小学館のニュース誌『サピオ』最新号(2月22日号)に作家・船戸与一によるマレーシア取材の原稿『ふたりのマレーの虎』が掲載される。
船戸氏は、昨年12月に9日間にわたり、マレー半島を縦断する取材旅行をし、1941年12月から始まった日本軍マレー侵攻作戦に関する史跡や資料などをみて回った。移動は、空路は最小限に留め、東海岸のコタバル、クアラ・トレンガヌ、クアンタン、西海岸のジトラ、アロー・スター、ペナン、クルアン、ジョホールバルなどを陸路で移動し、その距離は2000kmにもなった。
世界をあまねく巡った冒険作家でもある船戸氏は、メモの写真も取らず、地形と気候、そして土地ががかもし出す匂いや風、光といったものを五感で感じることを目的としていたようだ。
楽屋落ちで申し訳ないが、縁あって取材旅行に同行したのはボク。
取材の目的は、現在執筆中の『満州国演義』のマレー戦線のためだが、サピオ誌での原稿は、その素描ともなるルポといった趣に仕上がっており、ジャーナリストでもある氏の矜持を感じる。
船戸ワールドのファンであるボクは、ルポでも独特の言い回しと文体に血が沸きあがることを抑えることができない。暗いイメージしかない太平洋戦争を見直す機会こなる出色の稿だ。
日本で最近すっかり少なくなったマレーシアに関する記述が少なくなっているので、マレーシアに関係する人はぜひ手にとって読んでほしいところだ。