ちょっと映画『1957 Hati Malaya』の欄でシティ・ヌルハリザ(Siti Nurhaliza)の今年の新曲もこれだけ…、と書いたのだけれども、新曲入りのポップ・トラッド(ポップ伝統歌謡、現地ではイラマ・ムラユで通っている)集も出ている。
シティがポップ・トラッド・アルバム『Cindai』を出してから10年。ノラニザ・イドリス(Noraniza Idris)との共演作『Seri Balas』(99年)を含め、『Samura』(00年)、『Sanggar Mustika』(02年)と4作のアルバムを出しているからそろそろベスト集もあってもいいというタイミングだ。
それで今年リリースされたのが新曲2曲が入った『Klasik』。
彼女の熱心なファンならば、ジャケ写真が『Sanggar Mustika』(02)のものだとすぐ分かるだろう。それに収録曲(下)を眺めれば、「Cindai」、「Balqis」、「Ya Maulai」、「Nirmala」といったヒット・ナンバーがないこともちょっと買い控えの要因かもしれなし、ベストと言い切れない理由。
でも、ボクみたいなカセット主流派は、「テープも劣化してきたし、CDでもう一度聴きたいな」で、買ってしまうんだなぁ。
実は、レーベルのSRCは他のアーティストとのオムニバス盤なんかで、そういったヒット・ナンバー入りのアルバムを出してしまっていることが、どうもその辺の理由だ。
でも、この選曲がいいんだなぁ。
というのも「Cindai」などは、曲調はトラッドでも新たに作られた曲。でも、本作は14曲中10曲が、昔から歌い継がれてきた曲。また、ジョゲット(Joget)などの舞踊曲も除いた選曲だ。
やっぱり、ここまで古い曲だと民謡のようなもので、使われている楽器も、曲の展開もワン・パターンなので、いきなり良さを分かれといっても難しいのだが…。認めたくないけど、歳のせいかなぁ。ポップ・トラッドは、知識もないし、あんまりよさが分からなくて、リビューは深井信さんに振っていたもんな。
でも、ポップ・トラッドであっても舞踊曲がないので、メロディの叙情とシティの天賦の才とも言える節回しを多用した歌がじっくりと聴ける。ゆっくりでも早くもないテンポのリズムの曲が多くて、シティの優雅な声が心地よい。
新曲2曲は、ちょっと録音時期まではわからないが、シティの歌声は円熟という言葉が出てくる。正直言って新曲だけがウリにはならないけど、テーマが同じ他の曲と一緒で生きてくる感じだ。
3は、どうもサラワク出身のダヤン・ヌルファイザ(Dayang Nurfaizh)が同時期に『Kasih』というアルバムで歌ってしまっていたので、彼女の方に譲ったのかな。6は、アルバム『Cindai』に先駆けて、披露されたシティにとって初のポップ・トラッド曲。
7は、インドネシアが本場のクロンチョン。そういえば、ニン・バイズーラ(Ning Baizura)が97年に『Ke Sayup Bintang』で「Sayang Di Sayang」を歌ったのは、「シティがまだやっていない」というのも動機だったとか。でも、シティも多くはないけどクロンチョン歌っていたんだなぁ。
10は現代音楽の父P.ラムリーの曲だが、あらためて聴いてみると民謡と歌謡曲の中間にあるような曲で、マレーの叙情を現代に持ち込むことも彼の偉業だったと感慨。9と11は、比較的新しく作られたポップ・トラッドで、現代マレー・ポップスの切ない泣きの叙情をトラッドの優雅さで包んだ曲で、個人的には最も「くらっ」と来る。ちょっとマレー的な美旋律が耳に心地よくなった人のポップ・トラッドの入門曲にどうかな。やっぱ名曲と断じたい。
初期の『Cindai』と『Seri Balas』からの曲は、若いながら本当に基本ができていることに感心。
ちょっと蛇足なのだが、14のインドネシア曲は、01年シティのショーで、どうしても曲名が思い出せず、狂おしい思いをした曲。『Cindai』は、若くてあんまり熱心に聴いてなかった! なかなか「狂おしい」歌詞だけど、意味は「?」。深井信さんがシティ・ファンのサイトに書いた訳詩も見てください。(場所は、Discgraphy→CD編→Cindai詳細)
蛇足ついでに本作のジャケットは『Sanggar Mustika』より大判で、マレーの晴れ着ソンケット織りの民族服写真を堪能できます。知らなかったけど、ソンケット織りって和服みたいに高くて、一生に一着ものだそう、です。
