もう勢い(調子)に乗ってマレーのことならなんでもやっていくつもりです。
で、今回はマレー映画のVCD紹介。
紹介するのは、今年一番話題になった作品のひとつ『Pontianak-Harun Sendal Malam』。
本作は、昨今のアジアン・ホラー・ブームに乗って作られた作品で今年9月に福岡で行われたアジア太平洋映画祭で主演のマヤ・カリムが当地作品としては初の主演女優賞を獲得する栄誉に輝いた。
ちなみに(脱線→ここから)マヤ・カリムは、マレー系とドイツ人の混血美人。混血でもマレー的な気品をたたえた顔立ちだ。実は今年2月にAisa所属のオアシスが来馬(マレーシアに来ること、以後多用)し、深夜番組に出演した時にゲストだった。でも、「お父様に叱られる」のか、自分の番が終わったら早々収録先を後にして行った。せめて共演者に挨拶して欲しかったなぁ。(脱線→ここまで)
本作はアジアン・ホラーの“底知れぬ湧き上がるような怖さ”ではなく、幽霊(もちろん美人)が跋扈するお話。
ストーリは30年前に無残な死を遂げた踊り子(マヤ・カリム)が、幽霊となって過去の関係者に襲い掛かるというもの。過去と現在を行き来しながら踊り子を巡る事件が明らかになっていく構成。
個人的に見どころと思うのは、30年前の村落の設定が念入りなこと。
当地の映画の常として、こういったところにお金がかけらないのだが、本作はかなり頑張った。
また、動作で語らせて、無駄な台詞がないところが優雅でいい。
ただ外国人には、ストーリーの理解に説明不足になってしまうのだが。
やはり当地のホラー映画はまだまだで、技巧的にも設定的にも全然怖くない。(当地の観衆のレベルではこれでも十分らしい)
でも、運命に翻弄された女の情念の悲しみの旋律に惹かれる。
やはり無常というものに叙情性を感じる感性は、日本人と遠いものではないのかなぁ、とも思う。現代の日本人からみれば、イスラムの人々は運命ばかりに縛り付けられているように感じるが、仏教の「無常」も根源的には通じている部分もあると思う。
本作のミシャ・オマール(Misha Omar)によるテーマソング「Pulankan」も本作によくマッチした名曲。歌詞のなかにも映画のキーワードが織り込まれているという、当地ではなかなかない周到なタイアップだ。
ちなみに(脱線→ここから)、踊り子を演じる過去の場面のマヤ・カリムの気品ある美しさは、マレー映画の歴史のなかでも随一。本作では、現在の踊り子の生き写しの役の顔、幽霊の顔の3役のマヤ・カリムだが、個人的には現代の顔(つまり一番普段に近い)にはあまり魅力を感じない。
それから幽霊の顔も、もっと美しいなんとして欲しいかった。別に怖くないのだから、美しい顔にして欲しかった。
マレー女は情念が深いので扱いは要注意ってこと、です。