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アジアンハートビート〜Asian Heart Beat〜


麻生あかりのYANGON日記 Vol.2

Posted in ミャンマー,麻生あかりのYANGON日記 by Asian Heart Beat on the 4月 12th, 2007

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第2回 ベビーシッターの怪

 ミャンマーでは人件費が途方もなく安い。従ってお金持ちだけでなく、仕事をしている母親はベビーシッターを住みこみで雇って子供の面倒をみてもらうのが一般的だ。日本人から見ると「なんて羨ましい!!」と言われそうだが、そんなわけで私も当然のように子供の為にベビーシッターを雇ったわけである。ちなみに彼女は48歳独身。ベビーシッター暦31年という。
 自身満々の彼女に、私は「日本とミャンマーでは多少やり方が異なること」、また「どうしても守って欲しいこと」だけを簡単に説明したのだった。それからというもの、彼女のズボラな性格、機関銃のような話し方、子供を寝付かせる時の奇妙で甲高い子守唄、何かと口答えをする自身満々の態度・・・等々に度々「カッチ〜ン」ときつつも
「ここはミャンマー。目をつぶる事も大事。日本人とは違うのだから」
とお経のようにつぶやいては自分をごまかしていた。
 
 2か月後・・・。
 
 それは静かな目覚めの良い朝であった。以前から「子供が泣いたら、粉ミルクをお湯に溶かしてあげて下さい。作りおきは厳禁です」と何度も何度も口をすっぱくして言い聞かせていた私は、ベビーシッターがミルクの作り置きをしている現場に遭遇した。クーラー完備とはいえ熱帯地方のミャンマーである。腐るのは早いし、だいたい子供は時間通りにお腹がすくとは限らない。お腹が空いて泣くのは子供の唯一の自己表現、せめてミルクくらいはちゃんとしたものを飲ませてあげたい。それが私なりの母心である。

私「どうして今ミルクを作っているの?」
ベビーシッター「もうそろそろ起きるから。」
私「この2が月、泣いてからミルクをつくるようにず〜っと言ってきたけど、どうして言う事を聞いてくれないの?」
ベビーシッター「子供が泣いたら可哀想でしょ。」
私「あのね、私が子供の母親なの。私はあなたにお金を払ってあなたを雇っているの。泣いたら可哀想なのは私も同じ気持ちだけど、ミルクが腐ったら困るし、泣いたらあげてと何度も何度も言っているでしょう?」
シッター「腐ってないよ。別に見た目何ともないし。」
おいおい・・・見た目でわかったらとっくにアウトだろうと軽く青筋をたてつつ、しかしここで怒ったら日本女子の名がすたる、「つとめて冷静に冷静に」と自分に言い聞かせ、
私「とにかく、子供が泣いてからミルクを作って下さい。」
とお願いすると

シッター「それを言われる度に毎回イヤになるわ。ホント仕事辞めたくなるのよね」
と言い放った。

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 あまりの言いっぷりに、怒りをも吹っ飛び「ぽか〜〜ん」とバカみたいに口をあけてしまった私は思わず
「辞めたかったら辞めてもらってもいいのよ」と即答したのであったよ。その後、彼女は家族に私への愚痴をこぼし、全員から「雇い主の言う事を聞くのは当たり前ジャン」と冷たくあしらわれると、逆ギレして出ていった。「信じられない」。この一言につきる。ところがミャンマーでは例え雇われている立場であろうと、次の日から職が無くなって困ろうとも、「やりたくない事は絶対にやらない」という人が圧倒的多数だ。しかも、

「自分が間違っていようといまいと」である。

 特にベビーシッターに関しては、色々な人から同じ様な話を聞く。皆揃って言うのは「ベビーシッターは本当に我侭でやりたい放題である」と言う事。しかし、子供を人質に取られているのと同じなので、なかなかクビに出来ないし、新しい人を探すのも難しいので、頭にきつつも我慢しているらしい。

 私の聞いた中で一番凄いベビーシッターは、ある日母親が仕事から帰って来ると、ミルクビンの飲み残し、子供の服の脱ぎ散らかしなどが色々な所に散らばり、足の踏み場もないほど荒れ果てた家の中で平然とテレビを見ていた! 母親が「何をしているのか?」とただすと、ベビーシッターは「私はミルクビンも洗わないし、洗濯もしない。ミルクを作ることも本当はしない」と言い放ったそうだ。怒った母親が「それならあんたは今日1日何をしたの?」と問い詰めると「ミルクを飲ませてオムツを買えて寝かせた」(もちろん、その後ミルクビンもオムツもそのままかたずけずに放置)と威張って言い放ったと言う。完全にキレた母親は「今すぐ荷物をまとめて出ていけ!」とその場でクビにしたらしい。日本だったら、そんな事をしたら2度と同じ職には就けないと思うのだが、ミャンマーでは次の日に平然と違う人の家にシッターとして働く事ができるらしい・・・。人件費は安くて良いのだが、何か間違ってる。いや絶対おかしいぞ!!

 麻生またしてもミャンマーの片隅でバカッ!!と叫ぶの巻きであった。

●麻生あかり
日緬合作映画「血の絆」の映画撮影後、本格的に語学留学をするため渡緬。その後結婚し、現在ミャンマー在中。

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