ハリラヤ・プアサ(断食明けの大祭)中である。
イスラム教徒のマレー系のみならず、マレーシア人は平和な時間を楽しんでいる。
マレーシアのお祭りに付き物と言えば、『オープン・ハウス』と言う習慣。要は、ホームパーティのようなもので、軽食やお菓子などを揃え、親戚のみならず、友人や知人を広く受け入れるもので、多様な民族が共存するマレーシアにおいては、自民族の文化や習慣を他民族に紹介する機会としての役割を果たしている。
庶民レベルで民族の風通しを良くしている感じで、オープン・ハウスはマレーシアが大事にするべき“文化”である。
オープン・ハウスは個人レベルだけでなく、公人レベルでも行われ、各州のスルタンや閣僚といった人たちも主催するものである。
毎年、ハリラヤの風物詩となるのは、首相主催のオープン・ハウス。
ボクもマハティール前首相時代に行ったことがある。一国の首相と庶民が直に会う機会があることはすばらしいと思った。米国の同時多発テロ後は、前首相のようなアジアのVIPもちょっとばかり護衛も厳しくなったが、それでも訪れた人、ひとりひとりと握手を交わし、ハリラヤを平和に迎えることを喜び合う機会であった。
今年も1日(水)にKL市内で行われたのだが、昨今の政治・社会における民族間の微妙なバランスが崩れた影響が、この機会にも影を落とす事件があった。
急進的なインド系によるヒンドゥ人権行動運動(Hindraf)のメンバーが、このオープン・ハウスに集まり、国内治安法(ISA)で拘束されている指導者の早期釈放を求めることをアブドゥーラ首相に直談判した一幕だ。
Hindrafは、昨年12月にマレー系などの優遇するブミプトラ政策に対する批判を掲げ、大規模な抗議集会を行い、マレーシアの民族間がギクシャクし始めたきっかけとなった。
Hindrafは、与党内や閣僚からもISA批判と見直しを呼びかける声が上がった機をうかがって行動に出たのだろう。Hindrafのメンバーも一般客と同じく首相謁見の列に並び、ハリラヤの祝賀状とともに早期釈放の嘆願書を渡したという。
祝賀の場のマナーを守り、抗議とは違った民主化要求とは言えるようだ。
正直言ってボクは、この件に関するはっきりした意見は持ち合わせていない。
ぎすぎすしていないことが魅力のマレーシアだが、オープン・ハウスの場にも政治が持ち込まれたことに一抹の寂しさと不安を覚える。