『アジア新聞屋台村』
 集英社文庫、2006年

 ワセダの三畳間にくすぶっていたタカノ青年は、突然、東京にあるアジア系新聞社の女社長から編集顧問にスカウトされ…。自伝仕立て「多国籍風」怪しさと混沌の青春記。
 著者から一言
 第12作目。「異国トーキョー漂流記」ではアフリカ、ヨーロッパ、南米、中東など、主に”遠くの外国人”について書いたが、今回は日本に住む東南アジア・中国系の人々、つまり”近い外国人”について書いた。「異国〜」が気楽な友だちづきあいの話であるのに対し、こちらは仕事でガシガシ衝突するという点でも対照的。「ワセダ三畳青春記」とあわせて、これで「東京青春三部作」が完結した。
 書評など
「私は最初から、高野さんに小説も書きましょうよって言ってましたので、楽しみにしていました。先に申し上げちゃいますけど、すごく面白かった」
(宮部みゆき「小説すばる」7月号、高野との対談にて)
「いやはや面白い。読後ほんわかしたものに包まれるのが心地よい」
(北上次郎「青春と読書」7月号)
「本作は作者初の小説だそうだが、こういう作品に対しては小説という枠組みすらも堅苦しく思える。(中略)高野秀行という唯一無二の語り手が記した文章であれば、何と呼ばれるかは問題じゃないはずだ」
(竹内真「SAPIO」8月9日号)
「デラシネたちのバイタリティとユーモアに、なんだかむくむくと元気が出てくる−−というのが高野秀行の本を読む効用の一つだが、本書も例外ではない」
(北上次郎「本の雑誌」8月号)
「アジア各国を旅すると、自分の常識が音をたてて崩されて、何かゆるゆるとした熱気に溶けていくような心地よさがあるが、それがこの本にもある。(中略)じつに爽快な、アジア的青春小説だと思う」
(角田光代「サンデー毎日」8月13日号)
「アジアの辺境をルポしてきた著者の抱腹絶倒にして切ない自伝的小説」
(「信濃毎日新聞」7月30日)
「あくまでフィクションのようだが、作者のアジア体験の豊かさによって、ユニークな同僚たちに、まるで実在するような体温がある」
(「読売新聞」」8月8日)