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ブータン・犬シェルター訪問記

集英社WEB文芸で連載中の『ゼロ!』第6話がアップ中。
殺処分ほぼゼロを実現させた熊本市動物愛護センターの
約10年間にわたる軌跡をまとめてリアルストーリー。
闘う公務員の挑戦がジワジワと拡大。
しかし、現場はあいかわらず波乱続きで・・・・・・
詳しくはコチラ
↓↓
集英社WEB文芸『ゼロ!』第6話
<こぎゃん中途半端なこと、やめてしまえー!>

未読の方は第0回からどうぞ。
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一昨年ブータンを旅したときに犬の保護施設を訪れた。
渡航の直前に首都ティンプーに「ある」と聞いたのだ。
イギリスやアメリカ、ドイツなどのシェルターの情報はけっこう入るけれど、ブータンの動物愛護については自分で行かないかぎり知る由もないと思い訪問。
このことはいずれブログに書こう。
そう思っていたのだけれどいつのまにか失念。
そして今朝突然、何の脈略もなく行ったことを思いだしたのだ。
というわけでブータンの動物シェルター訪問記。
でもその前に、突然ブータンといわれても
イメージできない人も多いはず。
なので以下テキトーだけれどブータンのプロフィール。
場所はインドの北東の端。北には中国がせまる。
国土は九州の0.9倍で、人口は約70万(八王子市と同じくらい)。
けわしい山が連なる国で首都ティンプーの標高は約2200メートル。
賢者の誉れ高い国王の独自の政策が世界で注目されている。
主な産業は農業、旅行などのサービス業、勤め人=公務員という世界。
工業製品はひとつも自作していないのに、
なぜかビールのブランドだけで3種、
ウイスキーにいたっては数えきれず
・・・・という素晴らしい国なのです。
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国際空港があるのは西の町パロ。
バンコクからここまで約3時間。

パロから首都ティンプーまで1時間半。
写真はティンプーからさらに1時間ほどのドチュ峠。標高3200mくらい。
ここまで日光いろは坂のような道が続き、
ここから東にむかってさらに激しいアップダウンの道が続く。

ティンプーから約10時間・ブムタン

ブムタンから約10時間・モンガル

モンガルから約10時間・タシガン

タシガンから約5時間・タシヤンツェ
・・・・とこのように西から東まで犬だらけ。
(あくまで個人の印象です)
チベット仏教の国なので殺生は厳禁。
蚊をたたこうものなら軽蔑のまなざしにさらされる国なので
犬をいじめる人は皆無。
飼い犬も野良犬も、それぞれ自由散歩を楽しんでいる。
それがあたりまえだったブータン。
ところが首都ティンプーで町から犬を排除しようと話が持ち上がった。
今から数年前、現国王の戴冠式の日程が正式に決まったときのことだ。
世界中からの要人が集まるなか、
野良犬が徒党を組んでいるのは問題ありと政府は考えたらしい。
ただ排除といってもそこは殺生厳禁の国。
町の中心地をねぐらにしている犬たちを保護して、
生涯世話できる施設を作ろうということになったという。
訪れたのはティンプーから車で30〜40分ほどの郊外。
フェンスで囲まれた敷地の門に近づくと、
さっそく多くの犬が出迎えてくれた。

よく見ると敷地がなかで半分にわかれている。
スタッフに訊くと一方は政府が管理する施設。
もう一方はある人物による私設シェルターだという。
話をした男性は私設シェルターで働いているというので、
そちらを見せてもらうことにした。
犬の世話のやり方は政府も個人運営も大差ないというけれど、
設備そのものは私設シェルターのほうがはるかに充実しているようだ。
政府運営のほうは敷地の中央に木造の犬舎があるのみ。
一方、私設シェルター。
段差のある土地を利用してコンクリートで整備したドッグランがあった。

訪問時、ここで世話しているのは成犬60頭、子犬8頭、老犬10頭くらい。
3名のスタッフが住み込みで犬たちの世話している。
獣医師(インドの大学かイギリスの大学卒だという)の訪問は週に1回。
狂犬病予防はもちろん、定期健康診断、必要があれば病気の治療をおこなっている。
すべての犬が不妊去勢手術済み。
深刻な病気をかかえた犬は今のところなし。
皮膚病治療のため薬を与えられている犬が数頭とのことだった。
食事はすべて手作り。
米25キロ、野菜25キロ、肉5〜6キロを煮こんだものを1日・2回にわけて与えている。
犬たちは、ここで生涯世話させることになっている。
そんな生活をささせるのが各地からの寄付。
チベット仏教カレンダーで特に重要な日といわれる10日、15日、30日に
市民からまとまった寄付がおくられることが多いという。
ブータンの人々にとって動物を救うことは功徳につながるので、
寄付がとぎれることはほとんどないそうだ。
そして犬舎へ。

