07年『Negarakuku』(オレのネガラク)をYouTube上に発表し、当地の警察や公務員、教育システムを批判するラップで物議を醸した“Namewee”こと黄明志(Wee Meng Chee、27歳)氏が、再び批判の矢面に立っている。
黄氏は、先月12日、ジョホール州の小学校校長が、全校集会で非マレー系を「乗客」と称した差別発言事件を批判する動画をYouTubeに投稿。後に削除したものの、政治家から問題視する発言が相次いでいる。
まず、黄氏を批判したのが、マレーシア華人協会(MCA)のチュア・ソイレック総裁。チュア氏は、差別発言件に対し、最初に声を上げたひとりであったが、黄氏の表現を「下品な言葉使い」と評し、「自身の才能を見せびらかしたいだけ」と切り捨てた。黄氏は、批判の対象が同じであるもMCAから理解してもらえないことに対し、失望の意をコメントしていた。
(『15・マレーシア』の「Meter」でカイリー・ジャマルディンと黄氏の共演シーン)
また、政権与党最大の統一マレー人国民組織(UMNO)のカイリー・ジャマルディン青年部長
も黄氏を批判するひとりとなった。黄氏とカイリー氏は、昨年公開された気鋭の映像作家によるマレーシアの現代を切り取るプロジェクト『15・マレーシア』に出展された「Meter」(こちら)で共演した仲。(ブログ内記述)二人とも世界は違うものの、異端者同士という印象があったが、今回の件に関してカイリー氏は、別の話と突き放しているようだ。
黄氏は、台湾留学中に『Negarakuku』を発表。08年に帰国。
昨年は、『15・マレーシア』の「Poton Saga」(こちら)など作品に出演し、毒気が抜けた印象を与えていた。
ボクは、残念ながら黄氏の動画をみていないので、なんとも言いようがないのだが、黄氏が同じくYouTubeに投稿した「FUCK TNB MALAYSIA」(こちら)を見る限り、このまま工夫のない表現を続けていてもマレーシア社会に受け入れられないだけでなく、政治家にスケープゴートにされるだけ、だと感じた。
このまま馬鹿を貫いて、自分を笑うユーモアの“お馬鹿”の域に昇華するか、もう少し頭を使った表現を目指したらいいのではないかと思うのだが…。
ちなみに今回の騒動で、黄氏は積極的に警察の聞き取りに協力している。
本人曰く、「オレにかかわっているより、本質的な差別問題に時間を割くべき」とのこと。
まだまだ、異端者の居場所は狭いようだ。