ペナンでの寸景。
午前4時にペナン大橋をペナン島に向かって走っていたら(たまたまこの時間に走っていただけです)、左車線に人が倒れているのが横目に入った。躊躇はあったが、無視することもできないのでクルマを停車した。すでに一人のバイクのお兄ちゃんが、倒れている人のところに向かっているので、ボクも助けに走った。
ひっくり返っていたのは、寸詰まりの体型の華人。血を見るのはイヤだったから、外傷はないのをみてホッとした。バイクのマレー系のお兄ちゃんは、「こんなところで寝ていたらトラックに轢かれるよ」と華人に言っていた。
なんだ、泥酔してアスファルトに寝っころがっていたのだ。人騒がせな。
しかし、彼のBMWのドアは開いたままになっていて、人が道に倒れている光景を見たら、やっぱ驚くよ。
そうこうしているうちにバイクのマレー系のお兄ちゃんの数がどんどん増えてきて、10数人に膨らんだ。なんとバイク族は物見高いのだろう。工場の夜勤明けの連中かなと思った。
まぁ、それで大勢でクルマが壊れていないか調べたり、「起きてうちに帰りなよ」とがやがややっているうちに、華人が突然目を開いて、ボクの手をとり起き上がった。
そしてペナン大橋の欄干を越えようとし始めた。
マレー系のお兄ちゃん達が「ヤメロ、早まるなぁ」と華人を腕を引っ張ったり、体を押さえたりの一騒ぎ。ペナン大橋は、借金苦や失恋者、受験に失敗したヤツがたまに飛び降り自殺したりするのだ。ボクも焦った。自殺幇助罪にでも問われるかもしれないし、外国人はボクだけなのだから「アイツが突き落とした」とか言われてムショ入りするかもしれない。
しかし、その華人はマレー語で「大丈夫、飛び降りないよ」と言って、欄干を乗り越えて小便を垂れはじめた。「なーんだ、つきあちゃられねぇーよ」の空気が一気に流れ、マレー系のお兄ちゃん達の数が半分に減った。
ボクは、華人に「クルマいたずらされたりするからクルマに戻りな」と言うと、ようやくクルマに戻って、エンジンをかけた。BMWはぶつけた後があったが、走行はできるようだ。
やっとのことで動き出したBMWは、ヒップホップの連中のアメ車みたいにというか、初めてマニュアルを運転する初心者のように上下に揺れて舟を漕いでいる。路肩に駐車したボクの車にぶつけられたら嫌なので、急いで避難した。
あの華人、ちゃんと家に帰れたかなぁ。
しかし、BMWに乗っている華人が酔っ払って道に寝ていて何事も起こらないマレーシアって、やっぱり平和で安全なんだなぁとあらためて思った次第。
バイクのマレー系のお兄ちゃん達もBMWのなかみて喜んでいただけだし。
与太話でした。