伏兵の存在がものをいった。
 追いつかれたペナンは、再び中盤でボールをキープ。79分、バレトのブラジル人魂に火がつき、驚異的な粘りでマークを背負いながらシュートを放つがゴールを割ることが出来ない。80分代に入り、伊藤も3本のCKを蹴るが決定機を作れず。45分には、DFチー・ワンホーのFKにメルニコフがタイミングよく反応したが、相手GKがメルニコフと交錯しながらも死守。

 終わってみれば、優位に立ちながらも最後の決め手を欠いたペナンの姿があった。
 試合後、最後までベンチに居残ったのが伊藤とベレト。二人の間でどんな言葉が交わされたかは知る余地がないが、ともに中盤の要として攻撃の組み立て方に悔やみきれない場面が多かったに違いない。ベレトにはサポーターに笑顔を見せる余裕があったが、伊藤はうつむいたままピッチを去った。
 
 この夜は、ペルリス、パハンともに引き分けで足踏みであったことがペナンにとっては、幸いなニュースだった。しかし、勝負の世界には幸いなことと言えるのは、すべてが終わってから。どの国にいても2年目があると思ってプレーしていない伊藤にとっては、勝ち点3を上げられなかったことは「首位に浮上できるチャンスを逃した」という事実でしかない。
 シーズンは、週末から2巡目に入る。

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