ここ2,3日、英字紙スターの特ダネとしてイスラム教系の教団スカイ・キングダムとそのリーダー、アヤ・ピンについての記事が紙面を賑わせている。
マジメに読んでいる方に申し訳ないので最初にことわって置くが、この教団もそれを取り巻く情況も“よくわからない”のだ。
今回ニュースになったきっかけは今月2日、カイ・キングダムが拠点のあるトレンガヌ州の宗教当局(マレーシアにおいては自動的にイスラム教)と警察が教団施設を強制捜査し、信者21人を逮捕したことだ。
このスカイ・キングダムは、カンポン・バトゥ13という寒村に独自の集落を作って住んでいる。村の全景の写真には、集会場や祈りの場所のほか、巨大なティーポット(むしろ日本のきゅうすに似ている)や花瓶などを象った施設がある。一見すると趣味の悪い遊園地に見えなくもないところがオウム真理教のようで不気味だが、それ以外の施設は立派なものだ。
このなかに120人が共同生活していたという。信者の中には警察官やロックバンドDEF-GEB-Cのドラマーも含まれていたという。
教団の指導者は、通称アヤ・ピン(=ピン尊父、本名アリフィン・ムハンマド、65歳)という人。アヤ・ピンの教えは、80年代に宗教当局に邪教の指定を受け、98年にはアヤ・ピン自身がイスラム教を棄教したと言われている。
このアヤ・ピンのひととなりが今日のスター紙で伝えられている。
自身曰く「学校教育は、40年代に1、2年しか受けていないが、ブッシュ(現米国大統領)よりも知識がある」。
信者は「(アヤ・ピンは)英語などマレー語以外の言葉はわからないが、天才だ。特に人の心を読むことができる。彼は神であり、創造主である」と語っている。
また、アヤ・ピンは「テレビで踊っている誰かを聾唖者にすることができる。それが例えロンドンであってもだ」と語っている。
“ブッシュ大統領よりも賢い”という部分は、ひょっとしたら凄く過少申告なのかもしれない、と関係ないところに引っかかってしまうが、要するに人から尊敬を集めるカリスマ性があり、妖術を操るところもカルト教団の指導者をイメージさせる。ちなみに奥さんも当地では合法の4人いるとのことだ。
こういう胡散臭さをプンプンさせているものの、彼や教団のどこが具体的に違法なのかが記事を読んでいてもちっともわからない。記者もイスラム法の違法の基準などを理解できるように解説する知識も持ち合わせていない。それよりも宗教や警察当局者も罪状をはっきりとさせていないのであろうか。
それなのに国内治安大臣が登場し、教団には国内治安法(ISA)を適用しないと話している。なんとも本末転倒だ。ちなみに同法は、欧米的人権の視点から見れば強権的な法律で、逮捕者の無期限拘束ができる。98年アンワール元副大臣の逮捕にも適用された。
実はカルト教団について過去にもアル・アルカムという団体が出現し、非合法化した経緯がある。マレーシアでは国内の治安の安定と人々の調和を乱す団体や思想に対してはかなり敏感な問題として扱われる。こういった事件は人権や民主主義と関わってくるので、こういった“よくわからない”報道ではいけないのではないかと思ってしまう。
今は続報を待つしかない。
アヤ・ピンと4人の妻
http://thestar.com.my/news/story.asp?file=/2005/7/7/nation/11420471&sec=nation