1992年から93年、私はタイ国立チェンマイ大学で日本語講師をしていた。
タイはオカマが多いことで知られるが、ことにチェンマイは「メッカ」と呼んでもいいほどである。
大学で、私は学生だけでなく、観光ガイドにも日本語を教えていた。
その中にもオカマは何人もいた。
ガイドへの日本語コースが終わったあと、打ち上げパーティでは、オカマ美人コンテストが開催された。
優勝したのは、意外や意外。いかにもオカマ然とした連中ではなく、まじめで目立たないふつうの男性ガイド…と思っていた人だった。
優勝が決まると、彼は「せんせえー!」と私のところに駆け寄ってキスしようとするので、私は必死に逃げた。
嬉しそうな顔に見えるかもしれないが、錯覚である。 |