アーティストに会ってきた。
今日は、ヴィンス(Vince)君というアイドル(もちろん個人の趣味ではないです)。
彼がシンガーになったいきさつがチト面白い。
彼は父親がマレーシアの中華系、母親が英国人というユーラシアン(欧亜混血)だ。
そういえば、前回書いたマヤ・カリムもユーラシアンもだった。
ユーラシアンの芸能人の話題も面白いがいつかまた。
それで歌が好きだった彼は02年に中国語の歌のオーディションに参加して2位を獲得し、シンガーとしてのキャリアを歩むはずだった。でも、よくよく聞いてみると彼は広東語が話せるが、北京語は読むのも話すのもダメという人。やはり英語が母語なのだ。
まぁ、それでも歌ならば大丈夫と、アルファベットで歌詞を覚えて北京語で歌った。
それで2位になったことをきっかけとなり、台湾のレーベルからオファー(誘い)があったものの、なしのつぶて。せっかくシンガーになれるとこまできたのだからと違うオーディションを受けてみたそうだ。
それがよりにもよってマレー語による『アカデミー・ファンタジア』というオーディションだった。
マレーシアに住んでいれば気づくことだが、彼のような背景を持つ人や、英語教育を受けた中国系はマレー語など話す機会が少ない人が多い。ましてやマレー語の歌など聞こうとも思わない人も多い。
彼も「いままでマレー語の歌など歌ったことなかった」という状態でオーディションに参加してしまったのだ。まぁ、本当にオーディションの事情を知らなかったかは、本当かどうかはわからない。この辺の話は、虚飾というかサービスで大げさに話してくれたのかもしれない。
しかし、そのオーディション番組では審査される曲は自分で選べない仕組みだったらしいので、彼が苦労したことは本当だろう。(このオーディション番組の仕組みも面白いのだが、またの機会に譲ろう)
そんな状態の彼が、聴衆からの携帯メールの支持を集めて優勝してしまう。
ちょっと前までマレー語の歌など歌ったことなかった人間が、マレー語のシンガーとしてデビューしてしまったのは、やはり日本人には想像がつかないことだろう。
それだけでなくデビュー後、彼は来年公開のマレー映画にも主演がきまり、現在は撮影中とのことだ。
それで彼のファンは、99.9%マレー系だという。
彼のような背景に生まれた人ならば、一生マレー系とマレー語と深く関わらずに一生を終えていく人も多いのがマレーシアの現実。
運命というのは面白い。
彼は、まさに「アクシデンタル・アイドル」だ。
ちなみに来年リリース予定の新作は、7曲英語でマレー語と北京語の曲も入るとのこと。
レシュモニュとともにマイノリティーのアドバンテージを生かした彼が音楽界を変えてくれる人材となることを期待しよう。