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出版不況の中、デジタルオンデマンド印刷の普及で出版界はどう変わる?

このところ、本の雑誌社の杉江さんと「おとなの社会科見学」が続いている。
「おとなの」とついているが、あっち方面(どっちだ?)の話ではなく、いい年したおじさんが、世の中の知らないことを教えてもらうのである。

この前は、デジタルオンデマンドの最先端を教えてもらった。
ロール紙が高速でインクジェット印刷機の中を通り抜けると、反対側からカラー刷りの印刷物になって出てくる。製本のユニットを取りつければ、そのまま裁断、製本までワンストップでできるそうだ。

できあがりの印刷物を見せてもらったが、手触りといい、ルーペで見たときのドットといい、もはやインクジェットの技術はオフセットとほとんど遜色ないと思った。案内してくれた人の話では、「今年はデジタル印刷に大きくシフトする転換点」なのだという。

オフセット印刷では、4色のインクを順番に重ねて印刷するため、設備も大がかりなことが多い。

オフセット印刷では、4色のインクを順番に重ねて印刷するため、設備も大がかりなことが多い。

1冊でも本がつくれる時代。

今までは、製版の必要なオフセットの工程ゆえに、少量印刷はコスト高になっていた。
それが、少量印刷でもほとんど変わらなくなるという。

ウェブや電子書籍の登場で、ページや文字数の制限から開放されたと思ったら、今度は印刷ロットからも開放される時代が到来するのだ。

印刷のロットを考えなくてよいということは、ニッチで読者が限られ出版化できなかった本や、仕様の問題から小ロットでは採算が合わずに絶版になった本なども、日の目を浴びるチャンスとなる。

しかし、その一方で、この変化は出版業界の商慣習はもちろん、商品設計や制作予算、制作者のギャランティーなどにも大きな変化をもたらすかもしれない。

 

初版部数で制作コストを計算する慣習

というのも、商業出版物のほとんどが、初版の刷り部数と定価をもとに制作予算をはじき出しているからだ。

初版とは、最初にその本が出版されるときのバージョンを指すが、本の売れ行き見込みに合わせて刷り部数、いわゆる印刷部数を決める。その中には、書店に配本された後の売れ行きにより、再出荷する在庫の分も含めて計算に入れてある。なぜなら、オフセット印刷では「一度にたくさん印刷したほうが、1冊あたりのコストが下がる」からだ。

そのため、印刷部数を決める担当者は、書店からの前注文、著者の影響力、SNSの拡散具合、メディアの露出、プロモーションの計画など、もろもろを考慮して、慎重に数を読まなくてはならない。読んだ数字より売れ行きがよければ、在庫切れでチャンスロスになってしまうし、売れなければ在庫を抱えることになる。
どっちに転んでも問題となるため、責任重大なのだ。

一方、初版の刷り部数は、実売(実際の販売数)と関係のないコストである、著者に払う印税や、JASRACなどの著作権管理会社に払う使用料などにも影響する。売れる本なら、多めに刷ってもあまり問題にならないが、売れない本だと、「印税や著作権使用料は先に払い、その回収はだいぶ後になってから」ということが起こってしまう。

出版社をはじめ、製造メーカーの宿命として、制作時のリスクをテイクするかわりに、大きなリターンはほぼ総取りできる。ところが、これだけ出版不況が深刻化した中では、「ほとんどの本がリスクで、リターンを取れるヒット作がない」という状況といっていい。

さらに、出版社は、再販制度ゆえの取り次ぎからの返本というピンチ(在庫増・要返金処理)にもさらされる。しかも経理上、在庫は資産(ざっくりいうと、お金と一緒)になるため、期末になると税金がかかるという頭の痛い問題がある。

だから印刷代が安くなるからといって、安易に印刷部数を増やすわけにはいかないのだ。

 

1冊から本をつくれるとしたら、制作予算をどう組み立てる?

少し横道にそれてしまったが、デジタルオンデマンド印刷の普及によって、これらも変わるかもしれない。ネックとなっていた「オフセット印刷ゆえの、ロットのしばりがなくなる」からだ。

だとしたら、どんなことが起こるだろうか・・・。

出版社サイドは、明らかに数の見込める出版物以外は、デジタル印刷に舵を切り、在庫のコントロールをするようになるだろう。それは、電子書籍の販売に積極的な出版社から広まっていくと思う。電子書籍の販売は、在庫がなく、再販の手間やコストもかからずに売上が立つ。この旨味に気づいた出版社であれば、なおさらだと思う。

一方、今まで同様、本の売れない環境が続くなら、デザイナー、ライター、編集者、イラストレーター、カメラマンなど、外部の専門スタッフに支払われる「制作費」は、なし崩しに下落する可能性がある。
初版部数の縛りがなければ、根拠とすべき初期予算の数字があやふやになるからだ。

他の製造業のように、年間販売計画や目標から予算を建て、制作費に落とし込んでいく出版社もあると思う。しかし、本ごとの個別対応が多く、商品ごとの年間販売計画をもとに営業を打てる出版社は少数派だろう。

結果、初版の読みを最低限にして、制作費を切り詰めるという方向に進む可能性が高い。もし、予想以上に売れれば、そのときこそ、デジタルオンデマンド印刷で素早く再販をかけるのだ。

うわー、暗い未来だな。。。

 

出版業界は長らく不況と言われているけれど、最近、本当に底が抜けたんじゃないかと思うことが多い。

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外部編集者はどう生きていくのか?

我々のような外部の編集者たちにとって、どういう生き残り策があるのか少し考えてみる。

デジタルオンデマンド印刷をうまく使うなら、「ニッチな世界で、コアなファンを持つ人とタッグを組む」ことで、新しい価値が生まれるかもしれない。

例えば、初版1000部は無理でも、300部ならかならず買う人がいるようなジャンル。
イラストレーターや作家、カメラマンなどに限らず、料理研究家や手芸研究家など、アウトプットのできる人なら、すべて著者の対象となる。

制作段階で電子書籍化や、多言語化をにらんでデータ作成すれば、紙の本以外に展開することができる。

……と、ここまで書いて、結局は我々もリスクを取って、ミニ出版社のように変わっていく必要があるのかも知れないと気がついた。

厳しい時代だなぁ。

 

スマホの普及によって「誰でも発信できる時代」になった今、それでもあえて、本(紙・デジタル関わらず)で発信するという意味は何なのか?

答えはここにあると思うけれど、マネタイズまで含めた仕組みの再構築ができていないのが現状だ。

この問題は、定期的に追いかけていこうと思う。

 

 

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