マレーシアン・アイドルについて再三紹介してきたが、もうひとつの人気オーデション番組『アカデミ・ファンタジア(AF)』を巡る話題も面白い。
マレーシアン・アイドルは全人種的に支持を得てきた番組だが、こちらは第一期優勝生こそ欧亜系(英国人と中華系のミックス)のビンス(Vince)だったものの、第ニ期生はザヒッド(Zahid)、そして8月6日に第三期生の優勝生となったマウィ(Mawi)などマレー系が中心だ。
このマウィ、先輩の2人の比べてカリズマ性があるようで、なかなかの男前なのだ。
さてここまではいいのだが、AFはマレーシアン・アイドルを意識してか、かなり宣伝戦略のゴリ押しぶりが目立つ。マウィの優勝決定にあわせてAF契約レーベルが彼の番組出演での音源を集めたアルバムをリリースしたことに対し、「一週間で8万1千枚が売れた」という文字がメディアに躍った。シティ・ヌルハリザだって2000年以降、10万枚の数字を上回るのに苦労しているで、「ありえない」話だ。もちろん「つぎはぎ音源のゴミ溜め」という商業戦略を批判する記事も出ている。
マウィにの実力ついては、レコード・デビューしてから触れる機会もあると思うので、次の機会に。
彼とAFの人気ぶりを示す一番の話題は、政治を巻き込んでいることなのだ。
イスラム国家樹立を標榜している野党マレーシア・イスラム党(PAS)が、マウィを「若者の手本となりうる人材」と評価したことが世間を驚かせている。10月1日、PASの本丸であるケランタン州が『イスラム都市』を宣言する式典を行う。この記念コンサートにマウィを招くことが決定した。
PASが芸能に対して取ってきたスタンスは、「信仰の義務を忘れさせるもの」。PASが政権を握っているケランタン州では原則的に男性歌手のみで踊りや歌の内容も限定されるという。そうなるとナシッド(アラブ起源でイスラムのゴスペルといった趣)ぐらいしかできない。昨年のシティ・ヌルハリザの全国コンサートでケランタン・トレンガヌ両州が会場にならかったのは、このためである。
また女性シンガーのコンサートに関して異を唱えるのが“PASの政治的プレゼンス”となっている。実際に昨年マライヤ・キャリーのコンサート開催に対して、PASは「淫らで道徳を乱す」と発言していた。インドネシアのダンドゥッドの女王イヌルにしてもしかり。
実際にマウィの出演が持ち上がった祭には党内の保守派から強硬な反対も起きた。「マウィはAFで女性ダンサーと一緒に舞台に上がっている」ことが反イスラム的だとか。しかし、PASの精神的指導者でもあるニック・アジズケランタン州主席大臣が容認したことで決定した。
昨日、マウィの出演があらためて確認され、マウィがコンサートの前にお祈りを呼びかけるアザーン(イスラム世界でモスクから流れるアレ)を詠むことが条件として課された。また客席は男女別になるという。
巷ではマウィが今までだれも成し得なかった与党の統一マレー国民組織(UNMO)とPASの統一するというジョークまで飛び出している。
10月1日が楽しみだ。
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九月初旬のスター紙のインタビューで『政治的方向性に関わらず呼ばれれば歌うのが仕事だ』みたいなこと言ってました。