サッカーの超オタク的楽しみ
公開日:
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最終更新日:2012/05/28
辺境コトバ道
スポーツ誌「Number」の中吊り広告を見ていたら、サッカー特集で、ロナウジーニョとおぼしき選手の顔がアップで映っていた。
私はサッカーはよく知らないし、あんまり興味もないのだが、「選手の名前」には興味がある。
例えば、日韓W杯に出場した選手の名前をちょっとネットで調べたことがある。
適当にセネガルをサーチしてみた。
すると、代表メンバー23名は、クリスチャンとムスリムがだいたい半々くらいの割合で混じっていることが名前からわかる。
トニー、アンリ、フェルディナン、シルバンなどは明らかにフランスのクリスチャンネームだし、オマル、マリク、サイフ、ハビブなどは典型的なムスリムの名前だ。
セネガルという国はキリスト教とイスラム教がほどよく同居していることが察せられる。
中にはディウフ・エル・ハッジというファーストネームの選手もいる。
「エル・ハッジ」は聖地メッカへの巡礼を果たした者しか名乗ることができない。メッカ巡礼は時間も金もかかる。だから、エル・ハッジを名乗る人はそんなに多くはない。
ディエフさんが選手としてどれほどのものかは知らないが、聖地メッカへ行くぐらいだから、敬虔なムスリムであることは想像できる。
ブラジルの代表選手も興味深い。
どういう偶然か、有名な選手にはRで始まる名前の人が多い。
ロナウド、リカルド、ロナウジーニョ、リヴァウド、ロベルト=カルロスなど。
元代表にはロマリオという名選手もいた。
だが、実際にブラジルへ行けば、誰も「ロナウド」とか「ロナウジーニョ」とは呼んでいない。
ブラジルのポルトガル語では語頭のRがラ行でなく、ハ行に近い音で発音される。
だから、彼らは「ホナウド」「ホナウジーニョ」「ホベルト=カルロス」「ヒカルド」「ヒヴァウド」と言わないと通じないはずだ。
本来なら、現地語に近い音で日本語に訳されるべきだが、サッカー好きの方々は、「ホナウドとかホナウジーニョなんて、弱弱しくて情けないからイヤだ」と感じるだろう。
私もそう感じる。特に、ホナウジーニョなんて、鼻くそでもほじくってるみたいだ。
ところが、それは私たちの単なる先入観、もしくは慣れの問題である。
なぜかというと、格闘技の世界では、みな、Rは忠実にハ行に訳しているからだ。
例えば、グレイシー一族は、ヒクソン・グレイシーを筆頭に、ホイス、ホイラー、ハイアン、ヘンゾ、ホドリゴ…とR(ハ行)で始まる名前のオンパレードだ。
でも、弱弱しい感じがするだろうか。
全然しないよね。
これがサッカー風にラ行に統一すると、リクソンとかロイスとかになって、なにやらやぼったくて鈍重な感じがする。
リクソン・グレイシーなんて呼ばれた日には、二流の外人プロレスラーみたいだ。とても「400戦無敗」という颯爽とした雰囲気は出ない。
ついでながら、ブラジル代表にはカカなんて選手もいる。
セネガル、カメルーン、ニジェールを含む広大な旧フランス領の西アフリカでは、カカとは「ウンコ」のことである。
私はアフリカではよく下痢気味だったから、現地人に「日本人はカカが早いな」とよく笑われたものだ。
セネガルの敬虔なムスリム選手はそれを笑っているだろうか。それとも、「ウンコなんて名前の奴だけには負けたくない」と思うのだろうか。
私はそんな超オタク的な想像でサッカー記事を楽しんでいる。
(ほんと、ヒマだよねえ…)
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Comment
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「これは偶然でした」で事件を片づけるのは、推理小説ではご法度とは言え、この世の中、驚くべき偶然があるものですよね。
私のかつて好きだったプロレスラー、美獣ハリー・レイス、これも「ハ」行始まりなんですよ!彼も断然強かった。
語学論議からはちょっと外れましたけど。