7月26日から31日まで、東京国際展示場(ビックサイト)でIGAS2018という、国際的な印刷技術の展示会が行われました。
公式発表によれば、来場者数は55,863人。そのうち外国人は約1割の5,000人いたそうです。
IGASはいわば、世界中から最先端の印刷に関わる業者が出展するイベント。
つまり、ここに来れば、印刷業界の目指す未来や、印刷に関わるその他の業界への影響を、垣間見ることができるといっても過言ではありません。
小社は、SCREEN(スクリーン)社のブースに展示されていた、書籍本のサンプル制作に協力させていただきました。
今年は、各社、デジタル・オンデマンド印刷に関する機械やソリューションの出展が目を引いたのですが、SCREEN社でも目玉となるオンデマンド印刷機を複数出品しました。
その機械のクオリティーを来場者に実感してもらえるようなサンプルづくりをお手伝いしたというわけです。
AISAはSCREEN社様とどんなお仕事をしたのか?
これまで、SCREEN社の書籍本サンプルは、『ブラックジャックによろしく』のように、フリー素材として一般公開されているものや、ダミーで制作された本を使っていたそうです。
しかし、今回のIGASでは、
「一般書店に流通しているカラーの本を、SCREEN社の機械で印刷し、展示したい」
という要望があり、そこで編集プロダクションとして出版社にルートのある小社が、コンサルティング業務を行いました。
具体的には、SCREEN社側の要望をもとに、マッチしそうな出版社にアプローチ。
両者を結びつけた上で、サンプルに最適な書籍を選んでいきました。
その他、出版社とSCREEN社との印刷データのやりとりから、印刷現場との色味の確認、調整など、細かいやりとりを2か月近く重ね、当日を迎えました。
今回、書籍本の見本となったのは、さまざまな作家の本棚を写した写真を掲載した、本の雑誌社の『絶景本棚』。
オンデマンド印刷では、今まであまり得意とはいえなかった、コントラストの強くない画像も含まれ、黒の発色や本の背表紙の文字がはっきり見えるように印刷するなど、印刷機の実力が試されるという点でも、最適な本だったそうです。
デジタル・オンデマンド印刷は本のあり方を変えるかもしれない
SCREEN社のオンデマンド印刷機「Jet520HD」が圧巻だったのは、同じ印刷データで、サイズ違いの書籍を自由につくれることです。
『絶景本棚』の実寸はA5。
書店に流通させる際の売り場の問題や、全ページフルカラーの印刷コストなどを考えると、このサイズが最適解になるのですが、一方で、ページ内に写っている本の書名は、ルーペが必要なほど小さくなってしまいます。
ところが、ブースに並んでいたサンプル本には、B5判と、A4ノビ判まであって、ここまで拡大されていれば、ページ内の本棚にどんな本が並んでいるか一目瞭然でした。
ブースでは、実演販売士のボス水野さんが、実寸と拡大判の『絶景本棚』を持ち、絶妙な話術で集まった人たちを沸かせていました。
一緒にIGASに行った本の雑誌社の杉江さんも、これには大興奮。
「これ売って欲しいっていうお客さん、ぜったいいる!」
と、オンデマンド印刷の可能性の一端を見た思いでした。
デジタル・オンデマンド印刷の最大の利点は、
・少量多品種をすばやく印刷できること。
今までは、「オフセット印刷」と対比させて語られてばかりの技術でしたが、これから先、オンデマンド印刷の特性を使って、新しいサービスや商品が生まれるのは間違いないと思いました。
最後になりますが、このコンサルティング業務の案件をご紹介いただきました、山口証券印刷の山口誉夫常務、そして、SCREEN社の熱い印刷魂で拡大判の完成にこぎつけてくださいました、メディアテクノロジージャパンの山岡拓也部長、企画意図をすばやく理解して、最高にぴったりな本をご提供してくださった本の雑誌社の杉江由次部長に、お礼を申し上げます。