今晩に行われるマレーシア音楽産業(AIM)賞06の見どころを。
AIMは、グラミー賞的な音楽賞として13年目を迎える。ノミネートと審査は主要レーベルの長やプロデューサーなど音楽産業界から選ばれたメンバーによって行われる。
基本となるのは新人、ポップ、ポップ・ロック、ハード・ロック、ナシッドの4つの音楽カテゴリー賞のほか、英語部門があるのが特徴。この英語部門があるがゆえに、市場の大半を占めるマレー語音楽以外にも開かれたマレーシア全体を対象とする音楽賞となっている。
アーティストの評価部門にはボーカル賞(男、女、グループ)、またエンジニア、ビデオ・クリップとアルバム制作者も評価される。また、同じマレー語圏であることからマレーシアで人気を得たインドネシア・アルバム賞もある。
プレステージが最も高いのは、年間最優秀曲と4つのカテゴリーの獲得作品の中から選ばれる年間最優秀アルバムとなっている。
今年からポップ・エスニック(96年までトラディショナル)部門が廃止された。以前にもダンドゥッド部門が廃止されたこともあり、時代に合わないジャンルは淘汰されている仕組みだが、その一方で新興のR&Bやヒップ・ホップのジャンルが加えられることがないのも不思議なところ。R&Bやヒップ・ホップ系は、グループ最優秀ボーカル賞にノミネートされるか、英語作部門に回るしかないというのが現状。今年はToo Phatのような大作があるのにしっくりいく評価がされないのは惜しいところだ。
さて、毎年賞レースの対決の構図が用意される。昨年はニン・バイズーラ対シティ・ヌルハリザだった。今年は初代マレーシアン・アイドル、ジャクリーン・ビクター(Jaclyn Victor)とアディバ・ノール(Adibah Noor)が6部門ノミネートで一番の見どころのようだが、いささか華がない。アディバ・ノールのように実力があるアーティストを評価するのがAIMの本旨であるが、はやり人気を二の次にしてしまっているし、ジャクリーン・ビクターのひとり勝ちを抑える当て馬にされている観がある。
それでも、粗製濫造気味のアカデミ・ファンタジア出身アイドルの作品を人気だけでノミネートさせないことで権威を保っているといえるか。アカデミ・ファンタジア出身組はアルバムは8曲入りであるためにきっちり10曲作っているアルバムより評価が低いようだ。また、アカデミ・ファンタジア出身組は新人賞ではなく、“期待される新人賞”という苦肉の策部門で扱われている。
しかし、それでも年間最優秀曲部門では、アカデミ・ファンタジア出身で人気では一流のマウィと第2期優秀性ザヒッドがノミネートされているところでバランスを取っている。
個人的に今年評価されてしかるべき作品は多くないので、あまり見どころもないのだが、最優秀英語アルバムなど大ベテランアニータ・サラワク、日本先行デビューしたミクスチャー・バンドPop Shuvit、2枚組み30曲の大作を発表したToo Phat粒が揃っている。しかしそのほかは、利権と化しているナシッド部門(RabaniとRaihanの寡占状態)とジャンルとして死にたいでただリリースされたアルバムの寄せ集めのハードロック部門などを見る限り、ただただ興ざめ。あとはシティが7年連続で受賞している女性最優秀ボーカル賞が継続するか。
それでもAIMでノミネートされる英語系インディーズの新人は、普段テレビに露出する機会がなく、以後活躍するので登竜門としてはチェックしたい。
まぁ、結果はいつも3大メジャー・レーベル(ソニー・BMG、ワーナー、EMI)といつくかの地元レーベルでの均等分配に落ち着く。今回は、業界が期待するジャクリーンをどれだけ周りのバランスを考えて輝かせるかを苦慮した結果が出るのだろう。
放送はntv7で午後8時半から生中継。
(写真左から二人目がジャクリーン・ビクター)
<最優秀新人>
アディバ・ノール
Alih Fiqir
ディナ
ジャクリーン・ビクター
シャリファ・ザリナ
<期待される新人>
アミリヤ
フェリックス
マルシャ
Premelodic
リズアン
<男性最優秀ボーカル賞>
アーティスト/アルバム
ハザミ 『Kata』
ジャマル・アブディーラ 『Aku Penghibur』
ムス(MAY)『Live & Unplugged at Planet 05』
リタン(Deja Voodoo Spells)『I Am What I Am』
シャノン 『Dilanda Cinta』
<女性最優秀ボーカル賞>
アーティスト/アルバム
アディバ・ノール 『Terlalu Istimewa』
アニタ・サラワク 『Anita Sarawak Another Dimension』
ディナ 『Cinta Datang Lagi』
ジャクリーン・ビクター 『Gemilang』
シティ・ヌルハリザ 『Siti Nurhaliza in Concert Royal Albert Hall, London』
<グループ最優秀ボーカル賞>
アーティスト/アルバム
Rabbani 『Suara Takbir』
Raihan 『Ameen』
Ruffedge 『Ruffera』
Too Phat 『Rebirth Into Reality』
V.E 『For You』
<最優秀アルバムカバー>
アルバム(アーティスト)
『Rebirth Into Reality』Too Phat
『Anita Sarawak Another Dimension』アニタ・サラワク
『Lain』ファズリー
『Labih Baik』エイミー・マストゥーラ
『Rasa』Nitrus
<最優秀編曲者・アルバム>
エンジニア名/アルバム(アーティスト)
Edry /『Anita Sarawak Another Dimension』(アニタ・サラワク)
Jenny Chin, Greg Henderson, Zailan Razak, Rahman Ayob, Rosli Selasih, Acis & Simon/『Kasih』(ダヤン・ヌルファイザ)