《収録曲と初出アルバム》
1.Jangan di Tanya New
2.Sirih Pinang New
3.Seri Sarawak 『Gemersik, Irama Melayu』(05年)オムニバス版
4.Damak 『Cindai』(97年)
5.Syair Kamelia 『Sanggar Mustika』(02年)
6.Seri Mersing 『Siti Nurhaliza(2nd 97年)』
7.Keroncong Si Endang Endong 『Samura』(00年)
8.Musalmah Manis 『Seri Balas』(99年、ノラニザ・イドリスとの共演作)
9.Bisikan Hati 『Sanggar Mustika』(02年)
10.Bunga Melor 『Sanggar Mustika』(02年)
11.Pawana Sampaikanlah Salam 『Samura』(00年)
12.Pulau Pisang 『Seri Balas』(99年)
13.Lela Manja 『Cindai』(97年)
14.Es Lilin 『Cindai』(97年)
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以前はSiti関連のCD(VCDは除く)がリリースされると、迷わず購入していましたが、去年リリースされた結婚記念盤は”旧所属レーベル(SRC)が所有している未発表音源をベスト盤風に見せかけて売ろうとしているのが見え見えだったので購入しませんでした。が、この”Klasik"は新曲”Sirih Pinang”が気に入ったので(Jiwang.orgで視聴しました、、)購入しました。ジャケット(外、内全て)、そして結婚記念盤同様、”何でこんな選曲になったんだろう(見事にヒット曲は外れてますよね。でもJoget曲が抜けている、カバー曲中心の選曲というのは、気付きませんでした)?”的な収録曲目を見た時は、”商売上手だな”と思ったんですが、よくよく考えてみれば、自分がマレーシアポップスを聴くきっかけになったのがアルバム”Cindai”だったので、収録曲の中でも”Cindai"からのは”なつかしいな”と思いながら聴くことが出来ました(新曲2曲は歌唱法を聴いてると”Cindai”の頃の音源では?と思いますが)。
でもこのコンピレーションを聴いてもう1つ思ったのが、
”そういえば、こういうTradisional, あと一昔前のいかにもマレーシア風な楽曲を聴く(未聴のを)機会が最近なかったな、とも思いました。ここ1,2年辺りの現地でのヒット曲とかには詳しいのに、、、。以前利用していた視聴サイトは新旧ごちゃ混ぜの曲リストだったので、知る機会はあったんですが、、。アサさん、”RTMのLagu-lagu Eksklusif Orkestra”以外でお勧めのコンピレーションがあったらまたこのブログで紹介して下さい。
P.S. "Es Lilin"は”Cindai"収録曲の中では当時よく聴いていた楽曲のうちの1つでした。あのレゲエ風なアレンジとSitiの節回しが絶妙に合っている曲だなと思って、妙に新鮮だった記憶があります。
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すみません、前記のコメントの中の”旧所属レーベル”というのは間違いです、現レーベルですよね。
あと”新曲2曲の音源がCindaiの頃では?”というのも、”Sirih Pinang"が。に訂正させていただきます。
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またまた、Ouたさん、コメントありがとうございます。
「自分がマレーシアポップスを聴くきっかけになったのがアルバム”Cindai”だったので、」というのは、かなりすごいことですね…。ボクなんか、10年前はまだ良さが分からなかった。
それで、今はなんだかんだ言ってマレー懐メロが、マイ・ブーム(もう新しい音楽が分からなくなったんだろう!って)で、よく聴いているのはダヤン・ヌルファイザ(Dayang Nurfaizah)の『Kasih』です。P.ラムリーや往年の歌謡曲、トラッドの選曲の妙が光っている気がします。
