Warning: Creating default object from empty value in /home/aisaco/www/musicraja/wp-content/plugins/redux-framework/ReduxCore/inc/class.redux_filesystem.php on line 28

Warning: Cannot modify header information - headers already sent by (output started at /home/aisaco/www/musicraja/wp-content/plugins/redux-framework/ReduxCore/inc/class.redux_filesystem.php:28) in /home/aisaco/www/musicraja/wp-content/plugins/wp-super-cache/wp-cache-phase2.php on line 1164
宗教をテーマにしたもうひとつの作品『Pensil』 – アサ・ネギシのページ/Music Raja
アサ・ネギシのページ/Music Raja
マレーシア・ライターの見聞録

宗教をテーマにしたもうひとつの作品『Pensil』

 東京国際映画祭が最終日を迎えている。
 注目のヤスミン・アーマッド(Yasmin Ahamad)監督『ムアラフ-改心』(原題:Muallaf)は、アジアの風部門で最優秀映画賞を逃したものの、審査員特別賞的な「スペシャルメンション」の3作のひとつに選らばれた様子だ。
 同作では、カソリックの教師が、イスラム教徒の生徒とその姉の間の愛情と強い結びつきに「宗教」があることを発見することに重要な意味合いをもたせているストーリーだ。

 そこで当地で「宗教の美しさ」をテーマにしたインド系監督による『Pensil』という作品が、静かに支持を集めているので、この機会に紹介していこう。


 この『Pensil』(鉛筆のマレー語つづり)は、インド系のM.スバッシュ(M. Subash)という人が主演、脚本、監督を務めた作品。言語はマレー語である。
 この作品が“静かな支持”を受けていると書いたのは、政府系の国立映画協会(FINAS)マレーシア映画の紹介サイト、シネマ・マレーシアのファン投票で2位を獲得しているからだ。
 一言でいうとこの作品、とにかく「突き抜けている」のだ。
 はっきりいうと、脚本も演出も構成も、日本人の感覚からはかなり「ズレ」ている。
 実は、本作は現地タミール語で制作されたものの、マレー語リメイクであるようだ。そういったことでインド系の感性も散見するのだが、なにか観衆であるマレー系の心をわしづかみする何かがあるのだ。
 ストーリーは、知恵遅れで身障者の主人公のバドゥル(M.スバッシュ)が、継母や叔母たちの虐待に遭いながらも、唯一の理解者である祖母の愛情とイスラム教を支えに生きて行く、というもの。
 バドゥルが母や叔母から虐げられるのは、父親がインド人の女性との不倫で生まれた子供という設定。さらに父親も実母であるインド人の女性も亡くなっている。
 なんとなくお察しが付くと思うが、江戸時代の長屋の鬼継母がいて、“お涙頂戴”的な感じの物語なのだ。それも5分に一度は、落涙シーンが続き、扇情的で心をかき乱すシーンのオンパレード。
 この辺が「突き抜けている」理由だ。
 それで筋をちょっとばかり紹介していくと、バドゥルは、近所の村人が作ったお菓子やくず鉄を集めて、わずかばかりの収入を得ているが、それさえも継母や叔母に巻き上げられてしまう。(巻き上げる額もRM3とかいうレベルだから、外国人や都会人には想像できない世界)
 継母たちは、バドゥルの唯一の足である自転車さえも、お金に困って売ってしまう。
 しかし、ベテラン女優ルミナ・シディ(Ruminah Sidek)が演じる祖母(血がつながっている祖母かもしれないです。確認中)だけは、バドゥルにデザートを売る知恵を授けたり、バドゥルが鉛筆と絵を描くことが好きなことを知るとアラビア文字で「アラー」の書き方を教える。(ちなみにルミナ・シディは、今年のマレーシア映画祭で、最優秀助演女優賞を獲得。さらにベテラン貢献賞も受賞)
 ある日、祖母は継母たちに虐められたバドゥルに一番大事なことを最も簡潔な言葉で教える。
 
 —「人を憎んではいけない。アラー(神)の慈悲は、雨のように誰にでも平等に降り注がれる」
 ストーリーでは、性的虐待を受けトラウマに陥った近所の男とのからみで、バドゥルが必死に「アラーの慈悲」を訴える場面、そしてバドゥルが愛する祖母のささやかな夢をかなえてあげる落涙必至の扇情シーンなど、嵐か怒涛のように涙腺を刺激する。
 なんたって最後には酒びたりの実の祖父までもバドゥルに金をせびりに来るというというのだから、涙腺攻撃の手を緩めてはくれない。
 「お涙頂戴」というとなんだか、押し付けがましく感じるのだが、とにかく宗教の美しさというまっすぐなメッセージが貫通しているからか意外にクドくない気がする。
 『ムアラフ-改心』のテーマがなんとなく気になった方は、この作品もどうであろうか。
 最後に蛇足ながら、最近のマレー映画を観続けている。
 よくできているしのだが、レベルも高くなっている。でも、海外に紹介するときに「マレーシア映画である必然性があるか」で、ちと弱い。
 
 この作品は、“ベタ”なんだけれど、マレーシアの映画というべき滅茶苦茶に強い個性を持っている。
 ちなみに『Pensil』は、来月行われるインド国際映画祭に出展されることが決まった。
 インドで注目されて、火がついたら面白い。

Facebook にシェア
Delicious にシェア
[`evernote` not found]

2 Comments

  1. saya saya
    2008年11月8日    

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 5.1; FunWebProducts; .NET CLR 1.1.4322)
    今月のastro box officeで、これやってます。
    そして、我が家で大鑑賞会!
    マレー系の受け、非常によいです。
    恋愛とからめない、
    ストレートで、黒白ハッキリした、
    お涙頂戴ストーリーだからなのか?
    アラビア語が出てきたり、使われてる音楽もマレーを虜にする秘訣か?
    と分析しつつ・・・お母さんに鉛筆折られるシーンで「あああっ」て心痛めてしまったワタシ。
    かなりのめり込んで見てしまいました。
    ただ、この放送後の友の間で繰り広げられた
    イスラム教談義には・・・疲れました。
    そういうのを語りたくなるような映画なんでしょーね。

  2. アサ・ネギシ アサ・ネギシ
    2008年11月8日    

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 5.1; .NET CLR 1.1.4322)
    Sayaさん、書き込みありがとう。
     まず、この作品のことが語れる日本人はSayaさんだと、勝手に、そして密かに期待しておりました。
     結局、90年代に流行った悲恋モノは、感情移入ができなければそれまで。
     波があるんですね。
     その点、親子とか家族を絡めたり、老人とか身障者とか弱い立場の人々に焦点を当てると、確実に人々の涙腺が緩みだすものです。
     マレーシアでもドライな風潮がはびこっている中、泣かさせるこのみで中央突破&暴走するこの作品(制作者はそう思ってはいないだろうけど)のぶっ飛び度、日本でも受けないものかと思っている次第です。
     オリジナルのタミール語ドラマは、どんな感じだったのでしょうね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

2025年6月
« 6月    
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

おすすめマレーシア本