次なる潮流を予感させるインディズ・オムニバス盤

　07年もボク的には、不作だったマレー音楽界だけれども、今年はもっと低調の感がある。（アイドル勢はそれなりなんだけれど）
　まぁ、ラジオでOAされる曲は面白いコラボなどもあるのだが、アーティストがアルバム単位でリリースしていないのがそういう印象を与える原因か。でも、若い連中は1曲単位で携帯電話なんかにダウンロードしている時代なので、アルバムでがっぷり四つに組んで聴かないとアーティストを分かった気がしないボクの方が、音楽シーンのトレンドに置いてきぼりを喰っているのかもしれないけれど…。

　それでこのアルバムもテレビドラマ「Kami　Vol.2」オムニバス盤。昨年、ボクが聴いた2007年5傑アルバムに入れた「Kami」の第２集だ。以前にも書いたけれど、レーベルのモンキー・ボーンは、マレーシア・インディー・シーンの生みの親ポジティブ・トーンの理念と役割を引きついたレーベル。音楽界を熱くするのにはこれ以上の適役はいない。
　「Vol.1」がOAG、ポップ・シュヴィット（Pop Shuvit）、Love Me Butch、Gerhana Ska Cintaといったすでに有名どころの紹介もしており、入門編といった性格もあったが、本作は若手のバンドを発掘している。
　
　やはり目玉は、「Vol.1」でも存在を見せ付けたMeet Uncle Hussain。アルバムの第１曲で新曲「Pari Pari Di Bawah Angin」を披露。ちょっと日本人ならばGSサウンドを思い浮かべる70年代っぽい味付けを加えたサウンドとメロディ・センスになかなか唸らされてしまう。やっぱ、ヤツらタダモノではなさそうだな…。
　それで若手バンドの方はというと今ひとつの感が抜けない。Laila’s Lounge、Harmacy、Twickheadsといったマレー語曲を提供しているバンドは、欧米のサウンドとインドネシア・サウンドの合間に挟まって今ひとつ新しいマレーシアのマレー語ロックというスタイルを拓き切れていない感じ。Teleburyというバンドも英語で歌ってはいるが、サウンド的に前者と同じジレンマを解消していない。まぁ、個人的には好きでないけれどBitter Sweetというバンドは、スタイルを確立している感じ。（でも、「Vol,1」収録曲と同じ曲調ななぁ）
　レゲイ曲を提供しているThe Aggrobeatsというバンドもオリジナリティ欠乏症だなぁ。Gerhana Ska CintaやRepulic Of Brickfieldみたいなローカル色との融合がないとプロとしての存在意義がない。
　
　個人的にヒットしたのは、Dragon Redの「K.A.M.I.(Kerana Aku Masih Ingat)」。ラップやDJが入るミクスチャー・ロックなんだけれどサビのメロディーが、モロにマレー歌謡的に歌心あふれているというギャップが面白い。（すんげぇ男臭い声なんだけれど、サビがメロウなんだ。これが）
　やっぱり、本作の意図に反して、Koffin KansarやButterfingersといった重鎮バンドが健在を示しているところの方が聴き所になってしまうのは、泣き所か。昨年Repulic Of Brickfieldでマレー語レゲイ・アルバムを出したアル総帥のNuメタルバンドKoffin Kansarは、昔の切れそのままの新曲「Berong」を提供。一方、前作『Selamat Tiggal Dunia』でグランジと決別したButterfingersは、「1000　Tahun（Kami mahu Hidup）」でさらに新境地を推し進めた。
　さて、アルバム「Kami」によるコンサートツアーも開催中。詳細はこちら。
　8月18日、ブキット・ジャリル国立スタジアムで開かれる大トリは、Meet Uncle Hussainだ。8月9日のKL RuumでのKoffin Kansarの久々のステージも楽しみ。
　
　さらに「Kami」の詳細はこちら。あんまり興味はないんだけれども、今年10月に映画「Kami」も公開予定だ。

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