Peter Chong, Kalvin Tan, Azlan Abu Hassan, Rumie Booty, Jenny Chin, Riza Omar, Che Mat, Alfie Zainal, Mohariz Yaakup, Zairi & Sunil Kumar/『Gemilang』(ジャクリーン・ビクター)
Greg Henderson & Lo/『The Fall』( Lo)
Illegal & Yasin/『Rebirth Into Reality』(Too Phat)
<最優秀ビデオクリップ>
曲(アーティスト)
「Sleepy Head」Lo
「Hollywood Holiday」Love Me Butch
「Angguk-Angguk, Geleng-Geleng」Ahli Fiqir
「Terlalu Istimewa」アディバ・ノール
「Tak Tahu」アダム
<最優秀ナシッド・アルバム>
アルバム/アーティスト/プロデューサー
『Ameen』Raihan/Bakafro
『Brothers Reunited』Brothers/Yasin, Syah & Farihin
『Far East』Far East/Greg Henderson
『Satu Dekad』UNIC/Munif Ahmad, Faizal, Osman & Ismam Isam
『Suara Takbir』Rabbani/Archie
<最優秀ポップロック・アルバム>
アルバム/アーティスト/プロデューサー
『Cendera Jiwa』 Flop Poppy/Andy & Mijie (Flop Poppy)
『Rasa』Nitrus/Eddie & Syed (Nitrus)
『Santai』Awie/Edrie Hasim
『Spider Live at Planet Hollywood』 Spider/Keon & Boon Tan
『Zoul』Zoul/Zoul & M. Nasir
<最優秀ハードロック・アルバム>
アルバム/アーティスト/プロデューサー
『Cakap Terang』 Baringan/Barongan & Jean Lau
『Live & Unplugged at Planet 05』MAY/Boon Tan & Rosmin Hashim
『Radio Tanah Melayu』 O2/Boon Tan
『Suatu Evolusi』 Jinbara/Andi Rahman
<最優秀ポップ・アルバム>
アルバム/アーティスト/プロデューサー
『Aku Penghibur』ジャマル・アブディーラ/Fauzi Marzuki & Arab
『Gemilang』ジャクリーン・ビクター/Peter Chong, Kalvin Tan, Azlan Abu Hassan, Rumie Booty, Jenny Chin, Riza Omar, Che Mat, Alfie Zainal, Mohariz Yaakup, Zairi & Sunil Kumar
『Kasih』ダヤン・ヌルファイザ/Jenny Chin, Greg Henderson, Zailan Razak, Rahman Ayob, Rosli Selasih, Acis & Simon
『Kata』ハザミ/Arab& Hazami
『Terlalu Istimewa』アディバ・ノール/Adibah Noor, Azlan Abu Hassan, Mohariz Yaakup, Jock Chew, Badrul “The Muffins”
<最優秀英語新人アーティスト>
Deja Voodoo Spells
Mass Raw
Saer Ze
<最優秀英語アルバム>
アルバム/アーティスト/プロデューサー
『Anita Sarawak Another Dimension』アニタ・サラワク/Archie Nasuition
『For You』V.E/Zaf, Lah, Cham, Shah & Damian Shotysoul
『Here & Now』Pop Shuvit/JD & Greg Henderson
『Rebirth Into Reality』Too Phat/Malique, Joe Flizzow, DJ T-Bone, Terry Lee, Illegal, Yasin, Jae Chong, Machi, Carlo Nanni & D’ Navigator
『The Fall』Lo/Lo
<最優秀インドネシア・アルバム>
アルバム/アーティスト/プロデューサー
『Alexandria』 Peterpan/Capling, Koni & Noey
『Kembali』 Rossa/Yonathan Nugroho
『Langkah Baru』 Radja/Isfan Fajar Satryo & Radja
『Padi』 Padi/Piyu, Jan Djuhana & Padi
『Silver』Glenn Fredly/Jan Djuhana & Glenn Fredly
<最優秀編曲者・楽曲>
編曲/曲/アーティスト
Azlan Abu Hassan「Ikan Di Laut, Asam Di Darat」アディバ・ノール
Azlan Abu Hassan「Kata」ハザミ
Alfa Booty「Di Bawah Pohon Asmara」ジャクリーン・ビクター
Alfa Booty & Masrumie Booty「Tak Tercapai Akalmu」エリアナ
Ramli MS 「Gemilang」ジャクリーン・ビクター
<年間最優秀曲・作詞作曲家>
作詞/作曲/曲(アーティスト)
Ajai/Habsah Hassan & Shuhaimi Baba「Ku Seru」ミシャ・オマール
Aubery Suwito/Asmin Mudin「Gemilang」ジャクリーン・ビクター
Ayob Ibrahim/Habsah Hassan「Warkah Buat Laila」ザヒッド
Azlan Abu Hassan/Adibah Noor「Terlalu Istimewa」アディバ・ノール
M. Nasir/Loloq「Aduh Saleha」マウィ