開幕戦から中2日、2月1日にペナンはマラッカ・テレコムと対戦。マラッカ・テレコムは04年プリミア・リーグ2位でスーパーリーグ昇格を果したチームだ。
伊藤選手はマレーシアで初めてのアウェイとなる。
ここで少しばかりスーパー・リーグのシステムを解説しておこう。
マレーシアは94年にプロ化し、Jリーグに倣ったMリーグを創設した。参加チームはマレーシア13州に連邦直轄地である首都クアラルンプール(KL)、そしてボルネオ島のブルネイを加えた15チームだ。この15チームのリーグは英国に倣ってプリミア・リーグと称した。
98年から2部制を導入。上位リーグをプリミア・ワン、下位リーグをプリミア・トゥーと称した。プリミア・ワンは12チーム、プリミア・トゥーは8チーム。ここで全体としてのレベルアップを意図した社会人チームの上位とプロ・チームの下位が還流するシステムが出来上がる。
そして昨年04年からは、8チームによるスーパーリーグと16チームによるプリミア・リーグ体制となった。プリミア・リーグは8チームずつの2グループに分かれて対戦する体制で各グループのトップ・チームがスーパーリーグ昇格となる。
ちなみに各グループ最下位チームはアマチュアのプリミア・クラブ・チーム・チャンピオンシップに降格するという完全なる下克上の世界なのだ。
今年のスーパーリーグの顔ぶれは、パハン、ペルリス、ペラ、ペナン、サバのプロ5チームに企業チームのパブリック・バンク、マラッカ・テレコム、そしてKLの郊外都市として栄えるプタリン・ジャヤ地区区役所(MPPJ)。マレーシア・サッカー界がいかに新旧勢力が入り乱れている状態で切磋琢磨しているかがよくわかる。
伊藤選手初のアウェイの舞台は新設なった4万人収容のハン・ジュバ・スタジアム。ホームのシティ・スタジアムの2倍の規模だ。
マラッカの観客は伊藤選手に「バケヨロー」など手荒い声援で迎えた。アウェイの洗礼だ。しかし、伊藤選手は嫌われることも有名の証と「強烈なブーイングの中でサッカーができることを嬉しく感じる」とHPで述べている。どんな形の表現であれサッカーを愛する観衆の前でプレーができる幸福はプレーヤー以外には味わえない。
試合は41分、伊藤選手のアシストをメルニコフが決め先制。そのまま1-0で勝利した。伊藤選手は、決定機を作り出すパスを出すなどチームとの連携でも満足がいく試合となった。
開幕2連勝で首位と波に乗るペナンは、2月5日、ホームで同じく2連勝で昨年の覇者パハンと対戦。スーパーリーグは、3ラウンド制で同じ対戦相手と3度戦うが、早くも前半戦行方を占う戦いが首位攻防戦になるというまたとない機会が巡ってきた。
パハンは元アジア・サッカー連盟会長のパハン州スルタン・アーマッド・シャーをパトロンとするチーム。現在は同スルタンの息子であり、マレーシア・サッカー協会会長のトゥンク・アブドゥーラ氏が会長となっている資金的にも豊かだ。また、昨年の得点王インドラ・プトゥラ・マハユディンなど代表選手を多く擁し、かつ中心選手は残留している。今年、外国人で名を連ねる選手はDFのアンテ・ジュリクのみで、国内一流選手で固めたリーグで最も結束のあるチームである。
1万5千人収容のシティ・スタジアムは、1万人のファンで埋め尽くされ、ペナンの好調ぶりをうかがわせた。親子づれも多いが、基本的に男達の怒号が響き渡るのがマレーシアのサッカー観戦だ。もちろんアウェイ側にはめっぽうきつい。全体で連携するような応援スタイルはないが、なかなか渋いところで歓声が上がるのは目が肥えたファンが多い証左だ。久しぶりにMリーグの試合に足を運んだが、独特な雰囲気は変わっていない。
試合をリードしたのはパハン。前戦まで2得点と好調のファズリ・サアリが9分に先制ゴール。しかし、ペナンは相手の流れを断ち切るように左サイドで得たFKを伊藤が蹴り、ブラジル人バレトが合わせて同点ゴール。伊藤を起点としたセットプレーの形が出来始める。
しかし、パハンは19分、前戦まで3得点のエース、インドラ・プトラに追加点を許してしまう。ペナンDF陣が落ち着きを取り戻すと伊藤にボールが集まりだし、一度失った流れをすぐに奪い返した。DF陣がボールを奪ってから早いパス回しができるのも、ディフェンスラインへの戻りが早い伊藤の存在とゲームメーカーとしての信頼感と無縁ではない。しかしながら、前半終了間際になるとパハンDF陣も伊藤へのマークを強めていく。
攻勢に転じたペナンの同点弾は、ロスタイムに入った47分、右サイドの展開からMFン・コックヘンから生まれた。今季のペナンの強さが感じられるのは、マークが手薄になった右サイドからの攻撃の精度も高まった点であった。
後半に入り、スタジアムには海風が吹き始めた。それもサイドチェンジしたペナンは風上になるという文字通りの追い風だ。
ペナンは伊藤の自在なパス回しでメルニコフとのラインが活発化し始め、再三決定機を作り出した。伊藤のパスがメルニコフが縦横無尽に操っていると思えるほどだった。
後半開始早々から伊藤は、再三得たCKでも次第にチームメイトとの連携の精度を高めていった。勝ち越し点となる69分のメルニコフのゴールも伊藤のCKから生まれた。シーズン3試合目にして、伊藤からのセットプレーは高い完成の域に入っていると思わせるほどのレベルにあった。
また勝ち越し後、惜しくもバーを外したものの、伊藤も自ら絶妙のタイミング尉でゴール前に飛び込んでシュートを放つ場面も見られた。
守勢に転じたパハンは次第にカウンター狙いのロングボールを放り込む単調な攻めに終始。ペナンにしては、パハン攻略の課題もはっきりしたのかもしれない。 試合は3−2まま終了し、3連勝のペナンは単独トップに立った。
観戦して感じたことは、伊藤選手がすでにチームの中心であることを疑いのない事実として確認したことだ。
伊藤選手はアジアでは「外国人選手は活躍して当たり前。競う相手はアフリカや南米出身者だ」と言う。また、マレーシアは外国人枠が3人であり、4人枠プラス外国出身永住者がいることが多い香港やシンガポールと比べて「自分が中心になれる」と言い切っている。
長年アジアの渡り歩いた伊藤選手の胸のうちには、前季王者パハンを破った感触でさらなる上の目標が見え始めたのではないだろうか。
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アサさん、おかえりなさい!
臨場感溢れるレポートにドキドキしてしまいました。
それに、マレーシアのサッカーリーグがこんなにも戦国時代だとは。プロリーグとはいえ結構のんびりしたムードなのかなぁと思っていたのですが、誤解してました。
伊藤選手、応援します。
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ありゃ、フライングでしょ。
本当は明日見ていただきたかったのに。
実は、また遠出で書き溜めしているところです。
だからちゃんと日付通りに見てくださいね。(余計見たくなるか…)
伊藤選手、イケ面でしょ。
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あれー?ほんとですね!
気づかなかった・・・。^^ゞ