彼岸へ旅立った花嫁
公開日:
:
最終更新日:2012/05/25
ただいま外出中
ピンと伸ばした背筋に、涼しげな笑顔。
どことなく憂いを帯びた佇まいは、
まだ子ども臭い大多数の中で、ひときわ大人びて映った。
大多数の一人だった私も
「ああ、これが世に言う“美人”なんだな」と、
高校の吹奏楽部で始めて彼女に会った日のことを覚えている。
6月、もう先がないことを覚悟の上で
彼女は純白のドレスに身を包み、ジューン・ブライドを迎えた。
バージン・ロードで父親から託された彼女の手を取り、
照れ隠しに手の甲へキスをした花婿は、
2ヵ月後、再び父親と共に黒服で皆を迎えていた。
横にいるはずの花嫁は、遠く祭壇の額縁から、穏やかに微笑んでいる。
同じ年代に生を受け、同じ高校で、同じクラブで、同じ曲を演奏した。
命に限りはあるとしても、もう少しこの世界にいても良かったはずだよ、里ちゃん。
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Comment
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やるせない気持ち、すごく伝わりました。
惜しくも存じ上げない方ですが、同じ時代を生きてきた同好の士として
心からお悔やみ申し上げます。
願わくば、心穏やかに旅立たれたことをお祈りするばかりです。