好調な地元映画界であるが、ちょっとした小波が起こっている。
7月20日、マレーシア映画協会が記者会見を開き、映画振興公社(FINAS)の顧問の地位に業界大手のプロダクション会社メトロウェルスのプロデューサーのデービッド・ティオ(David Teo、写真)氏と監督のアーマッド・イダム(Ahmad Idahm)氏があることを批判する声明を出した。
同協会では、両氏がライバル・プロダクションの情報に接することができる地位であることから、「不適当な人事である」とFINASの管轄省である情報・コミュニケーション・文化省に意見書を提出している。(英字紙スターの記事)
今回の騒動は、多分に業界の対立があるようだ。
ティオ氏とアーマッド・イダム監督は、商業映画のヒットメーカーとして勢いを増してきている。両者のコンビで制作された『Adnan Sempit』(2010)は、当地の興行成績史上最高となるRM770万という数字をたたき出している。また、同じく両者の手による『Jangan Pandang Belakang Congkak』(RM609万)で歴代興行成績5位、『Jangan Pandang Belakang』(RM578万)で6位につけている。
対する協会は、当地の全地上波民間テレビ局を運営するメディア・プリマ社傘下の最大大手プロダクション、グランド・ブリリアンス・フィルムのアーマッド・プアド・オナ(Ahmad Puad Onah)氏が会長、シュハイミ・ババ(Shuhaimi Baba)監督が副会長、KRUモーション・ピクチャーズのノーマン(Norman)氏が書記を務めている。
アーマッド・プアド氏は、グランド・ブリリアンス・フィルム作品はもとより、他のプロダクション会社作品にもエグゼクティブ・プロデューサーとして参加している重要人物である。
こうして眺めてみれば、映画界のフィクサー、アーマッド・プアド氏対新興勢力のティオ氏というところなのだが、映画のように絵になる対立構図ではない。
というのもティオ氏は、21日英字紙スターでのインタビューで、「彼ら(協会)は、私の成功に嫉妬している」と答えている。確かにティオ氏が率いるメトロウェルスの作品は、それ以上でもそれ以下でもない娯楽作品。お金儲けてナンボの映画、と揶揄されている。
翻って、グランド・ブリリアンスの作品はどうか、と問われても、一般の人には悲しいほど大差ない娯楽路線である。
みんな貧乏だったころは、助け合って仲も良かったのに、ちょっとお金が入ってくると、とたんに仲たがいする。
今回の騒動は、残念だがそんな匂いしかしない。