PINKの名前は知らなくても、福岡ユタカ・ホッピー神山・岡野ハジメと言ったらご存じの方も多いのではないだろうか。今では作曲・プロデューサーとして第一線での活躍をしている人々だが、彼らが在籍した伝説のバンド、それが「PINK」だ。
各人はビブラストーン・ショコラータ・爆風銃等で活動していたが、’84年に「PINK」としてメジャーデビュー以来、’89年の解散までに5枚のアルバムをリリース。圧倒的なパワーと存在感で、同世代の他バンドから群を抜いていた。
1st:PINK
メンバー構成は以下。
・福岡ユタカ(Vo)
・ホッピー神山(Key)
・岡野ハジメ(Bs)
・矢壁アツノブ(Ds)
・スティーブ衛藤(Per)
・渋谷ヒデヒロ・逆井オサム(Gt)
僕はこのバンドのことを何も知らずに、当時のレンタルレコード屋で2枚目の「光の子」を何気なく手にし、針を落とした。腰を抜かした。ブッ飛んだ。最近で言うところの「ヤバい」か? いや、そんな悠長な状態ではなかった。とにかくタマゲタ!「こんなバンドがあったとは。もっと早くに知ってなくちゃいかん!」と、1枚目も手に入れるべく速攻でレコード店に走った。
3rd:PSYCKO DELICIOUS
基本はロックなのだが、ポップ・ファンク・ニューウエーブ・テクノ、そしてエスノと、ノンジャンルかつ無国籍っぽいサウンドが大きな特徴だ。実際、メロディーラインは非常にポップで親しみやすく、一歩間違えると安物の歌謡曲になりうるが、大胆で計算されたアレンジ・卓越したテクニック・想像をはるかに超えたパワーで、超個性的なPINKサウンドに仕立てている。いずれも一騎当千の強者揃い、とにかく一度聴いたら病み付きになる。
福岡ユタカの抜けるようなボーカル…と言うよりボイスと言った方がいいんだろうか。当時流行り始めた、日本語を英語のように発音する和製英語のようなんじゃなく、根元的なところから発せられる「声」…もっと言ってしまえば、雄叫びのような「声」、にシビれた。
岡野と矢壁がたたき出すビートは、強烈・圧巻に尽きるし、スティーブのパーカッション群がパワーに風景を付ける。
ホッピーのキーボードは、音色・プレイともに、あくまでもサイケだ。
ギターは、1〜3枚目が渋谷ヒデヒロ、4枚目で逆井オサムにチェンジした。ロックバンドだというのに(?)ギターソロは皆無に近いが、ツボを抑えたバッキング・心地いいカッティングがシブい(この二人のギタリストは’00年に相次いで他界したとのこと)。
音楽的には、メロディーがしっかりしていればアレンジや雰囲気でいかようにも料理できること、エスニックなエッセンスはどうやれば具体化できるのか、音楽のパワーとは何か、を教えてくれたバンドだ。
自分の精神状態に関わらず、思わずCDを引っ張り出して聞きたくなる麻薬的なバンド、それがPINKだ。