今月、日本では感染拡大が緩やかになりつつあるが、東南アジアでは感染者が急速に増えている。マレーシアでも最初の国内感染ケースが確認されてから、ここ1週間で感染者数が3倍となる90人を越えた。常夏の国なので、冬にはマスクが必需品ということではないことも感染拡大を助長しているようにも思う。
さて、アサ・ネギシ的に面白かったのは、メディアでの新型インフルエンザの名称について。
フェーズ4になったあたりの話だが、まずリョウ・トンライ保健大臣が最初に行なったことは、メディアに対して「豚インフルエンザ」とういう名称は使用しないこと、だった。
同大臣は華人系なので、やっぱり養豚業者(従業者は、ほぼ100%華人系だろう)が、豚を忌み嫌うイスラム教徒のマレー系にいわれのない差別や誹謗などを避ける配慮があったものと思う。実は、マレーシアでは、98年ごろに豚から発生した日本脳炎ウィルス(後に発生場所の名前を冠して、ニパ・ウィスルと命名)が発生し、養豚業者が移転や廃業するなどの影響が出た。
その頃、エジプトでは豚の全頭処分が行なわれたが、マレーシアではそこまで極端な反応がなかったのは、人々は正しい知識を得ていたのか、それとも無関心なのか、ちょっとボクは判断できない。
それで、新型インフルエンザは、当地では「インフルエンザA (H1N1)」と称されていたが、危機的な拡大感染状況となった今日、ライス・ヤティム情報・通信・文化大臣は再びメディアに対して「豚インフルエンザ」の名称に戻すことを要請した。
同大臣によると「インフルエンザA (H1N1)では、危機感を喚起できない。“バビ”(マレー語で豚)という言葉は、インパクトがある」ということだ。
確かにマレー系にとっては、「バビ」は罵倒も言葉でもあり、人々も「あいつは、バビ・インフルエンザに罹った」などとはいわれたくないから、必死に感染しないようにするだろう。 まぁ、結果が出ればオーライのアイデアではある。
しかし、何とかならないものかなぁ、という使用法もある。
医療用語のレベルで、「癲癇(てんかん)」のマレー語の訳語は「ギラ・バビ」という。
そのまま意味は、「キチガイ豚」。
日本だったら差別用語として屠られているのだろうな。
*26日になり、豚インフルエンザ復活案は、保健省主導で世界保健機関(WHO)の指示するインフルエンザA (H1N1)で継続することを決定した。