デンマークのJyllands-Posten紙が掲載したイスラム教預言者モハメッドの風刺画に対する怒りがイスラム世界で爆発している。アジアにも飛び火し、タイとフィリピンのイスラム教徒、そしてインドネシアとマレーシア周辺国でも抗議行動が起こった。
マレーシア政府がぴりぴりしている最中、サラワク州の英字紙『サラワク・トリビューン』が4日、風刺画を転載。同紙の管理職は国内治安省から説明を求められた。そして8日、同紙は発行ライセンスの取り消し処分が下った。同処分は、マハティール前政権時代の1987年、英字紙スター、中国語紙星州日報、マレー語紙ワタワンに続く4紙目。
多民族・多宗教国家であるマレーシアは、国内の安定を乱す人種・宗教・政治に関する“敏感な問題”の扱いについて厳重に監視している。アブドゥーラ首相も「報道の自由はあるが無制限ではない。特に敏感な問題の扱いに難しては、注意が必要」と語っている。
一方、『サラワク・トリビューン』側は、担当編集者を解雇。管理職側も問題のページはチェックしていなかったと釈明。つまりトカゲのシッポ切り。ニュー・ストレート・タイムシ紙上で、双方が泥仕合を演じている始末で見苦しい。
実は一昨日、デンマークの国旗を掲げたアイスクリーム店がいつもどおり営業している光景をみて、マレーシアの穏健ぶりを書こうと思っていた。大部分の国民は、政府が懸念するほどこの問題に反応してはいないし、その店やそこで働く人が抗議の対象ではないことも知らないほど幼くないと思う。
メディア側ももう少し、政府が考えるほど国民はいつまでも子供ではなく、熟慮して判断をする成熟した大人であることを示せないものだろうか。しかし、はなから知る権利のために戦うことなど念頭にもない新聞ならば必要ないと思ってしまう。
首相の意図が「言論は命を懸けてやれ」というのならば、そちらの方が正論に聞こえてしまう。少なくとも今回の事件に関しては。