想像していた以上に立派でビックリ!
ブータンの伝統的な住居は石造りの立派なものが多い。
その影響なのだろうか?
フロアは地面からの温度が直接つたわらないような構造。
また掃除のあとの水はけについても、よく考えられている。
部屋はそれぞれ6〜7メートル四方くらいの広さ。
内部は半個室風にわかれていて段ボールと毛布がしきつめられていた。
「仲のいい犬どうしで部屋割りしています」とスタッフ。
そんな話を聞きながら敷地内を歩いていると、
犬たちは「誰、誰?」「なにしにきたの?」と好奇心旺盛な様子で寄ってくる。
甘えてドーンと前肢をかけてくる大型犬もいる。
なでてあげるとほかの犬も膝や背中にドーンとアピールしてきてカワイイ。
「頭数が多くて大変だけど、なるべく毎日すべての犬をなでてやってます」
というスタッフの説明に納得のフレンドリーぶりなのだった。
ちなみに国王の戴冠式以降、新たな犬の保護はしていないという。
ティンプー市内の犬が減ったら、ねずみが大発生してしまったのだ。
人々はあらためて野良犬たちの存在価値を知ったという。
というわけで私が滞在したときは、
ティンプー市内にも元気に自由散歩をする犬が多数。
ただし例外的に保護するケースもある。
「この子犬は野良の世界では生きぬけない。だからここで世話をしています」

スタッフが抱き上げた子犬は後ろ足に障害があった。
歩行には少し苦労しているようだけれど、
ほかの犬にじゃれついたりしてとっても元気そうだ。
理由あって自立できない弱者は救済していく方針で、
これもまたチベット仏教のおしえにしたがえば当然のこと。
ブータン人は輪廻転生を信じているという。
高齢者はもちろん、海外で教育を受けた
高学歴の若い世代も「来世はある」と答える。
人々は、よりよい来世のために現世で善行を積もうとする。
この活動はチベット仏教世界では“人として正しいこと”なのだ。
だから「どうして犬なんか助けるの?」なんていう人はいない。
シェルターのオーナーはこの地区で尊敬を集めているというし、
その善行にあやかろうと、人々は寄付を持っておとずれるのだ。
それもブータン人にとっては生活の一部ということらしい。
このシェルターは、日本や欧米とはまったく違う
世界観のもとで運営されているといってもいい。
しかし、犬の扱いについては世界の動物愛護のスタンダードを網羅していて、
その独特なバランス感覚が面白く、妙に心地のよく感じるのだった。


2011/09/09 | 犬と動物

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    ステキな訪問記をありがとうございます。
    ブータンに行ってみたくなりました。動物愛護が特別なものでなく当たり前だと考える国とは,今の日本とは雲泥の差がありますね。
    今回の国王のお言葉が素晴らしかったのは,こういう祖国があってこその重みのある暖かいメッセージだったように感じました。

  2. AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 5.1; Trident/4.0; GTB7.2; .NET CLR 1.1.4322)
    atsukoさん
    ブータンには欧米のような動物愛護の概念はありませんが、命あるものは平等という考えに疑問を抱かない世界観があるので、こうしたことができるのでしょうね。
    ブータンにぜひ出かけてみてください。
    地元の人々は信心深くて、でも気さくでけっこうお茶目ですよ♪

  3. AGENT: Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.0; Trident/5.0)
    素敵な画像と記事有難うございます。
    被災地警戒区域内の動物たちはまだまだたくさん取り残され頑張っています。
    日本の国もブータン国を見習ってほしいです。

  4. AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 5.1; Trident/4.0; GTB7.2; .NET CLR 1.1.4322)
    夜空さん
    記事の感想ありがとうございます。
    ブータンと日本を単純にくらべることはできませんが、
    動物好きにとってあのシェルターはひとつの理想だと思います。
    敬虔な仏教国の底力を感じました。

  5. AGENT: Mozilla/5.0 (iPad; CPU OS 5_0_1 like Mac OS X) AppleWebKit/534.46 (KHTML, like Gecko) Mobile/9A405
    読ませてもらいました。
    日本では考えられませんが、理想ですね。
    全員がこういう状況が"当たり前"の日本になって欲しいです。
    お邪魔しました。
    わたしも行って見たいだけです!

  6. AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 5.1; Trident/4.0; GTB7.2; .NET CLR 1.1.4322)
    ももこさん
    命に対する想いは、日本人もほぼ同じだと思います。
    ただブータン人はもっと“迷いなし”な感じですね。
    チャンスがあればぜひ現地へ。
    穏やかで、でも驚きと発見のある旅になるはず。

  7. はじめまして♪

    コチラのブログをYouTubeにて紹介させていただきました。
    事後報告をお許しくださいませ。

    ↓コチラ
    https://www.youtube.com/watch?v=H0CTO9rpfOo&list=UUDR9F7mDvEA-461D_yRriqw

    よろしくお願いいたします。
    ありがとうございます。




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