こんな新聞の一面を見ると気分が暗澹としてくる。
23日の『ニュー・ストレイト・タイムス(NST)』は、同紙が21日に掲載したウィリー・ミラー氏によるNon Sequitur Catoonという世相の風刺画について国内治安省から説明を求められたことを一面で報じた。同紙は22日に同紙の立場を問う記事を掲載し、モハメッド風刺画で発禁処分を受けた『サラワク・トリビューン』や『光明日報』との違いを訴えたが、ザイヌディン・マイディン情報相やマハティール前首相の息子であるムクリズ氏らからも非難の声が寄せられた。同紙は結局明日(24日)、謝罪記事を一面に掲載するようだ。
今回の風刺画の件以前に地元新聞が謝罪記事を掲載したのは、第三の有料英字紙だった『サン』が、01年か02年に「首相・副首相暗殺計画」報じた時以来だ。このときは暗殺首謀者とされた人物が特定できる表記だったことが問題となったほか、同紙が情報をつかんだ次点で警察当局に報告しなかったことなどが当時のマハティール首相とアブドゥーラ副首相が遺憾の意を表した。結局、同紙は経営の見直しを迫られ、無料配布紙への移行を余儀なくされた。
NST紙もアブドゥーラ首相就任当時、副首相ポストが空席だったことに関することを懸念する社説が遠因となって、編集長更迭人事が行われた過去がある。更迭の決定は社内で行われたものとされているが、同紙は政権与党統一マレー人国民組織(UMNO)が経営権を握っていることもあって、首相の意向が反映されたとの見方が強かった。
さて、今回の風刺画は、「モハメッド風刺画の作者の終着点は世界でもっとも恐怖におびえる男」というキャプションがついたもの。これをみてイスラム教徒が怒るかどうかは、はなはだ疑問だ。モハメッド風刺画問題自体を否定するということか。マレーシア人はもう少し大人なのではないか。NST擁護の声や論陣を張るメディアなどはでないものか。(UMNOの庇護を受けているメディアなんか誰も味方しないか…)
しかし翻って考えてみれば、民衆によるデンマークや欧米に対する大規模な抗議運動が起こっている国は、国としても度民衆の爆発を外に向けさせ、看過しているということ。在住外国人にとってはありがたいことではあるか。
しかし、メディアがスケープゴートにされる現状は何とかならないか。こんな紙面を作るのはメディアにかかわったことがある人間にはわかることだが、慙愧に耐えない。
明日の新聞をみるのも気が重い。
24日になり、NST紙へのお咎めはないことになった。まぁ、当然といえばと当然だが…。
しかし、今度は国営テレビ放送局RTMが2月上旬にモハメッド風刺画がわかる画像を放映したことで政府の注意を受けている。テレビ放送したものは何回も人の目には触れないので問題にはならないと思うのだが、政府はこの機を利用してメディアに睨みを利かせておきたいらしい。
国外ではイスラム教徒とキリスト教徒の殺し合いにまで発展している風刺画問題、国内でもまだまだぴりぴりした状況が続くであろう。