活況を呈するモーターショー
自動車市場のビッグバンが始まるマレーシア
(文・写真:アサネギシ)
東南アジア諸国の中でもっとも乗用車が販売されている国はマレーシアだと聞けば多くの人は意外だと思われるかもしれない。しかし、乗用車の年間販売数は約 50万台と、タイやインドネシアといった国を上回っているのだ。もっとも人口も2倍以上で経済的に実力をつけつつあるタイに1位の座を受け渡すことは時間の問題なのだが、マレーシアの所得格差の少なさや道路の整備率などを考えれば自動車普及率の高さも頷けるはずだ。マレーシアにはプロトンという国産車メーカーがあったり、F1開催国であることなど、“自動車大国の野望を抱く”知られざる国なのである。
さて3月26日から4月4日まで首都クアラルンプールで国際モーター・ショーが開催された。今年は例年の1.5倍の16カ国から242企業が参加。ショーは 2日目までに5万7千人を集め、例年を軽く上回る人気ぶり。「なぜか?」それは3月にマレーシアの新自動車政策が発表されたことにある。
マレーシアは自動車産業を基幹産業として位置づけており、長期にわたって国産車メーカーの保護策を続けてきた。プロトンもマハティール前首相が手塩にかけて育ててきた観がある。2000年から発効したアセアン(東南アジア諸国連合)自由貿易地域(AFTA)もマレーシアのこういったお家事情があり、自動車に限っては05年まで先送りされてきたのである。新政策では今年3月から輸入車の関税が大幅に引き下げられ、今までお金持ちしか手に出来なかった海外メーカーの自動車需要に火がつき始めた。
会場で目だったのは日本メーカーの力の入れよう。トヨタはコンセプト�・カーの展示、ホンダは二足歩行ロボットASIMOのショーを行い大勢の人を集めている。三菱や日産、韓国メーカーも大スペースで新車種を積極的にアピール。勢力的には日韓が欧米を圧倒している印象だった。
いままでモーターショーといえば、限られた車種を展示してあるだけで、単にショールームが移動してきただけという風景が2006年、大変貌を遂げた。
一方、競争時代に勝ち残らなければいけない国産メーカー、プロトンは傘下にある英国の名門ロータスの新車種展示が目玉。ロータスでブランド力を強調した意図だが、プロトンとしての新車種はなく、どうしても見劣りしてしまう。国内メーカーで元気なのはダイハツのOEM生産をしているプロドゥアや韓国のキアに続き、フランスのプジョーの車種をラインアップに加えたナザ。国産価格で実質的に外国車が買えることで地元の人々は注目している。日本メーカーは地元ブランドとの提携の面でも三菱はプロトン、日産はトラック部門でハイコムというメーカーと手を組んでおり、アジアの自動車大国としてきっちり存在感を示している。
モーター・ショーは学校休暇にあわせて開催されていることもあり家族連れも目立つ反面、美人コンパニオン目当ての若者たちも多く見られた。モーター・ショーの風景からも先進国との時差もいよいよ縮まってきたマレーシアの姿が実感できる。