もっと遡って、アイシャ(Aisha)の『Klasik』もいいですね。
ちょっと、原盤や原曲まで探すまでには至っていませんが、最近のアーティストが温故知新をやるときは、チェックしていますね。
まぁ、テレビでRTMをつけて、昔の曲が流れたらよくチェックしています。
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当時初めてマレーシア旅行に行く前に読んだガイドブック”ワールドガイド マレーシア”で”今最も人気のある歌手”という紹介のされ方でSitiが取り上げれていたのが、”CD買ってみようかな”と思ったきっかけですね。でも旅行にいく直前に地元のタワー・レコードにSitiのCDが何種類か置いてあり、”とりあえずベストでも”、と最初は思ったんですが、他のCDのオビに”名作Cindai"とあったので、結局Cindaiが最初に購入したCDになってしまいました。でも今思うと、当時は洋楽一辺倒で”洋楽以外、英語以外の言語の曲は聴けない”状態だったので、かえってTradisionalから入って良かったなと思ってます。もしも普通の当時流行ってたマレーシアポップスを最初に聴いていたら、”ショボイ”で終わって、他のCDを購入してまで聴こうとは思わなかったと思うので(その当時を思うと、今のようにマレーシアポップスを聴く頻度が高くなるとは予想もしませんでしたが)。
自分も昔のマレーシアでのヒット曲というのはあまり多く知らないんですが、旬のアーティストが昔の曲をカバーしてると、”オリジナルはどうなんだろう”という気になります。2、3年前にヒットしたYanti&Ronieの”Bintang Kehidupan(大好き!)”、とかGerhana Skacintaの”Senyuman Ragamu”、もカバー曲の中では好きですし、あと去年ヒットしたUrban Method/Ogyの”Wajah Rahsia Hati(オリジナルはFauziah Ahmad Daudの”Dendang Remaja")"も面白いなと思いながら聴いてました。そういえばSitiもいろいろカバー(ライブ盤のなかでも)してますよね。自分がファンと公言しているFarahもAkademi Fantantasia録音盤の中でAishah,Noraの古い曲をカバーしてますが、、。
DayangとAishahは別のCDは持っているんですが(Pop Asiaでもインタビューしてましたよね、Dayangに)、機会があれば上記のCDも聴いてみたいですね(自分の持っているAishahのベストCDはPopとTradisionalの曲が半々で収録されてます、そういえば)。
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Ouたさん、レスが遅れてすみません。
マレー音楽へを聴くきっかけ、興味深いです。話が長くなるので、手短に言うと、ボクはシーラのP.ラムリー・カバー『Lagenda』でしたね。やっぱ、マレー歌謡/ポップスの原点だから、いきなり根幹にハマったというところでしょうか。
懐メロ・カバー特集、っていうのもやってみたいですけど、ついてきてくれるかな。なんてたって、ダヤン・ヌルファイザも『Kasih』のタイトル曲「Kasih」のオリジナルは、「ヘティ・コス・エンダンかな??」ってレベルで、若い世代の歌手もあんまり昔の歌手のことしらなっ勝ったりするので。
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アサさん、
Sheila Majidの"Legenda"は”Cindai”を初めて聴いてからだいぶ後で聴きましたが、自分は良さが分かりませんでした(彼女のヴォーカルがあまり好きではない)。でも当時リリースされた日本盤のライナーノーツとか、ミュージックマガジンで大々的に取り上げられていたのを知ると、”Legenda”を聴いていた人は多いのかな、とは思いました。おそらく当時のマレーシアの音楽シーンの中では革新的な人物だったのではないのでしょうか?
あと”懐メロカバー特集”ですか、いいですね。ぜひいつかやってみて下さい。ヘティ・コス・エンダンは名前だけ知っていて曲はよく知らないのですが、Noorshila Aminはいいなと思いましたよ。あとUji Rashidとかも。