奇人ドラマー悟空再び
公開日:
:
最終更新日:2012/05/28
B系友人図鑑
ある出版社の忘年会で、Iさんというフリーの編集者兼ライターの人と同席した。
彼はジャズがひじょうに好きだというので、このブログでもすでにお馴染みの、日本が誇る奇人ドラマー「のなか悟空」のことを聞いてみたら、ちゃんと知っていた。
「あの人のドラムはすごい!」と大絶賛していた。
Iさんによれば、悟空さんは昨年にもCDを出しているという。
「スタジオでなく、風呂屋でレコーディングしたもの」と聞いて、驚いたというより、納得した。
悟空さんがふつうにレコーディングするほうが驚く。
でも、ただでさえ楽器は湿気を嫌うというのに、わざわざ風呂場でやらなくてもねえ…。
新しいスタイルにチャレンジしたのか、それとも単に金がなくてスタジオが借りられなくて、行きつけの銭湯に頼んで、無理やりそこをスタジオにしてしまったのか、その辺は不明だ。
ジャズバーなどで悟空さんが演奏すると、あまりに強烈な音波でグラスが片っ端からどんどん割れていくというのは前に書いたが、風呂場でも漆喰がバリバリはがれていったという。
しかし、風呂屋というのは、プラスチックの洗面器を床に置いただけで、カラーンと大きな音が響く。
そんなところで、悟空さんが激しくドラムを叩いたら、反響がすごくて、何がなんだかわからなくなるんじゃないか。
それでも、Iさんによれば、「すごくかっこいい」というから、マニアの聴き方はわからない。
ちなみに、悟空さんのCDは一般には手に入らない。
アマゾンで検索しても、1991年に発売されたものが一つ表示されるのみで、それも「入手不可」だ。
悟空さんのHPで直販してるのだろう。
彼は、自分の本もCDも、なんでも「直販」している。
「出版社を通せば印税が10%しか入ってこないが、オレが自分で売れば、100%だ」と、この前会ったとき言っていた。
最近はそれで月に10万近い売り上げがあり、それだけで十分生活していけるんだそうだ。
それはともかく、このIさん、悟空さんの本名ミツマサまで知っているほどのジャズマニアである。
そこで、私が「実は、私の義理の兄はオーストラリアを代表するジャズ・ミュージシャンなんですが、知ってます?」と名前を出して聞いたところ、彼は「えー!?」と仰天した。
そうなのである。
近しい人なのですっかり忘れていたが、私の義兄はオーストラリアを代表するジャズ・ミュージシャンなのだ。
ありえないような話だが、ほんとのことだ。
(つづく)
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Comment
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悟空さんの本面白いですねー。
高野さんのHPでその存在を知り、
通販および直販で著作を手に入れました。
けど、著作の中の
「タイ遊女巡り紀行」にはまいりました。
タイトルがそのものずばりの上、内容が
あまりにも赤裸々で、妻子いる家庭に
保管できるような代物ではないんですよ。
ましてや私は仕事および遊びで何度も
タイに行っており、この本が妻の目に留まったら
家庭問題になること間違いなしです。
高野さんは当然すでに読んでますよね。
もし読んでなかったら進呈しますよ。
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悟空さんのように自力の音ではないけれど、僕も大学の合宿所の古い塗壁を一面全部はがして落としたことがあります。あれはシンセの音やったな。
ジグソーパズルのようにきれいにはがれ落ちていました。
なつかしい。
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悟空さん、風呂屋での話を高野さんにお聞かせした文中“I”です。訂正、というより私の語りがあっちゃこっちゃしたうえ、すごい早口だもので……高野さんに多少間違えてお伝えしてしまったかなという点について補足させてください。
風呂場でのライブというのは、私の知っている限りCD化されておらず、相当以前(15〜6年?もっと前だったかも)に中央線沿線の西荻だったか荻窪だったか、の休業中(?)の銭湯で行われたものを直接のぞかせてもらったものです。当時、JAZZLIFEという雑誌があり(今もあるかな?)、その編集をしている人と個人的に親しくさせてもらっていたので、彼に連れていってもらったのかもしれません。
その時のライブ自体、お金をとって入れていたのか、プライベートなセッションだったのか……そのあたりもすでに記憶の彼方なのですが、場所が場所だけにオーディエンスもぱらぱら、という感じだったように思います(なかにピアニストのアケタさんもいたような)。
演奏自体は、銭湯のエコー効果もあってそれはそれはすさまじく、悟空さんの重戦車風バスドラ連打やスネアの一撃ごとに、おおげさでなく天井の漆喰がはがれ落ちるなど、「こりゃ建物の解体に使えるなぁ」と真剣に感じさせられたものです。
とにかく、当時の悟空さんの音圧のすごさはナマで聴かれた方でないと想像がつきにくいかもしれません。“ドドドドドドドドスン”“カンッ!ダラララララララッ”という音のひとつひとつが、コンクリートブロックのような重さですっ飛んできますので、よけるのが大変……というととてつもなく物騒なもののようですが、一方どこどこまでもスッコーンとぬけた明るさは、ジャズクラブの暗がりよりは陽光さしこむ午後の銭湯にこそふさわしかったという気がします。
高野さんの予告では、今度はお義兄さんのマイク・ノックさんについて書かれるとか、楽しみです。