旅の川柳「たびせん」2
公開日:
:
最終更新日:2012/05/28
辺境コトバ道
旅の川柳、略して「たびせん」のコーナー、毎週日曜に開催ですが、ちょっとずれて月曜日、これから一週間仕事だ!というときになってしまいました。
一般募集したところ、なんと7人の方から、計47句が寄せられました。
いやー、びっくり。しかも、けっこうおもしろい。というか、情熱を感じます。
旅の川柳とのことでしたが、海外在住の方、もしくは在住経験から句を寄せられた方も多く、もちろんそれも全然OKです。(というか、日本各地の旅でもかまわないのです)
前回の予告では、「一挙公開」ということだったが、こんなに多くてはとても無理。
そこで、高野秀行による厳正かつ純粋な主観のもと、入選作のみを発表させていただきます。
では、栄えある第一回のMVPは…これです!
☆今週のMVP
縛り上げふんどし捲ってバックから <T.J.シンヤ>
(上海蟹のいただき方)
寸評:すごいですねえ。上海というより、T.J.シンヤさんのこの感性。でも、たしかに上海蟹の食べ方ってそうですよね。
上海在住らしいシンヤさんは、他にも秀句をいくつも寄せています。
白黒とわかるていどの白さかな
(上海動物園のパンダ。要洗澡)
ぬすまれて三台目から盗車買い
(自転車の闇市場。激安)
爆竹のめでたくもなしあさ七時
(近所で婚礼)
みな、中国や上海の空気がひしひしと伝わってきます。ご本人の生活ぶりも。
これらの句もひっくるめてMVPということにします。
☆優秀賞
デング熱 心当たりは ダゴンマン <Koko>
(ヤンゴン〜マンダレー間の寝台列車)
評:なんだかわからないけど、「ダゴンマン」という音の響きがいい。Kokoさんはミャンマーへ行くたびにいろいろと苦労されているようで、
ミャンマーの 旅の土産は 腸チフス
なんていうのもありました。
タクシーの 助手席乗ってる アンタ誰 <yuyu>
(たいてい友だちっていいます)
評:いますねー、タクシーに乗ってる「運転手の友だち」。こんなタイトルの映画があったら是非見てみたいですね。どんな人生なんでしょうかねえ。
南国で 肌の色だけ 褒められる <yuyu>
評:複雑な心境ですが、なんだか情緒がある句。
ハウマッチ なんで売り子が それをいう <eda>
(俺がきいてるんだよ)
肌の色 地黒じゃないよ 日焼けだよ <eda>
評:なぜか、yuyuさんの二つの句と対句になっているようなedaさんの句二つ。
しかし、私は同じedaさんの次の句に打たれました。
カオサンが すごいことに なってるよ
(20年前とは別世界)
評:カオサンとは、有名なバンコクの安宿街ですが、そんなことはどうでもいい。
いったいぜんたい、これは川柳なのか? ただ、友だちにしゃべったことをそのまま書いただけじゃないのか?
前衛的「たびせん」として高く評価したいです。
やれ狭し 隣で瞑想 バスの中 <ロン爺>
(夜行バスの隣の席でアグラかいて袈裟かぶって瞑想されると2人掛けの
席ほとんどを占領されて困ります。。。でも相手はポウンジーなので文句も
いえない。。。。。。。。。)
評:ポウンジーとはビルマ語で坊さんのこと。しかし、 句よりも、「ロン爺」というハンドルネームに笑いました。ビルマ語で腰巻きを「ロンジー」と言うのです。
特別賞ものです。
波乗りで 腰を痛めた ビーチにて <義姉>
(トホホ・・・サーファーになる夢破れ)
評:「義姉」さん(というか私の義姉なんだけど)には、ミャンマーやシドニーでの生活体験を詠んだ句もあり、お国柄を偲ばせておもしろいのですが、今回はあえて人生の悲哀が感じられるものを選びました。
私も昨年グレイシー柔術をほんのちょっとだけ習っていた頃を思い出したもので。
☆NONOさん賞
もう何がなんだかわからない特殊な世界観に与えられる賞です。
今後、他の人も受賞できます。 もちろん、受賞したければということですが。
以下全部が「作品」です。
では、オレはかつて読まれた「たびせん」の解釈に挑戦しましょう。
これはムベンベ調査隊の時にテレ湖の湖畔で、隊員が暇つぶしに書いてた、雑記帳(連絡帳?)に読まれた句です。
読み人知らず。と言うか忘れた。たぶんT隊員ではないかと思う。
「ツンバコも エザリキトコの テレ湖かな」
「ツンバコ」は現地産のタバコのこと。
とても不味くて吸えたモンじゃないと悪評だった。
「エザリキトコ」はリンガラ語(現地語)で、
「とても良い」ということ。
つまり、ムチャ不味い「ツンバコ」も、何も他にないテレ湖でなら、とても美味く吸えるという意味です。
転じて、
「どうしょうもない野々山でも、他に誰もいなければ、良く見える」
という解釈も成り立ちます。
逆に言えば、
「他に誰かいれば、野々山なんてアッサリ捨てられる」
ということですね。
哀れな句じゃのう。
というわけで、ここに載せられなかった中にも秀句はたくさんあります。
いつかはそれらをまとめて公開し、読者投票でベスト10をやって、単行本にして、世間で大人気になることが予定されています。
今後も、「たびせん」では上手い下手よりも「ユニークさ」を評価していきたいですし、月曜の朝からこんなものを読んでもう、みなさん、仕事なんかやる気を失っているでしょう。
(私は少なくともそうです)
書類やお客は放り出し、みんなで、たびせんを作りましょう!
月曜の朝思い出す旅の空
では、また来週!
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Comment
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栄えある「たびせん」第一回優秀賞を頂きまして光栄です。ありがとうございます。「今週のMVP」目指し、ユニークさを磨くべく日々精進していきたいと思います。
ちなみに「ダゴンマン」はヤンゴン〜マンダレー間を走っている特急寝台列車です。イギリス式にcompartmentになっており通路がない為、お弁当売りの少年が走行中に車両と車両を移動するのにいったん外へ出て全速力で線路を走って後ろの車両に移動します。風情がありますので高野さんも一度乗ってみてくださいね。
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第一回NONOさん賞をいただきまして、まことにありがとうございます。
大変、光栄に存じます。
って本人じゃん。
しかし、まあ、世の中に人の名を冠した賞は数あれど、
直木賞だって、ノーベル賞だって、手塚賞(それはマンガだが)だって、
本人が受賞した賞なんて、まずあるまい。
しかも何の価値もなく、誰も目指さないことにおいても、
稀有な賞と言えるでしょう。
そこで一句
「旅行けば トゥルバの国に 屁の香り」
トゥルバとは、オレが行ったアフリカ、チャドのプロジェクトサイト。
半砂漠の町です。
そこでオナラをしたらやっぱり臭かった。
こんな遠くに来ても、人の営みは変わらんのだなあ。
という秀(臭)句。
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nonoさん、座布団3枚っ!!