かつて「ピグミー」と呼ばれていたが、今ではこの言葉が差別語となってしまい、なんと呼べばいいのかわからなくなった狩猟民族がコンゴ河流域に住んでいる。
彼らは大人の男子でも身長140センチ足らず、定住せずに森の中を移動して暮らしている。1991年に私が訪れたときは、まだ弓矢で猟をしていた。
その弓矢がしょぼいもので、「とてもこんなんじゃ獲物はとれないだろう」と思ったら、長さ4メートル以上もある大蛇(ニシキヘビ)を仕留めてしまった。
もっとも、こんなすごい獲物は1年に1回か2回くらいしかないらしく、みなさん、大喜びしていた。
私も大蛇と一緒に記念写真を撮りたかったが、一人で旅していたので、しかたなく、その低身長移動狩猟民のおじさんにカメラを渡した。
なんだかわからない様子だったが、ファインダーをのぞかせて、シャッターに指を乗せ、「とにかく、ぼくが見えたらこれを押してほしい」と頼んだ。
ひじょうに不安だったが、日本に帰ってフィルムを現像してみると、ちゃんと写っていた。それがこの写真だ。微妙に中央からずれているのがなかなかのセンスである。
「ピグミー」を撮った写真は腐るほどあるが、「ピグミー」が撮った写真は世界でも稀だろう。 |