マラッカ海峡で日本のタグボート『韋駄天』の乗務員3人が海賊により拉致される事件が起こった。
マラッカ海峡での海賊の跳梁は01年頃がピークであり、しばらくは減少傾向にあったが、スマトラ島沖の巨大地震の前まで増える傾向にあったという。12日にも同種の事件が起きていた。
マラッカ海峡の安全問題については、昨年米国がテロの標的になることを予見し、海峡警備に介入しようとしていた経緯がある。
イラク戦争に反対であり、イスラム諸国会議機構(OIC)の議長国であるマレーシアは、英、豪、ニュージーランド、シンガポールとの5カ国防衛協定があることを理由に米国の介入を断り、独自に沿岸警備隊を設立して、警備の強化に当たってきた。
おそらくシンガポールは、本心では米国の介入を望んでいただろうが、マレーシアが沿岸警備隊を設立するという説得に折れたのであろう。しかしながら、インドネシアを取り込む枠組みがなく、まだ片手落ちだといわざる得ない。
海賊はインドネシア人によるものがほとんどだ。海賊行為は金品の収奪や身代金が目的で、乗組員の命までは奪わないであろうと考えられる。しかし、インドネシアが真剣にならない限り、マラッカ海峡の安全維持はおぼつかないことが明らかになった。
世界の半数のタンカーが行き来するマラッカ海峡がF.フォーサイスの『悪魔の選択』のようなシナリオの舞台になるとも限らない。巨大タンカーがテロリストの手に落ちたら、世界を屈服させる大事件になる。
安全は国土だけのものではないことをあらためて思い知らされる。